『官庁に入れば一生安泰だ』という話も、今は昔。最近では、民間の世界へ転身する官僚の方も少なくありません。
(過去のコラムとしてこちらもご参照ください。 官僚・国家公務員から転職?あまり知られていない民間企業での活躍 )
今回取材した戸山さん(仮名)は大学卒業後に官庁に就職。5年ほど働いたのち、海外留学制度を利用してアメリカに留学し、MBAを取得します。その中で官僚の外の世界を知り、転職を決意。
今回は戸山さんに「官僚からの転職を決意した理由」や「官僚と外資系投資銀行の違い」などについてお聞きしました。
・官僚から転職を考えたきっかけは「NY留学」。転職理由は「裁量の少なさ」と「配属リスク」
・転職活動では数十人にOB・OG訪問!「おかげで投資銀行入社後のギャップはほとんどなかった」
・官僚と投資銀行の違いは「スピード」と「精度」。官僚をファーストキャリアで選んで後悔なし
官僚から転職を考えたきっかけは「NY留学」。転職理由は「裁量の少なさ」と「配属リスク」
――まず戸山さんの経歴について教えてください。
戸山:学生時代から、世の中に貢献できる仕事に就きたいと考えていました。そこで学生なりに一生懸命考えて出した結論が、官庁で働くことでした。
現場で働いたのは5年ほどです。国の機関だけあって、携わる仕事の規模は非常に大きく、動かすお金も数千億円、数兆円規模のものが多かったです。
大きなお金を動かすので、民間企業の30代後半から40代後半の経営層の方々と一緒に仕事をすることも多く、色々なことを学ばせていただきました。
その後、海外留学制度を利用してアメリカに留学し、現地のビジネススクールに通ってMBAを取得しました。このころから転職活動をスタートし、帰国後に活動を本格化。結果として今勤めている外資系投資銀行からオファーをもらい、転職しました。
――転職を決意した理由は何ですか。
戸山:まず「官僚では専門性を身につけにくい」と思ったことが転職を考えた理由です。
官庁にいるとスケールの大きな仕事に関わることはできます。しかしスケールが大きなだけあって、個人が持つ裁量権はむしろ小さいのです。私の場合は若手でしたから、ほぼないといっても過言ではありませんでした。出世すれば裁量権も大きくなりますが、通常中間管理職になるには10年以上かかります。
また「配属リスク」も専門性が身につきにくいと思った一因です。
――官庁にはどんな配属リスクがあるのですか。
戸山:官庁では、2〜3年ごとにジョブローテーションがあります。異動希望を出すこともできますが、私が在籍していたころはほぼ希望は通りませんでした。
例えば私は毎年「他の省庁には現時点では行きたくない」と希望を出していましたが、他省庁出向となった経験がありました。同僚にも「子供ができたから、比較的ゆっくり働ける部署に行きたい」と希望を出したにもかかわらず、通らずにハードな部署に異動になった人がいました。
こうしたことがあったので、民間企業の方が裁量権があり、専門性も身につけやすく、自分の力で社会貢献しやすいのではという思うようになりました。
その思いが確信に至ったのが、ニューヨーク留学でした。
――どうして確信に至ったのですか。
戸山:留学先のビジネススクールでの、世界中の優秀なビジネスパーソンとの出会いが大きなきっかけになりました。留学は転職目的ではありませんでした。しかし、海外のMBAで官僚時代には知ることのできなかった様々な仲間のキャリア観や人生観に触れたとき「このまま官僚を続けているよりもビジネスサイドでできることの方が大きい」と思ってしまったのです。
また官僚の働き方についても不安でした。留学前を振り返ると、長時間残業が当たり前、休日出勤や朝まで働き続けるのも日常茶飯事でした。特に自分に子供ができたときに「職場で第一線で活躍し続けるのは厳しい」と感じてしまいました。これも転職理由の一つです。
転職活動では数十人にOB・OG訪問!「おかげで投資銀行入社後のギャップはほとんどなかった」
――転職活動はどのように進めたのですか。
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