TikTokの運営会社であり、CBinsightが2019年1月に発表した「メガユニコーン」リストで堂々の世界1位に輝いたByteDance。今回はそのByteDanceの中国本社に新卒で入社し、現在は日本でAIエンジニアとして活躍している川内光さん(仮名)に取材いたしました。
Liiga読者の中には、米国・中国のBigTechやユニコーン企業で働いてみたいと考えている人も、少なくないのではないでしょうか。
しかし川内さんは「そもそもBigTechやユニコーンというだけで、そこに転職したいと考える発想がアウト」と言い切ります。
川内さんに「中国ユニコーン企業のキャリア事情」や「日本のIT企業と中国BigTechの違い」、「海外のBigTech・ユニコーン企業転職志望者へのアドバイス」についてお話を伺いました。
・「新卒から年収格差10倍」「降格人事は日常茶飯事」中国の人事制度は“超・結果主義”
・「社内の隣のチームに負けるな!」「競合転職もニックネームで切り抜ける」中国の激しい昇進・転職事情
・ByteDanceが超ハードでも楽しかった理由は、「結果を出すために100%の時間を使える」環境だから
・ユニコーン企業に向いていない人は、「ユニコーン企業というだけで転職したいと考えている人」
「新卒から年収格差10倍」「降格人事は日常茶飯事」中国の人事制度は“超・結果主義”
――まず、川内さんはByteDanceにはどのような経緯で入社されましたか?
川内:まず日本の大学を卒業後、大学院は中国に留学していました。ByteDanceには中国の大学院時代にインターン生として入社して、そのまま正社員として採用されました。当時のByteDanceの従業員数は1,500人程度。今は5万人を超えていますから、同社がちょうど伸び盛りの時期に入社したことになりますね。
――ByteDanceではどのような仕事をされていましたか?
川内:ByteDanceが最初のグローバルプロダクトとしてリリースしたニュースアプリ「TopBuzz」の動画版「BuzzVideo」のレコメンドエンジンのアルゴリズムエンジニアをしていました。
――中国のユニコーン企業の人たちは、どのような働き方をしているのでしょうか?
川内:一言だと、中国のユニコーン企業はどこも「徹底した結果主義」が浸透していますね。
例えば中国のIT業界の就職活動は、まず3ヶ月の長期インターンをしないと正社員になれません。そしてインターンといっても、仕事内容は正社員と変わりません。私もインターンの時から本番環境のデプロイメントを担当していました。
――日本の就職活動やインターンとは大きな違いですね。
川内:そうですよね。ただこの採用方法は「非常に合理的」です。
中国のインターンの場合、まず採用を決めるのも、正社員への登用を決めるのも、入社後の上司になるのも全て「現場の同一人物」です。実力は分からないけど1度人事がポテンシャルで採用して、配属先もどこに決まるか分からない、日本とは大きな違いがありますね。
そして新卒でも完全に実力連動で評価されます。同じ新卒エンジニアでも、新卒入社時点で年収は最高10倍の格差がありましたね。みんなバラバラでした。
――中国のユニコーン企業の場合、入社後の昇進はどのように決まりますか。
川内:「完全成果主義」ですね。
実力に応じどんどん昇進し、給料も上がります。年齢も関係ありません。そもそも会社の平均年齢は26歳で、僕の上司は私と同い年でしたね。その人は学部卒でそのまま百度(バイドゥ)に5年いてByteDanceに移ってきた方でした。
しかしその分責任も大きくなり、昇進するほど失敗したら厳しい評価を下されます。
例えば日本では一旦昇進すれば降格しにくいじゃないですか。しかし「中国では降格人事は日常茶飯事」なのです。例えば僕がいた部署はトップが2年間で4人変わりました。短期間で結果が出せなければ中国では仕方ありません。
あと、単純に権限を奪われることもよくありますね。
「今まで君の責任範囲はこのプロダクトの全部だったけど、今後はこの部分だけね」とか、「今後は、君が彼に報告する立場になってね」とか。かなり露骨です。会議で上司から名指しで批判されることもあります。
しかし、降格させられたら転職する人も多いですね。自分の能力と環境がマッチしていないと分かれば、すぐに環境を変える決定をするのです。
――その点も含め、合理的なキャリア観ですね。
「社内の隣のチームに負けるな!」「競合転職もニックネームで切り抜ける」中国の激しい昇進・転職事情
――ByteDanceの人事評価では、特にどのような点が重視されますか。
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