Big4 FASと中小FASの違いとは?FAS(ファイナンシャル アドバイザリー サービス)業務内容を徹底解明
はじめに
近年、ファイナンシャル アドバイザリー サービス(以下FAS)業界へ転職する人、また新卒で就職する人が増えております。特にBig4と呼ばれる、会計系の4社(EY、デロイト、PwC、KPMG)系列のFASではマーケットの賑わいもあり、大量に採用を行っております。
FASはM&Aや事業再生といった分野で活躍している業界ですが、その実態についてわからない方も多いのではないでしょうか。また、未経験の方も採用しており、実情を知る機会がないまま就職してしまう場合も多いと思います。
そこで今回は、長年実務に携わってきたD氏にインタビューを行いました。入門的な内容になっておりますので、FASに馴染みのない方、必見です。

まずは基本的な仕事内容を知ろう
―本日はよろしくお願いします。現在はベンチャー企業で管理部の業務についているということですが、これまでの経歴をうかがってもよろしいでしょうか。
簡単な経歴を説明すると、理系学部を卒業後、エンジニアとして数年働き、その後公認会計士に転じました。
4大監査法人に就職後、同系列のFASに転職をしました。その後、中小の会計系コンサルティング会社で、事業再生、M&A戦略や事業戦略といった経営よりの仕事を経験してきました。現在は、ベンチャー企業の管理部でIPOに向けた業務を行っています。
-FASについてご解説いただきたいと思います。具体的にどういった仕事があるのでしょうか?
専門的に分けるとかなり多岐にわたるのですが、所属していたBig4系の会社の業務をもとに主要なものをあげると、以下の6つがあります。
2. デューディリジェンス
3. 事業再生アドバイザリー
4. バリュエーション
5. PMI(Post Merger Integration)
6. フォレンジック
―各業務の内容は、どのようなものでしょうか
それぞれの業務について、簡単に説明したいと思います。
1.M&Aアドバイザリー
M&Aアドバイザリーは、投資銀行のIBDで馴染みのある方が多いと思いますが、基本的に行う業務は同じです。大手の投資銀行では、最低でも100億円以上のディールしか扱わないことが一般的ですが、Big4のFASでは投資銀行より規模の小さい案件が中心となります。
Big4も100億円以上のディールを扱おうと思えばもちろんできるのですが、投資銀行は営業力がすさまじいため大きい案件を獲得し、結果的にすみわけができているというわけです。私から見ると投資銀行は金の亡者というイメージが強いですね(笑)。
その他、投資銀行がほぼ参入していない事業領域として、税務的要件が強く関わってくる同族会社内M&Aがあります。非上場企業等で、複数子会社を有し、節税用の資産運用会社を持っている場合や、子息等への相続を意識した組織になっている会社のM&Aは税務に関する知識が必要なため、会計系ファームのFASが強みを有します。これはBig4よりも税務業務を得意とする中小のFASが得意としていますね。
2.デューディリジェンス
続いて、デューディリジェンス(以下DD)ですが、DDにはいくつか種類があります。
有名なのが、財務DDと法務DDです。ほかにはビジネスDDや人事労務DDといった領域があります。
財務DDとは、公認会計士の監査業務に近いものがあり、買収にあたって、買収先企業のPLやBSをチェックして財務上問題がないかを確認します。
こちらは監査業務に近いこともあり、公認会計士の方が多く所属しています。私自身もそうでしたが、会計士出身の方が活躍している領域になります。
法務DDは、文字通り、契約書を中心に法務上のリスクがないかをチェックする業務で、弁護士に依頼することがほとんどであり、人事労務DDは社会保険労務士に依頼することが多いです。
ビジネスDDですが、こちらは逆に事業会社出身の方が重宝されるDD領域です。該当事業のビジネスモデル含め、ビジネスの価値を算定するわけですから事業会社でバリバリ経験があり、「事業の理解」ができる方が活躍します。特にM&Aの場合、複数の事業が一緒になった時のシナジー効果を発想できる人であれば、社内でそれなりの地位を築けるでしょう。よって、FASに事業会社出身の人が転職して活躍するのはこういった業務があるのも一つ要因です。
3.事業再生アドバイザリー
事業再生は経営難に陥った会社を、経営戦略や財務的な観点から再生に導く仕事です。Big4が行う事業再生アドバイザリー業務は、不要な資産や事業を売却するなどして資金繰りを改善させる、財務的アドバイザリーが中心になります。
ただ中小のFASの中には、財務アドバイザリーに加えて、再生会社の中に人材を送り込むいわゆるハンズオンを行っているところがあります。ハンズオン業務は、経営戦略の立案や社内の仕組化等の業務を行うため、FASから事業会社に転職した時に非常に力を発揮できます。業績的に下向きのクライアントが多いため報酬が得にくくまた時間もかかることから、Big4や収益重視のコンサル会社は敬遠する領域といえるでしょう。
4.バリュエーション
会社の事業価値や株式価値などを算定する業務です。これはポジションによっては当該作業のみしかしないこともあるため、バリュエーション職人を目指してスキルアップしたい人や内向きの作業が好きな人にフィットするような気がします。
一方で、会社のビジネスの現場を深く理解することは難しいため、最大のカギとなる事業計画を作成する能力を持っていないなど、事業会社を目指したい人には難もあります。
5.PMI(Post Merger Integration)
事業の買収が終わった後に、システム統合や、事業戦略の実行のため管理体制の構築から文書の作成といった泥臭い部分を行う業務になります。これは前述のハンズオンに非常に似ている業務のため、Big4ではほとんどやっていないのが現状ですが、経験できれば後に事業会社で活躍するキャリアパスが描きやすくなります。
6.フォレンジック
フォレンジックに関して私自身は経験がないのですが、おおまかに説明すると不正調査を目的にハードディスク等の中身をチェックするといった警察がやるような仕事をしています。Big4の場合、その中でも会計や財務を基礎にした不正調査になると思います。通常のFAS業務からはやや距離があるイメージがあり、他のFASメンバーからは何をやっているのかイマイチ理解されていない部署になるかと思います。
中小ファームはFA業務全体を経験できるが、給与はBig4の方が良い
―いわゆる大手であるBig4と中小のファームで働くことはどういった違いがあるのでしょうか?
ビジネスの形態としてBig4はFA業務が分業体制となっており、一部分しか担当しません。例えば、財務DDだったら財務DDばっかり、バリュエーションだったらひたすらバリュエーション。もちろん、ほかの領域も挑戦できる可能性はありますが、部門移動もしくは案件へ引っ張ってくるパートナーとの人間関係が必要になります。
一方、中小のファームだとFA領域を一貫して担当できる可能性が高いです。そのため一通りの経験を積むことができるので、独立を考えている場合や事業会社の経営企画、CEO、CFOなどをキャリアパスとして考えている場合は、中小ファームで経験を積むことをおススメしたいです。
転職する際も同業のBig4をぐるぐる回る形になり同じ業務ばかりしているので経験年数が長い方でも意外にFA業務全体の流れを理解していない方がいます。
またこれはBig4に限らない話ですが、FAS部門内での業務担当は、はじめの2~3年は提案資料や成果物作成のためのパワポ・エクセルつくりが中心となります。その後案件を取仕切る立場になって、スキルや経験が一気に広がります。したがって短くても5年は勤めないと事業会社で役に立つスキルは身につかないと考えて良いと思います。
しかし、給与は大手であるBig4のほうがいいので、安定して高い給与が欲しい場合はBig4を選ぶべきです。といいながらも投資銀行に比べたら給与は高くないです。マネージャーで、1000万代前半~という感じなのでお金だけ求めていたら投資銀行にいたほうがいいです。ビジネスとしても先に述べたとおり大型案件ばかり投資銀行はやっているので高い給与を払える仕組みになっています。
―公認会計士は多くFASに転職しているイメージですが、簡単にできるものなのでしょうか?
4大監査法人ですと、基本的に系列のFASに移りやすいため転職する方は多くいらっしゃいます。しかしながら、これまでの監査業務とは当然異なるので、最初のポジションは下がっての転職となるイメージです。
―これまで様々な業務について解説していただきましたがどの業務領域で力を伸ばしていったらよいのでしょうか。
先ほど少し触れましたが、事業再生でのハンズオンやM&AにおけるPMIは事業会社で経営戦略や内部の仕組みをつくりあげる力がつきます。
事業再生する対象の会社はお金がない会社ばかりですので、ビジネスとして成り立たせるには非常にシビアなクライアントです。そしてその中で再生して結果を出すまでに地獄のような日々を送らないといけません。リストラを主導しなければいけない場合もあり、胃がキリキリする場面に多く遭遇できます。会社が生きるか死ぬか瀬戸際の中で事業再生を担い、結果を出すことは並大抵の努力ではできません。
そのため、事業再生でのハンズオンやM&AのPMIを経験できるFASを探してみることをおススメいたします。例えば、有名なところでいくとリヴァンプや経営共創基盤等があげられます。キャリア志向とマッチし、自信のある方は挑んでみてもいいと思います。
―FASに転職するにあたって何か資格や必要な準備はありますか?
絶対に必要な資格は特にないですが、FAS業務の多くは決算書類を分析する事から始まるため、簿記1,2級くらいはとっておいても損はないと思います。
―どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
おわりに
いかがでしたでしょうか。入門的な内容でしたがFASの業態を知ることがうかがい知ることができたのではないでしょうか。
もし興味のある方は、下記のリンクからエージェントとコンタクトをとることもできますのでご確認ください。
M&A Advisory (Corporate Financial Advisory)
FASに関するQ&A - よくある質問
Q1. 未経験からFASに転職する場合、どのサービスラインが入りやすいですか?
バックグラウンドによって適性のある業務領域が異なります。
公認会計士や監査法人出身者は、財務DDへの転職が最も自然です。監査業務で培った財務諸表の分析能力がそのまま活かせるため、比較的スムーズに立ち上がれます。4大監査法人であれば系列のFASへの転職ルートも確立されているため、入りやすい環境です。
事業会社出身者は、ビジネスDDやPMIを担当しているStrategy関連部署が狙い目です。特定の業界で事業経験が豊富であれば、その業界知識や事業理解の深さが武器になります。シナジー効果を発想できる力は、事業会社での実務経験者ならではの強みです。
弁護士や法務部門出身者は法務DD、社会保険労務士は人事労務DDという明確な受け皿があります。これらの専門家は常に需要があり、転職のハードルは比較的低いと言えます。
完全未経験の場合は、まず簿記2級程度の資格を取得し、財務諸表を読む基礎力を身につけることが第一歩です。その上で、事務系のポジションから入り、実務を通じて学んでいくという道もあります。
Q2. Big4から中小FAS、あるいはその逆の転職はよくあるのですか?
Big4から中小への転職は比較的多く見られますが、逆のパターンは少ないです。
Big4で財務DDやバリュエーションの専門性を身につけた後、より幅広い経験を求めて中小FASに転職するケースは珍しくありません。特に30代前半くらいのタイミングで、「このままスペシャリストとして深掘りするか、ゼネラリストとして幅を広げるか」を考えて転職を決断する人が多いです。
ただし、Big4での専門特化に慣れた後、中小での多様な業務に適応するのは容易ではありません。中小FASでは、DD業務に加えて、営業活動や提案書作成、場合によっては実際にクライアント企業に入り込んでの支援など、幅広い役割が求められます。この変化についていけるかどうかが、転職成功の鍵となります。
中小からBig4への転職は、給与アップやブランド獲得を目的とする場合がありますが、数としては多くありません。中小で幅広い経験を積んだ人材は、Big4でも評価されますが、分業体制に戻ることへの抵抗感から、別の選択肢を選ぶ傾向があります。
業界内の転職自体は活発で、「Big4をぐるぐる回る」という表現があるように、EY、デロイト、PwC、KPMGの間での転職は頻繁に行われています。同じ業務を異なる環境で経験することで、視野を広げたり、年収を上げたりする目的です。
Q3. FASから事業会社に転職する際、どのようなポジションが多いですか?
経営企画やM&A部署、財務部門への転職が一般的です。
経営企画部門は、FAS出身者が最も活躍しやすいポジションです。M&A戦略の立案、買収先企業の選定、DDの実施、PMIの推進など、FASで培ったスキルがダイレクトに活かせます。特に、積極的にM&Aを行っている企業では、FASでの実務経験が高く評価されます。
財務部門や経理部門への転職もありますが、純粋な経理業務よりは、財務分析、予算管理、投資判断といった戦略的な役割を担うケースが多いです。
ベンチャー企業のCFOも可能性はあります。財務戦略の立案、資金調達、投資家向けのIR活動など、CFOの業務はFASでの経験と親和性が高いです。しかし、経営目線での経験は少なくなってしまうため、一般的には投資銀行やPEファンド、事業会社を経由したのちにCxOになるケースが多いです。
一方、営業や事業部門への転職は少数派です。FASでの業務は本社機能に近いため、現場での事業推進経験が不足していると見なされがちです。ただし、ビジネスDDやPMIで深く事業に関わった経験があれば、事業部門のマネジメント層として転職する道もあります。
Q4. 公認会計士以外のバックグラウンドでも、FASで活躍できますか?
はい、事業会社出身者やコンサル出身者など多様なバックグラウンドの人材が活躍しています。
事業会社出身者は、ビジネスDDやPMIで強みを発揮します。特定業界での実務経験があれば、その業界のM&A案件で重宝されます。事業の本質を理解し、シナジー効果を見出す力は、財務の専門家にはない価値です。
コンサルティングファーム出身者も、戦略立案力や資料作成スキルが活かせます。特に、戦略コンサルから事業再生やM&A戦略の領域に転じるケースは珍しくありません。論理的思考力やプロジェクト管理能力は、どの業務でも必要とされます。
また、各M&Aプロセスにまつわる専門知識を持つ人は高く評価されます。例えば、弁護士は法務DDの専門家として、社会保険労務士は人事労務DDの専門家として、確固たるポジションがあります。 エンジニア出身者も、IT系のDDやシステム統合のPMIで活躍の場があります。特にDX関連のM&Aが増えている現在、技術的な知識を持つ人材の価値が高まっています。
重要なのは、自分のバックグラウンドを活かせる業務領域を見つけることです。全ての業務を公認会計士が独占しているわけではなく、多様な専門性が求められる業界であることを理解しておきましょう。
Q5. FASでの激務度はどの程度ですか?平均残業時間はどの程度ですか?ワークライフバランスは取れますか?
プロジェクトの状況によって大きく変動しますが、総じて長時間労働は覚悟が必要です。
案件が重なる繁忙期には、平日は深夜まで働き、週末も出勤することが珍しくありません。特にDDのフェーズは、短期間で膨大な資料を分析する必要があるため、集中的に激務となります。事業再生のハンズオンでは、クライアント企業の危機的状況に対応するため、不規則な勤務を強いられることもあります。
一方で、案件の合間には比較的余裕がある時期もあります。プロジェクトベースの働き方なので、案件が終われば一時的に負荷が下がります。この時期を利用して、資格取得の勉強をしたり、リフレッシュしたりすることは可能です。
Big4と中小を比較すると、Big4の方がやや体系的な働き方ができる傾向にあります。大規模な組織のため、リソース配分が調整されやすく、極端な長時間労働は起きにくい環境です。ただし、それでも月の残業時間が80〜100時間を超えることは珍しくありません。
中小FASは、少人数で多様な業務を担当するため、一人当たりの負荷が高くなりがちです。特にハンズオンやPMIを行う場合は、クライアント企業に常駐して働くこともあり、勤務時間のコントロールが難しくなります。
Q6. FASのキャリアで「失敗」と言えるパターンはありますか?
いくつかの典型的な失敗パターンがあります。
最も多いのは、専門分化しすぎて視野が狭くなるケースです。Big4で財務DDだけを5年、10年と続けた結果、他の業務ができず、転職市場での価値が限定的になってしまうパターンです。専門性は深まる一方で、事業会社やベンチャーへの転職が難しくなります。このリスクを避けるには、早めに幅を広げる決断をするか、その専門性を極めてスペシャリストとして生きる覚悟を決める必要があります。
逆に、中小FASで幅広く経験したものの、どの領域も中途半端になってしまうケースもあります。一気通貫で案件を担当したとはいえ、各工程での経験が浅く、専門性を問われる場面で弱みになります。幅を広げつつも、どこかで自分の強みとなる領域を確立することが重要です。
それ以外では、そもそも体力的・精神的に続かず、短期間で辞めてしまうケースも存在します。特に最初の2〜3年は成長実感が得にくく、資料作成ばかりで嫌気がさすこともあります。しかし、この時期を乗り越えないと本当のスキルは身につきません。短期離職は次のキャリアにも悪影響を与えるため、最低でも3年、できれば5年は踏ん張ることをお勧めします。