AI時代を勝ち抜く価値提供 JV型ビジネスモデル構築に向けた組織再編の真相

2026/07/28
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「自分が提供しているサービスで、顧客は10年後も生き残れるのか?」。もしあなたが、コンサルティングファームやSIerの最前線で、そんな根源的な問いを抱えているとしたら、その違和感は間違っていない。

総合コンサルティング会社のライズ・コンサルティング・グループ(ライズ)は今、そうした危機感を背景に大胆な組織再編を断行している。新たに導入された「SBU(ストラテジック・ビジネス・ユニット)制」は、単なる形式上の変更ではない。2030年から2032年ごろに到来すると予測される「AI時代の変革点」を勝ち抜き、コンサルティングというビジネスモデルそのものを再定義するための、攻めの布石だ。同社が目指す次世代のコンサルティング像は、いかなるものか。代表取締役社長の松岡竜大氏の言葉から、その全貌に迫る。

〈Profile〉
松岡竜大(まつおか・たつひろ)
代表取締役社長
ソフトウエア企業、外資系コンサルティングファーム、シグマクシスを経て、ライズ・コンサルティング・グループに参画。通信、メディア産業、小売り、公共分野などでのコンサルティングプロジェクト経験を持つ。

※内容や肩書は2026年7⽉の記事公開当時のものです。

SBUへの組織再編がもたらすリプラン能力

――これまでのワンプール制、プラクティスを解体し、新たにSBU制へ移行しました。どのような意図があるのでしょうか。

松岡:大きな理由は3つあります。1つ目は「権限委譲による意思決定の迅速化」、2つ目は「従業員の成長体験(EX)の最大化」、そして3つ目が「AI時代を見据えたビジネスモデルの転換」です。

これまで当社ではワンプール制に「戦略」や「IT」といった機能別のプラクティスを掛け合わせていました。今回それらを解体し、現場へ権限を大幅に委譲するSBU制へと舵(かじ)を切りました。具体的には、これまで全社一律だったチャージ単価の設定、採用権限、さらには教育プランの策定に至るまで、全てをSBU側に移管しています。市場の動きに対して、最も解像度高く接している現場が自律的に意思決定する。これこそが、変化の激しい現代において顧客に真の価値を提供し続けるための最適解だと考えたからです。

――新体制では「SBU1」「SBU2」「タレントマネジメント部」を設定しています。それぞれ具体的にどのような役割と戦略の違いがあるのですか。

松岡:それぞれが見据えている「市場」と「戦い方」が明確に異なります。まず、SBU1が主戦場とするのは、PMOや実行支援の領域です。競合他社の多くが「個人」をクライアント先に送り込むモデルであるのに対し、われわれはあえて2〜3人の「チーム体制」で参画することにこだわっています。個人依存では品質にバラつきが出るため、チーム体制で組織としてデリバリー品質を担保し、誰が担当しても高い価値を出し切る。チームによる品質担保こそがSBU1の差別化戦略の核です。

SBU2は、いわゆるメガファームと対峙(たいじ)する、戦略・専門領域です。ここでは製造、TMT(通信・メディア・テクノロジー)、金融、公共といった特定業界の深いドメイン知識(インダストリー軸)と、DXや新規事業開発といった機能(サービス軸)を掛け合わせ、より経営の核心に近い課題を扱います。

タレントマネジメント部は、これまでのワンプールの思想を引き継ぎ、SBUに所属する前のコンサルタントが在籍します。 description

――一見すると効率重視で組織を分けたようにも見えますが、コンサルタント個人のキャリア形成にはどう影響するのでしょうか。

松岡:組織を分けましたが、それによって人材の流動性が止まるサイロ化だけは、絶対にさせないと決めています。大手ファームによくある、組織の壁に阻まれて身動きが取れなくなるような状態は、私が一番嫌っていることでもあります。だからこそ、今でもワンプールの思想には強くこだわっています。

上流のきれいな戦略(SBU2要素)だけを知っていても、現場がどう動くか(SBU1要素)を理解していなければ、実効性のある解は出せません。一方で、現場の泥くさい実行支援を知っていれば、プロジェクトの前提が崩れた際も、本質に立ち返ったリプランが可能です。

ですからコンサルタントは、マネージャーに昇格するタイミングで初めて、自らの専門性を決め、SBUを選択します。それまではタレントマネジメント部に在籍し、課題設定能力と課題解決能力の両輪の、高い次元での獲得を目指します。この越境的なキャリアパスこそが、AI時代においても替えの利かないコンサルタントとしての市場価値を形作ると確信しています。

パートナー自らが現場に立つ、圧倒的な顧客志向と身軽さ

――大手ファームからの転職も多いと聞きました。その人たちは、どのような理由で門をたたいてきたのでしょうか。

松岡:端的に言うなら、完成された大組織故の“遊び”のなさと、社内政治の重圧です。巨大化した組織では、仕組みやルールが高度に整備される一方で、新しい挑戦や変化を生み出す余白が失われがちです。方向性を少し変えるだけの意思決定に半年もの時間を要し、そのための社内調整や根回しに現場のコンサルタントが疲弊している。本来、100%顧客に向けられるべきリソースが、大手ファームでは組織を維持するための内向きの業務に割かれているのが実態です。

――具体的に、どのような制約が個人のパフォーマンスを阻害していると感じますか。

松岡:深刻なのは、極端な“縄張り”意識です。特定のパートナーや部門が長年抱えているクライアントに対して、たとえ新しい価値提供の形が見えていても、組織の壁に阻まれて手出しができない。また、グローバル共通のルールやソリューションの縛りで、顧客にとって最適でない「型」を押し付けざるを得ないケースもあります。当社にはそうした制約が一切ない。この身軽さこそが、優秀な人材が実力を100%解放するための絶対条件だと考えています。 description

――その身軽さは、ビジネスモデルやコスト構造にも表れているのでしょうか。

松岡:はい。われわれには、外資系ファームのようなグローバル本社や、過大なブランド維持費はありません。この徹底したコスト最小化設計が、巡り巡って顧客への提供価値を最大化させています。さらに、最も大きな特徴はパートナー自身の役割にあります。一般的に、大手ファームのパートナーは営業や組織管理が主な仕事になり、現場のデリバリーからは離れてしまいます。しかし、当社のパートナーは自ら「50%の工数(チャージ)」をプロジェクトの現場に投下します。

その狙いは2つあります。第1に、最高峰の知見を持つパートナーが直接デリバリーに責任を持つことで、顧客に圧倒的な安心感と成果を提供できるからです。第2に、パートナーが稼働することで、中間管理コストを排し、競合他社よりもはるかに競争力のある適正な単価設定が可能になります。例えば、月100万円規模の「経営陣の壁打ち案件」のような、大手では採算が合わない仕事であっても、それが顧客の未来を創る一歩であれば迷わず拾いにいきます。ノルマや社内政治に縛られた「売るためのコンサルティング」ではなく、真に顧客の隣で伴走する「勝たせるためのコンサルティング」を標ぼうしているのです。

AI時代の2030年問題にコンサルティングはどう変わるか

――組織再編を急いだ背景には、AIの発展により「2030〜2032年ごろに大きな変革点が来る」という予測があると聞きました。AIによってコンサルティング業界はどう変わるのでしょうか。

松岡:私は AI時代を、2つのフェーズで捉えています。第1段階は今から2032年ごろまでの「AIによる生産性革命期」です。まずは、顧客側のデジタル人材不足がより深刻化します。AI導入を進めたくとも使いこなせる人材が社内にいない企業が大半で、導入支援や内製化支援が大きな収益源になるとみています。

――コンサルティングの付加価値が、より「仕組み作り」へシフトするということでしょうか。

松岡:その通りです。そして、おおよそ2032年以降に訪れる第2段階が、真の変革点です。この時期になると、コンサルタントがこれまで付加価値としてきた情報整理や定型的な分析作業は、ほぼ完全にAIに代替されます。そのとき、われわれに残される役割は2つしかありません。一つは、顧客固有の文脈やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)、感情を理解した上での「意思決定支援(SBU2的要素)」。もう一つは、AIがアクセスできない非公開データや知見を武器にした「高度な課題解決(SBU1的要素)」です。 description

――そうした時代を見据え、ビジネスモデル自体も変えていく必要があると。

松岡:はい。従来の「人月単価×工数」というフロー型のビジネスモデルだけでは、生産性が向上すればするほど売り上げが下がるという矛盾に陥ります。そこでわれわれが見据えているのが、BS(貸借対照表)思考での「投資型」へのシフトです。具体的には、顧客企業とジョイントベンチャー(JV)を設立し、共にリスクを取って事業を成長させる。そして、最終的にその事業を売却することでキャピタルゲインを得るモデルです。

――アドバイザーから共同経営者へ、立ち位置そのものを変えるということですね。

松岡:AIがコモディティー(汎用品)化する世界では、単なる知識の提供に価値はなくなります。「リスクを共有し、共に事業を創り上げるパートナー」として、顧客のBSにまで踏み込む。現在、多くのファームが「売り上げ(PL)」を追っていますが、われわれは2032年ごろを境に、キャピタルゲインという「資産(BS)」を成長の柱に据える構想を描いています。この転換を成し遂げるためには、今のうちから現場の権限を強め、自律的に動けるSBU制を定着させておく必要があるのです。

AIが切り捨てる「無駄」にこそ、プロの価値が宿る

――これからの激変期において、ライズが求めるのはどのような人物ですか。

松岡:一言で表せば、今の自分が提供しているサービスの延長線上に顧客の10年後の成功が見えない、そんな違和感を抱きつつも大組織の制約に縛られ「窮屈さ」を感じている人です。これからのAI時代、コンサルタントに求められるのは、数値化できない価値に対する解像度を上げることだと考えています。

――数値化できない価値とは具体的に何を指すのでしょうか。

松岡:AIが全てを最適化する時代には、どの企業も同じように効率的でミスのない製品を作れるようになり、市場の圧倒的な同質化が起こります。放っておけば、どのメーカーからも同じ形の車が出てくるような世界です。そのとき、企業が選ばれる最後の理由は、AIの観点からは「無駄なコスト」と切り捨てられるような、情緒的なこだわりや熱狂、つまり「共感」です。

例えばスーパーカーが爆音を響かせて走る姿はAI的な最適解からは程遠い。しかし、そこに「かっこいい」と惹かれる人々が集まることで、圧倒的な競争優位性が生まれます。われわれはこれを「共感資本主義」と呼んでいます。これまで会計上では「のれん」という言葉で片付けられていたIP(知的財産)やブランド、意匠、あるいは社会課題解決への意志といった無形資産こそが、これからの企業の核になります。

――最後に、大手ファームで悩んでいる次世代層へメッセージをお願いします。

松岡:大組織の制約の中で過ごすのか。それとも、ライズという身軽な環境で、顧客の無形資産を正当なビジネス価値へと昇華させる最前線に立つのか。われわれが求めているのは、単なる優秀な作業者ではなく、自ら「ない道を切り拓く」覚悟を持った人材です。

2032年ごろの変革点を迎えたとき、あなたは「選ばれる側」にいる自信がありますか? もし今の環境に不安を覚えるならば、われわれと共にコンサルティングの枠を超えた「次世代のモデル」に挑戦しましょう。顧客と共に社会課題を解決し、キャピタルゲインを分かち合う。その生き方は、間違いなく刺激的です。 description

コラム作成者
外資就活ネクスト編集部
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