あなたはもっと、輝ける。一人一人の原体験に迫り、本人ですらまだ気付いていない可能性を引き出していく
2025/07/07

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俳優からヘッドハンターに転身した渡辺多加史氏には、結果が出なかった人からさえも高い口コミ評価が寄せられている。どんな人にも必ず「その人だけの強み」があると信じ、その魅力を最大限に引き出すために、決して諦めることなく伴走し続けていく。俳優時代に培った「人物を深く理解しようとする姿勢」が、人材エージェントの仕事にも生かされているのだという。

俳優から人材エージェントに転身した理由から現在のキャリア観、転職を考える人へのメッセージまで。2025年度・LPA(Liiga Professional Agent)を受賞した“人の未来を演出”するヘッドハンターのストーリーをお届けする。


〈Profile〉
渡辺多加史(わたなべ・たかし)
俳優経験を経て人材業界へ入り、スタートアップでのエージェント業務で数多くの表彰を受ける。役作りと同様に、顧客のことを真に理解するために、知識ではなく身をもって実体験を得ることを旨としている。現在はXG Partnersに所属し、投資銀行や総合商社、世界的な金融機関を中心に、人と企業の“最高の出会い”をつくるべく活躍中。

※内容や肩書は2025年7月の記事公開当時のものです。

他者の人生を追体験し続けた日々が、人材エージェントとしての土台になった

――渡辺さんは元々俳優だったと聞きました。なぜそこから人材エージェントの道を選んだのでしょうか。

渡辺:大学2年生のときに受けた芸能事務所のオーディションがきっかけで、俳優としてNHK BSのドラマや動員数数千人規模の舞台に出演していました。俳優の仕事って、一見「演じる」ことが中心に思えますが、その本質は「人物の人生を徹底的に考え抜く」ことなんですね。台本を受け取ってからクランクアップや千秋楽を迎えるまで、その役がどんな原体験を経て今に至るのかを追体験し続ける。他の誰かの人生を、頭の中でずっとたどっているわけです。

そうした経験を重ねるうちに、人の人生を考え続けることが僕にとってのライフワークになっていきました。この、“人の人生を理解しようとする姿勢”を社会で役に立てたいと考えた結果、人材エージェントという仕事にたどり着いたんです。

実際にやってみても、実は俳優業とエージェント業はかなり近しいなと個人的には感じています。誰しも人生にはこれまでと今、そしてこれからがあるわけですが、人材エージェントは求職者の皆さんの原体験や現状を徹底的にヒアリングした上で、本当にかなえたい未来を共につくっていく仕事ですからね。

――なるほど。エージェントとしてのキャリアはどのように積み重ねてきたのでしょうか。

渡辺:最初にエージェントになった頃は、とにかく徹底的に求職者に寄り添うことを心掛けていました。「決まりにくそうな候補者にはあまり時間をかけない」のは、営業として合理的な思考かもしれません。しかし私は思うように成果が出ていなかった頃から、そういう“効率化”がどうしてもできませんでした。

一人一人と丁寧に向き合って、その人のやりたいことや強みをしっかりと言語化し、希望の内定を獲得するところまで妥協しない。そうすると、徐々に口コミからの紹介が増え、企業側や人材会社から表彰を受けることもありました。自分にはこの仕事が向いているんだなと手応えを感じ、現在に至るまで続けています。

――「最初の頃は」と言っていましたが、今はそのスタンスが変わったのですか。

渡辺:気持ちとしては同じなのですが、時間の使い方は少し変わりました。

現在はヘッドハンターとして、外資系投資銀行や総合商社、PEファンドをサポートさせてもらっています。ありがたいことに「渡辺ならクイックかつ高品質な提案をしてくれる」という評価をもらい、依頼数も順調に伸びています。そうすると当然、企業側の要望を深く理解するための時間が増えていきますよね。

ただ、それによって求職者への情報提供の質もぐんと上がったと感じています。企業側が本当に求めているのはどんな人材か、またそれはなぜか。そうした本質を把握することで、選考対策でもより的確なアドバイスができるようになりました。企業側のことを詳しく知れば知るほど、個人への提供価値も高くなる。非常に良いサイクルが回り始めていると実感しています。

企業と候補者双方の“リアル”を知ることで、最適なマッチングを生む

――エージェントとしての自身の強みや特徴はどんなところだと思いますか。

渡辺:一言で言うと「役作りのように相手の人生に寄り添う姿勢」でしょうか。その世界観を肌で感じなければリアリティーを持って演じられないのと同じように、エージェントとしても「できるだけ相手の立場に近づく」ことを意識しています。

例えば技術者をサポートしたときは、自腹でプログラミングスクールに通い、Webアプリや機械学習の基礎を学びました。そうすることで、「何が難しくて」「どこにやりがいを感じるのか」を肌感覚で理解しやすくなるんです。

俳優時代も、自分が経験したことのない役柄を演じる際は、現地現物を体験しに行っていました。ゲイの役をやる前に、ゲイバーで3カ月アルバイトしたこともあります。その仕事ならではのリアルを体験しないと、表面的な言葉しか出てきません。

もちろん私自身は投資銀行や総合商社で働いたことはないのですが、そこで働く人たちに徹底的にヒアリングして、「なぜその会社がすごいのか」「実際の業務やカルチャーはどうなっているのか」を可能な限り把握できるよう努めています。彼らは良くも悪くもハードワーカーが多いので、私も同様の時間帯まで連絡を返すようにもしていますね。相手の働き方や時間感覚にできるだけ寄り添うことで、信頼関係も生まれやすくなるように思います。

結果として、先ほども伝えたように求職者の皆さんに提供できる情報や選考対策もより精密になります。自信を持って「あなたにはこういう道が合っているかもしれません」と提案するためにも、企業と求職者の両方を理解しようとするスタンスが不可欠です。

――選考対策は、具体的にどのようなことを実施しているのでしょうか。

渡辺:人気企業の場合、過去の選考落選理由や面接でよく聞かれる質問を徹底的に収集してまとめています。例えば「この会社では二次面接で○○の観点を見られることが多い」とか。個人情報に触れない範囲で、選考に役立つ“傾向と対策”をA4用紙で数十枚にわたって整理しています。大学受験の過去問集のように想定される質問と求められる回答のポイントを共有して、「想定外の質問がない状態」に近づけるわけです。

もちろん誰でも合格できるわけではないですし、一流企業の面接官は非常に優秀ですから、うわべだけ整えても見抜かれてしまいます。私にできるのは「その人が本来持っている魅力を十分に発揮できるようにする」ためのサポートです。準備不足で落ちてしまうことがないように、できる限り支援したいと思っています。

信頼に足る成果を積み重ね、偶然の出会いを“必然”に変える

――大切にしている考え方や価値観があれば教えてください。

渡辺:諦めないことです。候補者が諦めない限り、いえ、本人が自信を失って諦めそうになっても、背中を押し続けたい。転職は能力や適性だけでなく自信も勇気も必要なので、メンタル面のサポートも大切だと思っています。自分の可能性を信じられないときに、「大丈夫だよ」と心から言ってくれる存在が一人いるだけで、未来が変わることもある。私自身、新人の頃に「渡辺、おまえは大丈夫だ」と言ってくれた上司がいたから、ここまで来ることができました。その恩を、今度は候補者の皆さんに返していければうれしいですね。

――そういう姿勢だからこそ、結果が出なかった人からの口コミ評価も高いんですね。

渡辺:そう言ってもらえるととてもうれしいです。何よりも励みになります。

――今後の目標やビジョンも聞かせてください。

渡辺:企業と候補者の双方と、ベストな関係性を築いていきたいと考えています。

まずは、候補者にとって「生涯にわたって相談できるパートナー」になること。投資銀行やFAS、PEファンド、総合商社など複数の世界をまたいでキャリアを築く人も増えていますから、その都度ベストなマッチングを提供できるよう知見を広げていきたいですね。

そして企業側からも「まずは渡辺に相談してみよう」と思ってもらうことができれば、希少な非公開ポジションの情報も入ってきやすくなるでしょう。そうすれば、候補者の皆さんにさらに“最高の選択肢”を提示できるようになります。偶然の出会いや縁の確率を、必然と呼べるまで引き上げていく。信頼に足る成果を積み重ねて、企業と個人の橋渡しをより強固にしていくことが今の私の目標です。

――最後に、転職を考えている人へのメッセージをお願いします。

渡辺:私が会ってきた人の中には、「自分には取り立てて強みなんてない」と言う人もいました。仕事に疲れていたり評価されない環境にいたりすると、自分のいいところが見えなくなるときもあるでしょう。でも、これだけは断言できます。あなたは、自分で想像する以上に素晴らしい魅力を持っています。その可能性を見いだせていないのは、私たちエージェントの力不足です。

ですから、まずは自信を持って一歩踏み出してみてほしい。エージェントにもそれぞれの得意領域もあれば人との相性もありますから、何人かに会ってみることを勧めます。その中で「この人は自分のことをしっかり分かってくれそうだ」とか「自分の気付いていない強みを引き出してくれるかも」と思える相手がいれば、その人に本音をぶつけてみてください。もし私がその一人として力になれるなら、全力でサポートします。あなたは必ず、もっと輝くことができる。次のステージへ共に踏み出しましょう。

コラム作成者
外資就活ネクスト編集部
外資就活ネクストは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。
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クチコミスコア
4.02
マッチング数
529
XG Partners
渡辺 多加史