商社とPEファンドはどう違う? 商社出身のカーライルVPが歩む、事業投資を究める道

2025/11/04
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新卒で総合商社に入り8年在籍した後、PE(プライベート・エクイティ)ファンドのカーライルへ。

そんなキャリアを歩む衣袋聡さんは、15年近くにわたり事業投資に携わってきたプロフェッショナル。彼いわく、商社の事業投資とPEファンドでは携わる仕事内容が異なる面もある。一方で、商社での経験がファンドで生きることも、少なくないという。

「事業投資に飽きたことはない」と、この道を究めるべく突き進む衣袋さん。そんな彼に、カーライルに移った背景や狙い、商社での仕事との違いなどについて聞いた。

〈Profile〉
衣袋聡(いぶくろ・さとし)
カーライル・ジャパン バイアウトチーム ヴァイス プレジデント。
新卒で三菱商事に入社し、インフラ関連企業への事業投資業務に従事。2018年にカーライルに参画。現在は、岩崎電気およびトライトの非常勤取締役。過去には三共理化学、マネースクエアHDの非常勤取締役なども務めた。
早稲田大学政治経済学部卒。ハーバードビジネススクールMBA(経営学修士)。

※内容や肩書は2025年11月の記事公開当時のものです。

金融に関わりつつ、主体的に意思決定できる仕事内容に引かれ商社へ

──2010年に新卒で総合商社に入社したそうですね。どういった理由でファーストキャリアを決めたのですか。

衣袋:就職活動をしていた2008〜2009年は、リーマンショックの真っただ中でした。金融というものが経済・社会に及ぼす影響の大きさを目の当たりにして、興味を抱きました。

──金融系のキャリアを志すならば、銀行などに就職するのが王道ではないでしょうか。

衣袋:確かに就活では、投資銀行なども選択肢にありました。ただ、アドバイザリー系の仕事より、金融に関わりつつ、自分たちが主語になって動きやすい仕事に携わりたいと思いました。その意味で、商社の事業投資の仕事はとても魅力的に映りました。

──入社後は、期待通りの経験を得ることができましたか。

衣袋:はい。幸いなことに、希望を出していた水インフラ関連の事業投資をする部署に配属されました。水分野という社会的に重要性が高まるフィールドで、金融・財務に関わりつつ主体的に意思決定する仕事ができたので、その点では望んだ通りでした。

新卒3年目での大役。インドネシアで現地企業の買収を主導し、キャリアの財産に

──商社時代の経験で、印象に残っていることはありますか。

衣袋:入社3年目にインドネシアに赴任したのですが、そのときの経験は自分にとって大きいです。投資先として担当する水事業会社が海外展開を加速するため、インドネシアの企業のM&Aを目指すことになり、その取り組みを主導する、ディールメイクの役割を担当させてもらえることになりました。

──新卒3年目としては、大役ですね。

衣袋:そうかもしれません。実際、分からないことだらけで手探りでした。今振り返れば、もっとうまくやれたことが数え切れないくらいあります。とはいえ、元々金融関連の仕事に興味があってM&Aにも携わりたいと思っていたので、前向きに取り組むことができました。

──そこから学んだことは大きかったわけですか。

衣袋:先頭に立ってM&Aをリードする経験を得られたのは、大きいと思います。プロジェクトの途中からは投資先に出向する形で関わり、より主導的な役割を担えるようになりました。 description

衣袋:M&Aの対象だったのは、家族経営の現地企業。最初は警戒されつつも、丁寧にコミュニケーションを重ねながら、少しずつ信頼を得ることができました。こういったプロセスが、自分にとって大きな財産になっていると思います。

そしてこのときの経験が、カーライルに移るきっかけになりました。

カーライルを2社目に選んだのは、投資哲学に共感するファンドだから

──インドネシアでの経験が、結果的にはカーライルへの転職につながったわけですか。

衣袋:そうです。既に述べた通り、現地での経験は私のキャリアにおいては意義深いものでした。一方で、この取り組み自体を振り返ると、やり切れなかったことも多くあります。

──というと。

衣袋:M&Aに関する経験・知識が足りず、反省点が多々あります。さまざまな人に苦労をかけたと思いますし、事業投資の仕事の重みを痛感しました。結果、自分が好きだと感じている事業投資の仕事に対して、責任と自信を持って向き合える人間になるには、もっと経験を積んで自らを鍛えていく必要があると思うようになりました。

──とはいえ、商社でもM&Aを含む事業投資の仕事を続けられますよね。キャリアチェンジを選んだのはなぜですか。

衣袋:投資先への出向を経験する中で、「事業投資はこうあるべき」といった自分なりの価値観が形成されていきました。その価値観に合った仕事をしやすいのは、PEファンドだという考えがありました。

──どういうことでしょうか。

衣袋:まず前提として、商社の事業投資とPEファンドのそれとでは、大きな違いがあると思っています。商社を含む事業会社による企業への投資は、多くの場合、既存事業の強化を目的になされます。つまり投資先の将来の成長、それに伴う企業価値向上に加えて、自社の既存事業に対する貢献・メリットの大きさも重要な要素になるわけです。

──PEファンドの場合は、そこが違うと。

衣袋:PEファンドはイグジット(*)を前提にしています。各投資先の企業価値向上によって収益を得るビジネスなので、既存事業とのシナジーというよりも、投資先企業の企業価値向上という命題に純粋にフォーカスして、正面から向き合います。 * 保有する株式を売却して、投資した資金を回収しつつ利益を獲得すること

──PEファンドの中でカーライルを選んだのは、なぜですか。

衣袋:カーライルの特徴の一つが、投資先にファンド社員を出向させるのではなく、投資先の社員が主体となる企業成長にこだわっていることです。カーライルのメンバーは、投資先の事業に対して強い興味や思い入れを持っている人間が多いのですが、私たちはあえて非常勤取締役という立場を取っています。そういった投資スタイルが、自分の価値観に合うと感じました。

つまり、投資先の自発性を尊重することにこだわる。われわれは時限性のある資本なので、カーライルが投資先から離れた後にも続く持続的な成長を志向することが、とても大事だと思っています。

──現在、カーライルでどのような仕事を担っていますか。

衣袋:既存の投資先としては、岩崎電気を担当して非常勤取締役を務めています。

あとは新規の開拓と、それに伴う投資の実行業務ですね。経験年数や今の役職を踏まえると、後者のディールメイクの部分で価値を出すことが求められ始める立場です。なので、さまざまな仮説を立てながら有望な企業を探して、可能性がありそうなら投資提案の内容を作るといったことを日々やっています。

──では、新しい投資先の開拓に割く時間が多いのですか。

衣袋:私の場合、今はそうです。岩崎電気は、改革の方向性が定まって実行体制も確立することができました。なのでわれわれのやる仕事は、経営陣が改革を進めやすい「環境づくり」にある程度絞られている。もちろん毎月の取締役会などを通じて重要な議論に参加していますが、比較的新規の方に時間を使いやすい、良い状態だといえます。 description

衣袋:新規の話で言うと、先日、担当する投資案件を成約に導くことができました。自分がリードする案件としては初めてのM&A成約なので達成感を得られましたし、キャリアの中でも大きな出来事だと捉えています。

──カーライルでのディールメイクの実績が、一つできたわけですね。主導する立場ならではの難しさはありましたか。

衣袋:経営陣との議論、デューデリジェンス(DD)、投資の実行など、あらゆるフェーズでやるべきことは数多くありました。それにチームマネジメントを担う身としては、一つ一つの仕事が個別最適にならないように、全体像を常に念頭に置きつつプロジェクトを管理する必要があります。

個別タスクはアソシエイトやシニア アソシエイトと協力することが多いのですが、そういった細部もちゃんと見て理解し、必要に応じて調整しつつ、案件が各メンバーの成長機会・経験にもなるようにチームマネジメントを行うことが求められます。

常々感じるのは、各論の部分を押さえないと、総論が成り立たない。また、自分自身で取り組んだことがあるからこそ社内外に適切な依頼・指示ができる、という面があります。だからこそ、シニア アソシエイトとして入社して以来担ってきた細かい仕事の経験が、重要になります。

PEファンドはゼロベースで投資を考える。分析力と説明力が鍛えられる環境

──カーライルへの転職の部分で少し触れましたが、商社とPEファンドの違いについて、もう少し掘り下げたいです。

衣袋:既に述べたことに付け加えると、商社の事業投資は特定の産業領域の中で投資を検討することが多いのも特徴ですね。私の場合は、それが上下水インフラ分野でした。そしてその分野内で有望な、「既に知っている企業」への投資を志向するケースが多いと思います。

──PEファンドはそうではないと。

衣袋:その通りです。幅広い分野の企業を対象にしつつ、客観性を持って比較・検討して投資先を決めていきます。結果として、大抵チームの誰かが追いかけてきた業界や対象企業なのですが、自分にとってはそれまで知らなかった企業への投資を担当することも少なくありません。

あと商社は基本的に自社の資金で投資しますが、PEファンドは出資してくれる投資家の資金を用います。この違いも大きいですね。

いずれも事業投資ですし、それぞれ良さがあります。両方を経験した上で、個人的にはやはりPEファンドでの仕事が合っていると感じます。

──なぜでしょうか。

衣袋:世の中に存在するさまざまなビジネスモデルを知ったり、いろいろな分野の魅力ある経営者に出会ったりすることができて、知的好奇心をかき立てられるからだと思います。

──なるほど。ただその分、大変さもありますよね。

衣袋:はい。フラットな目線を保って、客観的な分析を続ける必要があります。融資してくれる金融機関や出資してくれる投資家への説明責任もあります。常に、会社や経営者からパートナーとして選んでいただけるか、という健全な緊張感もあります。

──鍛えられる環境ということでしょうか。

衣袋:振り返ると、商社でのキャリアもビジネスパーソンとして大いに鍛えられる環境だったと思っています。PEファンドでは集中的に鍛えられる対象が少し異なり、事業の全体を俯瞰(ふかん)して見る力や、客観的・定量的に分析する力、論理的に説明する力が、特に磨かれると思います。

商社でトレーディングを担う人にも、PEファンド転職のチャンスあり

──商社時代に経験したことの中で、カーライルで生きていると思うことはありますか。

衣袋:私が商社で所属した部署は、トレーディング経験者と事業投資経験者がうまくミックスした環境でした。トレーディングに長年携わられてきた先輩たちはクライアントに徹底的に寄り添うことで相手の立場に立って考える力が研ぎ澄まされていました。クライアントから業界・事業のことを教えてもらいながら育った先輩たちからは「投資先の人はその事業のプロだから、その人たちから教えていただける謙虚な姿勢でいるように」「業界のプロに教えていただく場面ばかりなのだから、単に株主としての立場から、自分を偉いと勘違いするのは恥ずかしいことだ」というような考え方を学びました。

20代でこういう意識を徹底的に植え付けられたのは、自分の基礎になっていると思います。また、実際に投資先に出向した経験は、すごく生きていると感じます。株主から来た人に対する投資先の従業員の方々の心理を、数年の時間をかけて理解していく機会をもらいました。

こちらが思っている以上に、投資先の方々からは「株主の人」として見られる。例えば業務で連携する際も、いくら近い関係を築いていると自分で思っていたとしても、投資先の方々にとっては「同僚とのコミュニケーション」ではなく「株主とのコミュニケーション」になります。この前提を忘れると思わぬ勘違いに陥ったりするので、肝に銘じるようにしています。

もちろん、金融・財務系の経験・知識は活用できています。私の場合はM&Aの経験が直接生きましたし、商社にいる人は何らかの形で金融・財務系に携わると思うので、そこは一つの強みになると思います。 description

衣袋:ちなみに商社にいる人の中だと、事業投資の経験者だけがファンド転職の可能性があると捉えられがちですが、私はそうは思いません。例えば今の商社の事業モデルを鑑みると、トレーディング部門の人も、実態は出資した子会社を通じてトレーディング事業を営んでいると思います。その場合、商社とトレーディング事業子会社は事業投資の関係にあるわけなので、本質的には事業投資に近い経験をしている可能性もあります。

なので、商社内のいろいろな人にチャンスがあると思います。

──逆に、カーライルに来て新たに学び直す必要があったことはありますか。

衣袋:ギャップという意味では、投資の検討から実行までの期間の違いは大きかったですね。商社では半年以上かける投資の意思決定を、カーライルだと数カ月で進めたりする。転職した直後ですが、月曜日が始まった時点で「金曜日がどういう終わり方をするか全く予想できない……」とスピード感のある印象を抱いたのを覚えています。

徐々にですが、投資プロセスの全体に考えを巡らせつつ、手戻りが生じないようまず考え抜いてから仕事の進め方を決めるようになりましたね。カーライルで何回か案件を経験した上で、できるようになったことです。

──今商社にいてファンド系企業の仕事に興味を持っている人に対して、アドバイスはありますか。

衣袋:繰り返しになってしまいますが、PEファンドは全体感を持って客観的・定量的に分析する力と論理的に説明する力が、より求められる環境だと思います。その観点で、短期的にPEファンドで生かせることをもう少し具体的に言うと、財務モデリングやプレゼンテーションの力は基礎力として重要になります。

それから中期的な話をすると、PEファンドのディールリーダーとして案件を率いるときには、必ず強いオーナーシップが求められます。なので、商社で自らオーナーシップを持って事業投資先の業績や企業価値の向上を促す経験をしていれば、親和性があると思います。そのときに個別のタスクだけを見るのでなく、自分の仕事が直接的・間接的にモデルのどのレバーを動かし、業績・企業価値の向上に寄与するのかを、俯瞰して考えられるようになるとより良いと思います。

最後に長期的なことを言うと、商社もPEファンドも、向き合う企業や業界を「こう変えたい」という考えを持った取り組みが求められると信じています。魅力ある強い経営者に自分たちと組んでもらえるか、良い会社に資本を受け入れてもらえるかは、最終的には個々人の総合的な力量にかかっていると思います。

商社の中には、向き合う業界の将来を語れる魅力ある先輩・同僚がいるはずで、私はそういう方々から、企業や業界のことを真剣に考え、思い入れを持って語るお手本を見せていただいた気がしています。分析的な視点やコミュニケーション力はもちろんのこと、いわゆる人間力の側面で学べる機会も大いにあると思います。 description

コラム作成者
外資就活ネクスト編集部
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