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未経験者にとって、コンサルティングファームは謎多き場所なのかもしれない。その世界に憧れを抱きつつ、ハードワークをイメージして尻込みしている人も少なくないのではないだろうか。
博報堂からボストン コンサルティング グループ(BCG)へ移り、現在はプリンシパルを務める國頭慶祐氏も、その1人だ。それでも入社したのは、「知らない世界だからこそ、体験しなければ気が済まなかったから」だという。
さらに入社後は2度の育児休業取得を経験し、高いレベルで仕事と育児を両立させている國頭氏。そのサステナブルな働き方の要因はどこにあるのか。國頭氏の歩みを基に、知っているようで知らないBCGのリアルな姿に迫る。
※内容や肩書は2023年9月の記事公開当時のものです。
広告代理店時代から意識していた、課題解決を促すコンサルティング
——國頭さんの出身は工学部なのですね。
國頭:大学時代は街づくりに興味を持ち、土木工学分野を学んでいました。この分野について建物や橋などの設計をイメージする人が多いかもしれませんが、私が力を入れて研究していたのは街づくりに必要な合意形成のあり方です。
世の中には、ダム建設によって水底に沈んでしまう村や、道路建設によって立ち退きを余儀なくされる地域があります。そうした場所に暮らす人々を助けたいという思いから私は、社会心理学の研究に没頭し、いつしか社会課題を解決するソーシャルビジネスに引かれていきました。その頃、所属していた研究室で共同研究をしていた企業が博報堂だったのです。
博報堂は独自にソーシャルビジネスを追求し、新規事業を立ち上げていました。この環境であれば自分のやりたい仕事ができると考え、新卒で飛び込むことにしました。
——広告やメディアの領域以上に、社会課題を解決するビジネスに関心を持っていたのですね。博報堂ではどのような業務を担当していたのでしょうか。
國頭:営業として、主に海外車の輸入事業者を担当していました。テレビや雑誌などのマス媒体を中心とした、メディアを活用したマーケティングを提案する役割です。
入社後に営業への配属を告げられた際にはショックを隠しきれませんでした。社会課題解決につながるコンサルティングに携わりたかった私は、まず「ストラテジックプランニング」と呼ばれる企画畑を経験したいと思っていたからです。とはいえ、何事もふたを開けてみなければ分からないもので、結果的には営業として良質な経験を積めました。
——良質な経験とは具体的にどのようなものだったのですか。
國頭:私が担当していたクライアントでは、数十億円規模の年間予算に基づいてマーケティング計画を進めていました。ただ、それだけの規模であるにもかかわらず営業チームは2〜3人、専属のプランナーも付いていないという、少し特殊なプロジェクトだったのです。そのため私は営業でありながらメディアプランニングや制作にも携わりました。
BCGのことを「何だかすごい」と思っているままで終わりたくなかった
——国内有数の大手総合広告代理店で責任ある仕事を任されていた國頭さんが、なぜコンサルティングファームへの転職を考えることになったのでしょうか。
國頭:確かに博報堂時代は充実した日々を送っていました。ただ、マーケティングを通じたクライアント支援の域を出ず、仕事の広がりに限界を感じるようになったんです。
具体的なマーケティング施策に落とし込まれる前の段階では、経営戦略や事業戦略に基づく誰かの意思決定があるはず。自分自身もその領域にタッチして戦略を描いてみたいと考えるようになり、実現できる場所としてコンサルティングファームを目指しました。
——数あるコンサルティングファームの中でBCGを選んだ理由も聞きたいです。
國頭:BCGは業界のトップランナーの一角と見なされていて、私も漠然とそう認識していました。でも外から見ているだけでは、BCGの何がすごいのかが分からなかったんですよね。当時の自分にとっては得体の知れない企業でした。だからこそ飛び込んでみたいと思いました。
このまま一生、BCGのことを「何だかすごい」と思っているままで終わるのはもったいない。転職の選択肢があるときに飛び込まなければ、いつか仕事人としてのキャリアが終わるときに後悔するのではないかと感じていました。
——コンサルティング未経験からBCGへ飛び込むことに不安はありませんでしたか。
國頭:もちろんありました。当時は、自分がこれまでに博報堂で得た経験がどれくらい生かせるのか見当もつきませんでした。
それでも最終的には好奇心が不安を上回りました。転職に失敗するリスクはあるけど、何も知らないままでいたくはなかった。もし通用しなくても、そのときはリセットして次に進めばいいと割り切っていた面もありましたね。
「将来が心配」と言われた入社当時。BCGの文化になじむまで
——BCG入社後の國頭さんの歩みを聞かせてください。
國頭:シニアアソシエイトとしてスタートし、当初は業界やテーマを定めずにさまざまなプロジェクトに加わりました。幅広く経験を積む中で、自分の興味や意欲、成果が出せる領域などを見いだしていく期間です。エネルギーや金融、官公庁など、前職では関わることのなかった業界ばかりでした。
——未経験かつ、知見のない業界となると苦労も多かったのでは。
國頭:今だから打ち明けられますが、「正直転職しなければよかった……」と後悔する瞬間もありましたね。博報堂時代はそれなりに仕事ができる自覚を持っていたので、なおのこと落差を感じました。
最初にアサインされたエネルギー企業の組織マネジメントのプロジェクトでは、何もかもが分からない状況で非常に苦労したことを鮮明に覚えています。担当マネージャーからは「國頭さんの将来が心配」と言われてしまったほどです。BCGに浸透する文化にも前職との大きなギャップがありました。
例えば何かしらの宿題をもらったときに、前職時代は1週間ほどの時間的猶予をもらって形にする習慣が身に付いていました。でもBCGでは遅くとも翌日、場合によっては当日のうちに答えを出すことが求められます。完璧な状態ではなくとも、その時点でのベストを打ち返す「ドラフト文化」があるんです。
こうした文化になじむのにも時間がかかり、しんどい思いもしましたが、振り返ってみれば入社当時の経験が確実に今につながっているんですよね。自分の知らない領域へ飛び込んでいく際にも、うまく対応できるようになりました。苦労を味わったからこそ身に付いた力だと思っています。
——現在、國頭さんはプリンシパルとしてどのように専門性を発揮しているのでしょうか。プロジェクトの事例についても教えてください。
國頭:「デジタル」や「対コンシューマ」を主なテーマとして、国内の大手通信・メディア企業やエネルギー企業、金融機関、官公庁などを支援しています。既存か新規かを問わず、幅広く経営戦略や事業戦略の策定・実行に携わっています。
例えばあるクライアントでは、音楽・動画配信や電子書籍などのエンターテインメント系ビジネスを手掛ける中、サブスクリプションサービスの台頭によってユーザー数が伸び悩んでいました。そこでポートフォリオを見直し、本当に強化すべき事業を見極めて、そこにリソースを集中させています。その上で新たな成長戦略を描き、必要な事業を立ち上げる現場も経験しました。
私はまだまだコンサルタントとして修業中の身ですが、転職前に思い描いていた「マーケティングの手前にある戦略策定や組織運営に携わる」という青写真を実現できていると感じています。
育児にも注力できるのは、チームで効率化を実現する体制があるから
——こうしたプロジェクトにコミットする一方、國頭さんはこれまでに2度の育児休業を取得しています。コンサルティングファームで働く男性が育休を取得すること自体、まだまだ珍しいのではないでしょうか。
國頭:そうかもしれません。
BCGへ転職した頃の私も、将来自分が育休を取るなんて全くイメージしていませんでした。当時はまだ独身だったこともあって問題意識さえ持っていなかったんです。しかし、結婚して子どもが産まれると考え方が大きく変わりました。
0歳、1歳、2歳と成長していく子どもの姿を見られるのは今この瞬間しかない。シンプルにわが子がいとしいから、なるべく一緒にいたい。そう思うようになりました。
そこで、第1子の保育園入園のタイミングで慣らし保育に対応するため、1カ月半の育休を取ることにしたんです。前々から上司であるマネージング・ディレクター&パートナーに相談し、プロジェクトの切れ目のタイミングで育休に入りました。これはプロジェクト単位で仕事を進めるコンサルタントのメリットかもしれません。
2回目の育休は第2子が産まれてから3カ月間取りました。妻が里帰り出産をしたので、その間は第1子の面倒を私が見ていました。
——とはいえコンサルティングワークが多忙であることは変わらないと思います。育休復帰後は、どのように仕事と育児を両立させているのでしょうか。
國頭:以前の自分が持っていた「成果を出すためならいくらでも働く」という考えを捨て、「できるだけ短い時間で価値を発揮する」ことを徹底しています。これはまさに、BCGのドラフト文化に通じる考え方なんです。
仕事を効率化するための最大のポイントは、無駄や手戻りをなくすことだと思っています。そのためには先走って独断で物事を進めるのではなく、こまめにミーティングの場を設け、関係者の視点を擦り合わせることが大切なんです。そうすれば、ラフなドラフトの状態から無駄なく、無理なく物事を完成させることができます。
——BCGの制度や仕組みの面で、役立っているものはありますか。
國頭:「Teaming@BCG」と名付けられた、サステナブルなチームで働くためのグローバルな取り組みがあります。これはチームのメンバーがそれぞれの個人的事情を共有し、それにチームとしての方向性を合わせるというものです。
例えば「保育園の送り迎えのため8時半〜9時と17〜18時はミーティング不可」というメンバーがいれば、全員がそれに合わせて予定を組んでいけるように最大限の調整がされます。私もこの取り組みを通じて育児の時間を確保しています。
また、BCGではリモートワークが定着しており、必要がなければ出社は必須ではありません。通勤や移動にかかる時間を減らし、家族のために使える点にも助けられています。
——自ら時間の使い方を計画し、共有する文化が広がっているのですね。
國頭:はい。中には時短勤務をしているメンバーもいます。しかしキャリアアップを諦めているわけではありません。個々が置かれている状況に合わせて、働きやすさを自ら設計していくことが大切なんです。
その意味では、自責思考で向上心を持ち、仲間と議論しながらチームで価値を発揮したいと考える人がBCGにマッチするのではないでしょうか。コンサルティングファームはとかく個人主義の世界だと思われがちですが、今のBCGを見てもらえば、そうした先入観が覆されるかもしれませんね。