Negotogatariです。
前回はPEファンドの仕事の全体像を記しました。今回はその中でも特に重要な投資先の企業価値および株式価値とは何か、そしてPEファンドはどのような仕組みでリターンを得るのかについて、語らせていただければと思います。
少し難しい話も混じりますが、できる限り分かりやすく解説したいと思います。
・「企業価値=株式価値」にあらず。収益力、資産、負債などとの関係性とは
・企業価値評価の王道=EV/EBITDAマルチプルによる手法
・キャピタルゲインをどう生むか。PEファンドが投資で重要視する3つのポイント
・主役はあくまで投資先。「プロデューサー」役に徹するのがPEファンド
「企業価値=株式価値」にあらず。収益力、資産、負債などとの関係性とは
金融や経営の世界ではよく「企業価値(EV:Enterprise Value)」という単語が用いられます。PEファンドの仕事を説明する上でも、不可欠な単語です。その名の通り「企業の価値」を指しますが、そもそも「企業の価値」とは何でしょうか?
資産価値? 純資産? 株式の価値? 時価総額? 世の中の評価?
色々な考え方があると思います。ただ、企業の買収とExit(売却)を生業としているPEファンドにとって、企業価値は「投資先企業の買収時の価値」であり、投資実行後はExitに向けて、その価値を高めていくことでリターンを創出していきます。
このリターンの仕組みを紹介する前にまず知っておいていただいきたいのが、 「企業価値 = 株式価値」ではないということです。
そもそも企業の価値は、主にその企業の収益力または資産の価値によって評価されます。
では、その収益力とは何でしょうか?
企業は保有する資産に加え、従業員のスキルやネットワークなど目に見えない力も駆使して収益を生んでいます。頭の中にB/S(Balance Sheet、貸借対照表)を思い浮かべてください。
その左側に計上されている資産、そして計上されていない「無形の資産」を使って収益を生んでいるわけです。そのため概念としては、企業価値はB/Sの左側を評価したものです(B/Sの簿価と企業価値評価の差はのれんや営業権に該当する概念となります)。
そして、それらの資産を獲得し保有し活用するために調達している資金が、負債と株式に当たります。B/Sの右側ですね。よって、この企業価値は、負債と株式の出し手がそれぞれ分け合って享受すべき価値と言えます。
負債の場合、貸し手は一定の金利を受け取るものの最終的な返済額が固定されているので、企業価値が上がっても恩恵はあまり受けず、限定的な価値が割り振られることになります。
なお企業は保有している現預金分であれば、すぐに負債削減に充てることができるため、有利子負債から現預金を控除したNet Debt(純有利子負債)を企業価値から差し引いたものが、株主に回る株式価値となります。
よって、「企業価値(EV)– Net Debt = 株式価値」となります。
なお、上場企業ならば、株式価値が時価総額という形で世の中に評価されています。この時価総額を前提に企業価値を算出する場合は、「時価総額 + Net Debt = 企業価値(EV)」となります。
PEファンドは「EV/EBITDAマルチプル」で企業価値を語る
さて、 企業価値と株式価値の関係性はこれまで解説してきた通りですが、そもそも企業価値とはどうやって評価するものなのか?
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