新卒で入社した大手損害保険会社で培った営業や人事、そしてコンサルティングの経験を生かし、自らの理想とするエージェント像を追求してきた石崎雄三氏。求職者だけでなく企業からも高い評価を獲得し、2025年度LPA(Liiga Professional Agent)を受賞した。
コンサルティングファームやベンチャーキャピタル、スタートアップ領域を中心に数多くの転職を成功に導いてきた実績を持ちながら、現在はさらに多様なキャリアの選択肢を提供すべく挑戦を続けている。今回のインタビューでは、同氏が大切にしている“人への寄り添い方”や“可能性を摘まない姿勢”を中心に話を聞いた。本コラムが、あなたのキャリアを変える一歩になれば幸いだ。
※内容や肩書は2025年7月の記事公開当時のものです。
大切なのは、“あらゆる可能性を検討する視野”と、“相手に寄り添う姿勢”
――まずはこれまでのキャリアと、エージェントを志すようになった経緯を教えてください。
石崎:新卒では大手損害保険会社に入社して、営業を中心に幅広い仕事を経験しました。最初は町の保険代理店さんへの飛び込み営業、続いて一部上場企業を中心とした大企業営業に異動。並行して社内の採用活動やリクルーターも担当するようになりました。
転職活動を始めたきっかけは、妻にプロポーズしたことです。神戸のホテルでサプライズプランを依頼したのですが、私も妻も、そしてホテルスタッフの皆さんもニコニコで。正直に言うと保険の営業は関わる方の全員が幸せな状況というわけではないため、マイナスな場面に立ち会うことが多く、お客さんに笑ってもらえる仕事っていいなと思いまして(笑)。
前職も年収や働く環境には全く不満はなく、とてもいい会社だったのですが、一生続ける仕事かどうかと考えるとちょっと違うのではないかと感じるようになりました。
最終的にエージェントを選んだ理由は三つあります。一つは今言った通り、人に喜んでもらって報酬を受け取れる仕事だということ。しかも、クライアント企業と候補者の双方から感謝される醍醐味(だいごみ)は、他の仕事ではなかなか味わうことはできません。
二つ目は、さまざまな人とつながれること。人生一度きりなので、何か挑戦したいと考えたときに、この仕事で得たネットワークが助けになると考えました。
最後は私の経歴に関わりますが、私はいわゆる高学歴ではないんですね。恐らくうちの大学からの大手損保会社の総合職採用で内定を取ったのは私くらいでしょうし、大手総合ファームの内定も、私以外にはかなり少ないはずです。他にも今まで内定者が出ていなかったような大手人気企業の内定もいくつかもらっていまして、面接を突破する力にはそれなりに自信がありました。この強みを生かして相談者の皆さんをサポートしたいと思ったことが、三つ目の理由です。
――面接を突破するコツは何なのでしょうか。
石崎:特別なことではありませんが、落ち着いて話をすることと、自分自身の強みや魅力を客観的に整理してアピールすることが重要だと思っています。あとは、結構な数の面接を受けたので、徐々に磨かれていったことも事実です。この経験を基に、さまざまな企業の面接官になりきって相談者に対して手厚く面接練習をしています。そして実践では「まずは成功体験を積みましょう」とアドバイスできる要因になっていると感じます。
――その他にも求職者と向き合う中で大切にしているポイントがあれば教えてください。
石崎:“あらゆる可能性を検討する視野”と“相手に寄り添う姿勢”を常に心掛けています。事実と感情の両面から現状を整理し、相談者の理想のキャリアプランを実現できる方法を、頭をすり減らすぐらい考え、提案します。このように相談者の皆さんにとって最適な未来を選べる状態をつくることを、何よりも大切にしています。
合わないと思えば断っていい。エージェントをうまく活用するためのポイントとは
――石崎さんが候補者から選ばれているポイント、つまりエージェントとしての強みはどんなところだと思いますか。
石崎:フラットなスタンスで相談者に向き合うことと、徹底的に対策を重ねることの二つを特に意識しています。転職先の希望を聞いて、厳しそうだと思えば率直に「今の経験からだと厳しいです」と伝えますが、だからといって可能性を摘むわけではありません。強い意志を持って挑戦したいという人には、自分にできることは全て行い、寄り添ってサポートします。そして、その理想のキャリアをかなえるためのキャリアプランも提示して、実現可能な状態へ支援します。
例えばコンサル志望の人であれば、週一回以上のケース面接対策やビヘイビア対策を行い、数カ月かけて準備することも少なくありません。「そこまでやるの?」と驚く人もいますが、最初に徹底した対策を講じておくことで、他の企業にも応用できる力が身に付きます。
フラットな姿勢と、できる限り可能性を上げる支援を行っていることが、私自身の強みだと捉えています。
――クライアント企業と候補者、どちらの目線をより大切にしていますか。
石崎:エージェントは両者の真ん中に立つポジションですが、私はやや相談者寄りだと思います。企業にとっても良い人材の採用は重要な経営課題であるものの、やはり転職は個人にとって大きな人生の分岐点です。彼らの可能性をできる限り最大化したいという思いが、私の原動力になっています。
もちろん、企業との信頼関係づくりも非常に重要なポイントです。クライアントに対して誠実であることは常に意識していますし、だからこそ相談者にとって有益な情報をいち早く入手することもできる。そういった良い循環をつくることで相談者の皆さんにさらに価値あるサポートができるようになると考えています。
――求職者が良いエージェントを見極めるためのアドバイスがあればお願いします。
石崎:相談者から、エージェントによっては「自分の要望と全く違う求人ばかり紹介される」といったケースもあると聞いたことがあります。企業の都合やエージェントの売り上げだけを追ってしまうとそうなりがちですよね。
ただ、これはなかなか事前に見極めるのは難しいと思います。そういう意味では、売り上げ目標のKPIがないことや面談回数に制限がないエージェントに相談するのも手です。転職サイトなどで公開されている口コミを参考にするのもいいでしょう。
また、一度会ったエージェントでも、「この人とは合わないな」と思えば無理して続ける必要はありません。理想的には、まず何人かのエージェントに会い、実際に一度対策をやってみた上で信頼できる人を一人見つけます。そして、そのエージェント一人にサポートを絞り、腹を割って話し合いながらキャリア戦略を組み立てていくのがベストです。
エージェント側としても、求職者が何を求めているのかが分からないと力を発揮しづらいので、信頼できると感じた相手にはできるだけ情報をオープンにして、うまく活用してもらえればと思います。
実現したいゴールを描くのはあなた自身。実現のための戦略を立てるのがエージェントの使命
――実際にエージェントとして活動してみて、どのようなやりがいを感じていますか。
石崎:私がこの仕事を選んだ理由の一つでもありますが、やはり「人に喜んでもらえる」瞬間は格別ですね。転職という人生の大きな決断を一緒に考えて、結果として内定を得られた時の相談者の笑顔は本当にうれしいものです。もちろんクライアント企業からもらう感謝の言葉も大きなやりがいになっています。
もう一つは、転職によって人生の幅が広がる様子を間近で見られることです。近年は、例えば「最初はコンサルを経験して、その後起業を目指したい」というように、長期的な目線でキャリア形成を考えて動く人も増えている印象です。そういった人たちの人生に長く寄り添ってサポートできるのも、この仕事ならではの魅力だと思います。
――今後特に注力していきたい分野や目標について教えてください。
石崎:現在のフォルトナはコンサルとベンチャーに強みを持っていますが、今後はPEファンドや外資系金融、総合商社、IT大手などにも注力していきたいと思っています。これも、「相談者の可能性を最大限に広げたい」という思いに沿った目標です。実際にさまざまな希望やビジョンを持った人たちから相談をもらうことが増えているので、選択肢をなるべく幅広く用意して、キャリアアップの可能性を最大化していきたいですね。
――最後に、転職を検討している皆さんにメッセージをお願いします。
石崎:まずは本音で「自分のやりたいことを考える」ことが何よりも大切だと思います。実現できるかどうか分からないとか、今の経歴では無理かもしれないとか、そういった制限はいったん置いておいて、自分自身が本当に望む方向を明確にしてほしいです。その上で、どうやってそのゴールにたどり着けばいいか分からないなら、まずは気軽にエージェントに相談してみてください。
どういう順番で何をすれば将来の目標に近づけるのか、一緒に道筋を考えてくれるパートナーがいるかどうかで、結果は大きく変わります。実際に面接対策を重ねたり、長期的な戦略を描いたりする中で、「意外といけるかも」といった発見をすることもあるでしょう。
もちろんそのプロセスで「やっぱり今の会社がいいな」と感じたなら、その道を選んでも問題ありません。それも大切な気付きです。転職はあくまでも選択肢の一つなので、気負うことなく連絡してもらえればと思います。最終的にどんな道を選ぶにせよ、あなたが納得のいく未来を切り開けるよう、全力でサポートします。