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実は気付いている人も多いけれど、言葉にするのははばかられる「コンサルティングファームの抱える大いなる矛盾」。そんな“真実”を痛快な口調で語ってくれたのは、2023年1月からFIELD MANAGEMENT STRATEGYの代表に就任した中村健太郎氏だ。
ローランド・ベルガー、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、アクセンチュアを渡り歩いてきた同氏は、現在の大手ファームの育成体制に警鐘を鳴らす。コンサルタントに挑戦したい、真に価値あるコンサルタントになりたいという方は、ぜひご一読いただきたい。
※内容や肩書は2023年4月の記事公開当時のものです
競合優位性の話は、二番手以降がやればいい
――まず、FIELD MANAGEMENT STRATEGYというコンサルティングファームの特徴や強みについて教えてください。
中村:対外的にはコンサルとクリエイティブの融合とか、スポーツやエンタメ領域の面白いプロジェクトが多いとか、いろいろと言ってはいます。ただ前提として私が思うのは、コンサルティングファームにはそもそも差別化という概念は必要ないということです。
コンサルティングの成果は個人のスキルに依存する。だからコンサルタントの給料は高いのです。そしてそのスキルを持った人が考えて納品するわけですから、このファームにはAさんがいるけどこっちにはいない、本質的にはそれしか差はないはずです。実際に私自身何社かのファームを渡り歩いてきましたが、ファームに応じてやり方を変えることはしなかった。それは私のやり方を顧客が評価してくれたからです。
だから私たちは、他社との競合優位性という話は一切しません。それは二番手がやればいい。顧客への価値提供にど真ん中からまい進する姿勢でこれまでやってきましたし、今後もその方針は変えません。競合優位性を考える時間は顧客への価値提供に使いたい。他ファームが我々に対する差別化を考えるのは問題ないですが、我々の進む道はそこではありません。
そうした前提の上で一つポイントを挙げるとすれば、FIELD MANAGEMENT STRATEGY は“日本一人が育つファーム”だということ。私はこれまでローランド・ベルガー、BCG、アクセンチュアの戦略部門に在籍した経験がありますが、当時と比較すると大手ファームの育成体制は確実に劣化しています。
――それはなぜですか?
中村:非常にシンプルな話で、1人のパートナーやマネージャーが育成するメンバーの数が増えているからです。以前は、マネージャー1人にコンサルタント3人がプロジェクトの適正サイズだと言われていました。「戦略コンサルティング」を掲げるファームは、そうやって品質を担保していたわけです。
パートナー1人がマネージャー2人を見ますから、1つのユニットはパートナー1人+マネージャー2人+コンサルタント6人で、計9人になります。これを超えると若手が育たなくなってしまうと、経験則からどのファームも理解していました。
ところが現在はある意味でコンサルバブルのような市場環境になっており、どのファームも市場規模の拡大に合わせて自社ビジネスの拡大を志向している状況です。だから、超一流と言われる戦略ファームでも、無理やり若手の人数を増やしてマネージャー1人にコンサルタント7人ぐらいのサイズ感になっている。総合ファームだとマネージャー1人に20人というサイズに達しているところもあるでしょう。
コンサルティングスキルは、マネージャーとダイレクトに過ごす時間によって最も強化されます。それは学ぶ内容だけではなく、行動規範や学び方をたたき込まれ、自分の行動や成果に対して都度フィードバックされるからです。ただし、それにはマネージャーの時間投資が必要なので、部下が増えると物理的に難しくなります。
だから、最も重要な“学び方”を教えずに、「スライドの作り方」とか「プレゼンの仕方」といった表面的な“コンテンツ”を短期でたたき込もうとする。これでは人は伸びません。もっと最悪なのは、固定化したプロダクトを持たせてしまうこと。そうすると、経営の本質も分からないまま何を聞かれても「今はCRMです」と言ってしまう『自称コンサルタント』が誕生するわけです。
うちは私が当時身に付けた“学び方”を40ページぐらいのテキストにまとめていて、なおかつマネージングディレクターやマネージャーが相当な時間を投下しながら若手コンサルタントを育成しています。他のどんなファームより足腰が鍛えられると、断言できます。
FIELD MANAGEMENT STRATEGYの特徴は、人が育つこと。これに尽きます。あと伝えておきたいのは、オフィスが表参道にあることぐらいですね(笑)。
何を学ぶかよりも重要なのは、“学び方”を身に付けること
――学び方について、少し解説していただくことはできますか?
中村:ポイントは2つあって、まず1つはマインドです。全てを自分事化して、あらゆる仕事から学び取ろうとする姿勢。言葉にすると簡単ですが、そうそう身に付くマインドではありません。例えば「この資料をまとめておいて」と言われた時に、使う人のことや使用シーンをどこまで想像した上で対応できるか。「表紙に内容やポイントをまとめておいた方がいいだろう」「見直す時にページ数が無いと不便だよな」と考えられる人は成長するし、そういう仕事ができる人のところにはいい案件が集まってきます。作業を作業で返したら、次も作業しか与えられません。
このマインドは非常に重要なのですが、かなりトレーニングしなければ身に付かない。だから、効率的に知識だけ与えようとする今の大手ファームは、学び方という“秘伝のたれ”を失いつつありますね。
もう1つ具体的な学び方のスキルは、日本語力です。私は日本語を何よりも重視しています。ソシュールという学者が言うには、言語は「考えたことを表現する」ものではなく、そもそも人は「言語を使って考える」のだと。だとすると、語彙(ごい)が豊かな人は思考が豊かだし、言葉が美しい人は思考も綺麗だということになります。
分かりやすい例を挙げると、ミーティングが終わった後に「じゃあそういう方向性でいこう」という人はダメだということです。人によって受け取り方が異なる指示は、指示ではありません。1つの文章に1つの意味、一語一義、説明できない言葉は使わない。そういった基本を徹底すると、短くて美しい、つまり誰にとっても分かりやすい日本語を書けるようになります。
そこまで来れば器としてはかなり整ったと言えるでしょう。あとはその上に、論理的思考とかスライド作成、プレゼンといったスキルを載せていけばいいだけです。
もう少しだけ補足すると、経営者は文字を読まずチャート形式のスライドしか見ないというのは完全にウソです。彼らは驚くほど本を読んでいますからね。本のように綺麗な文章を書けばいいんです。パワーポイントでなければダメだというのは、文章を書くスキルが低い人の言い訳に過ぎません。経営者がテキストを読んでくれないのであれば、文章の能力が低いか、テーマ自体がどうでもいいかのどちらかですね。
――なるほど。マインドと日本語力、非常に興味深いです。
中村:この2つがそろうと、的確な議事録を書けるようになります。私の定義では、質の高い議事録が書ければコンサルタントとして一人前です。要点をつかむ必要がありますし、誰が読んでも次のアクションが分かるように書けなければいけない。小さいテーマでもいいので、自分で議事録を完結できれば一人前ですね。
議事録だけでなくスライドも過去に何万枚と添削してきましたが、見せ方の問題でNGになるのは1割ぐらいです。大半は、何を書くべきか、または日本語の使い方から間違っています。
――「一人前」になるまでに、どれくらいの期間が必要なのでしょうか?
中村:うちの会社であれば、遅くても1年ほどでいけるでしょう。私自身は7年ぐらいかけてしまったプロセスですが、だからこそ何が無駄でどこがポイントかを分かっているので、1年間真剣に仕事に向き合ってくれるならそこまで持っていくことをお約束します。
コンサルティングファームの抱える大いなる矛盾
――自己成長を志す方々にとって本当に金言の数々だと思いますが、中村さんご自身はどんなキャリアを通じてそうした考え方を身に付けてきたのでしょうか?
中村:直接的には前職までのファームで学んできたことですが、ベースとなる価値観という意味では学生時代までさかのぼります。高校時代まで打ち込んでいたサッカーを引退し、大学の前半は遊びほうけてお金がなくなってしまったんですね。そこで仕方なく事業を興したのですが、これが非常に儲かりました。ただ、儲かったんですが組織は全く大きくならない。大企業を作り出すプロセスに興味を抱き、当時100人ぐらいだったIT企業に入社しました。
結果としてそこも大企業にはなりませんでしたが、当時の経験がコンサルタントになるきっかけになっています。新人の私に任されたクライアントの業績報告をする際に、「なぜこの商品が売れているのか」「どういう人がお客さんになっているのか」を、当時の上司もクライアントも食い入るように聞いてくれたんです。
担当店舗は小さかったですが、会社としては大きなクライアントだったので、誰もが知っている企業の役職者が、二十歳そこそこの私の話に夢中になっている。それまでは大企業を作りたいと思っていましたが、若いうちから大企業の経営者と対等以上に話せる場所があるんだと知って、戦略コンサルタントを志しました。要は、自分のキャリアをショートカットしたかったんです。
しかし、一社目のローランド・ベルガーでは当初全く歯が立たず、1カ月もしないうちに「あと1ストライクでアウトだよ」と言われてしまいました。正直、学生時代に事業も経験していたし前職でも結果を残していたので自信があったのですが、先輩たちが何を話しているのかも分からない。アウト通告された時は背筋が凍りましたね。
私が投下できる資産の全て、つまり人生の時間のほとんどを費やしてなんとか通用するようになった頃、知り合いからBCGに誘われて転職することになりました。相変わらず時間投下しかできませんでしたが、最初からフルスロットルだったので生存を脅かされることはなかったですね。
しかし一定以上認められるようになってくると、冷静に周囲を見渡せるようになり、今度はコンサルティングファームの大いなる矛盾に気付いてしまったんです。
――それはどういうことでしょうか?
中村:コンサル会社のプレスリリースやIR資料を見ると、「大手のクライアントを相手に新事業を創って成果を出しました」とどの書類にも書いてある。しかし、だとするとおかしいことがあります。戦略ファームのプロジェクトは1案件につきプロジェクトメンバーが3~5人ぐらいなので、1000人コンサルタントがいれば毎年何百個という素晴らしいプロジェクトが生まれているはず。ところが2000年には世界の時価総額トップ20にいくつもの日本企業が入っていたのに、現在は全くと言っていいほどありません。
「上場企業の8割が当社のクライアントです」という主張は、「その企業の時価総額を相対的に下げました」と同義なんです。さらに言うと、ファームの規模拡大とともに、どのファームもプロジェクトのテーマの多くがコスト削減やオペレーション改善になっていきました。
コスト削減やオペレーション改善は、レバーが自社にあり、効果が出やすくプロジェクトのROIをうたいやすい。だからそうしたテーマが増えていくわけですが、コスト削減で最も喜ばれる打ち手は「スペックを変えずに支出を下げる」手法です。しかし、これを実現しようと思えば下請け企業をいじめるしかない。このままでは自分の精神が持たないと思って、特定の時期からは新規事業プロジェクトしかやらないことに決めました。
ただ、これはこれでしんどくて、社内ミーティングで上司から「経営者はお前の思い付きなんて聞きたくない」と最初に言われるわけです。その通りですし非常にいい教えなんですが、じゃあ彼らが何を聞きたいかと言うと、ファクトとロジックに基づいた提案だ、と。それが何かと突き詰めると、隣の会社がやってることなんですよ。確実に実現できるし、マーケットが大きければそれでいいでしょうということになる。本当の新規事業を創造できないもどかしさを常に感じていましたし、逆にそうした提案に対して「新規性がない」と言われるケースもありました。そうなると、もうどうしていいか分からないですよね。
蓋然(がいぜん)性が高いと新規性がないと言われ、新規性が高いと納得性がないと言われる。この禅問答は何なんだと、ずっと思っていました。
「今の仕事は楽しいですか?心からYESと言えますか?」
――それはたしかに辛いですね。その後にアクセンチュアに転職されたのですか?
中村:はい。自分のアイデアだけでは大企業は動かせない、かといってファクトとロジックだけでは面白くない。どうしようかと考えて、テクノロジーとかデジタルという、当時の経営者たちがよく分からない要素を「これが根拠です」と言えば提案が通るんじゃないかと思ったんです。
しょうもない、と思うでしょう?ところがこれが大当たりでして(笑)。100個ぐらい新規事業のアイデアを持っていたんですが、片っ端から提案しに行き、クライアントと共にアイデアを社会実装していきました。この経験は本当にエキサイティングでしたね。もちろんうまくいくものもあれば大きくならないものもありましたが、うまくいかなかった案件の責任の取り方も含めて、これが私の思い描いていたコンサルタントの生き様だろうと確信しました。
――それが現在までのベースになっているわけですね。
中村:その通りです。会社としてのFIELD MANAGEMENT STRATEGYの特徴はないと申し上げましたが、1つあるとすれば新規事業にこだわっているところです。アクセンチュアの前半は近しい経験ができましたが、徐々に現場から離れて管理職の色が強くなっていきました。
後半は6割ぐらいの時間をインターナルワークに使っていたと思いますが、これは確実に人をダメにします。だって、ものすごい権限があるんです。そうすると誰もが私に忖度(そんたく)するようになる。特に外資系なので、ある意味では私が若手の生殺与奪の権を握っているわけですね。何かを発言するたびに「その通りですね」と言われると、間違いなく脳が腐っていきます。
社内の人間にもクライアントにも、自分の考えたアウトプットをフラットに評価されてダメ出しを受け、次にまた「これでどうだ!」と持っていく。その繰り返しでしか、自己研鑽はかないません。スポーツでも、イチローだって大谷だって素振りしますよね。ところが、ビジネスパーソンは偉くなると素振りどころか自分で打席に立つこともしなくなる。これは本当に罪深いですよ。
FIELD MANAGEMENT STRATEGYは、BCGでもアクセンチュアでもできなかった、誰もが新規事業創造にチャレンジするファームとしてあり続けるつもりです。
――ありがとうございます。最後に、貴社が求める人物像についてお聞かせください。
中村:うちが求めるというよりは、うちに来た方がいいだろうなと思うのは、野心を持って「人生をショートカットしたい」とか「誰より早く成長したい」と考えている人ですね。コンサル経験は必要ありません。むしろ半端にかじっていると、プライドが成長を邪魔する可能性があると思っています。
現在コンサルティングファームに在籍している方に聞いてみたいのは、「今の仕事は自分がコンサルを志した時にやりたかった内容ですか?」ということ。コスト削減や他社の二番煎じが悪いとは言いませんが、その仕事は心から楽しいですか?本当は斬新な新規事業の提案をしたり、若いうちから経営者と真剣に議論したりしたかったのではないですか?
私は「カレーライスとハンバーグ」という言葉が好きなんです。大人になった振りをしてよく分からない高級品を食べるより、カレーやハンバーグの方が私はうれしい。付き合いでバーにも行きますが、本当はヴィンテージワインよりレモンサワーの方が美味しいと思ってます。そういう正直な気持ちを、素直に出せる人であってほしい。「カッコいい仕事がしたい」でも「フェラーリに乗りたい」でもいいんです。ピュアな気持ちを持ったまま、まっすぐ成長すればいいじゃないですか。
自分自身が面白いと思える仕事に打ち込んで、周りの人たちをぶっちぎって成長したい。心からそう思える人であれば、私たちは歓迎します。