コンサルティング業界の盛り上がりは近年拡大しています。その中でも、戦略コンサルティング業界は新卒だけでなく、中途市場でも高い人気を誇っています。
多くの魅力があるこの業界に、どうすれば転職できるのか。それを知りたい方も、多くいらっしゃると思います。転職の難易度が高いこの業界への転職活動を成功させるために重要な準備として、職務経歴書の作成が挙げられます。
そこで、本記事では、メーカーやITなど事業会社に勤める方が戦略コンサルティング業界に入る場合を一ケースとして、職務経歴書の書き方のポイントを、例を踏まえながらお伝えします。
- 戦略コンサルと総合コンサル。コンサル群雄割拠の時代の生き残り方。
- デジタルに拡張する戦コンと戦略に拡張する総合コンの縄張り争い
- あと何が足りない?戦略コンサル転職必須スキル
- 戦略コンサルタントが魅力的な職場になる理由。それは、ビジネスパーソンが凌ぎを削って転職を目指すから
- “社会人”ができているか、もう一度確認してみる場所
- DX時代の先導役としての戦略コンサルタント
- 解雇されるのは昔の話。今はOUTはしない企業文化
- ポストコンサルは引く手あまた。キャリア展開は十人十色
- この仕事はアピールできる?強く印象付けられる事業会社の職務経歴書の書き方
- 営業職
- マーケティング職
- 経営企画職
- 財務職
- 情報不足によるミスマッチを防ぐ。エージェントなしでの戦略コンサルへの転職は困難
- おわりに
戦略コンサルと総合コンサル。コンサル群雄割拠の時代の生き残り方。
戦略コンサルティングファームに転職するために、まず仕事内容や必要なスキルついて簡単に解説していきたいと思います。
デジタルに拡張する戦コンと戦略に拡張する総合コンの縄張り争い
戦略コンサルティングファームは、企業経営の上流〜中流にあたる領域のプロジェクトを担当することが多いファームです。中期経営計画の策定のような全社レベルでのプロジェクトや、マーケティング戦略・営業戦略などの事業レベルでのプロジェクトを主に担当します。
ファームの規模としては、社員数数十人〜数百人程度のファームがほとんどであり、『少数精鋭』という言葉で表現するのが適切と言えるでしょう。
代表的なファームとしては、マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン コンサルティング グループ、ベイン・アンド・カンパニーなどが挙げられます。
一方、総合コンサルティングファームは、企業経営の上流から下流まで、幅広い領域に関するプロジェクトを担当するファームを指します。戦略コンサルティングファームが担当する経営戦略の策定はもちろん、ITシステム導入支援や業務改善、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス※)まで、担当するプロジェクトのテーマは多岐にわたります。
会社規模としては、社員数数千人程度のファームが多いです。会社規模の大きさゆえに組織体制としては細分化が進んでおり、特定のインダストリーやファンクションによるセクター化がなされていることが多いです。
代表的なファームとしては、アクセンチュアやデロイト トーマツ コンサルティング、PwCコンサルティングなどが挙げられます。
しかしながら、近年では、戦略コンサルと総合コンサルの間での線引きが難しくなっているのが現状です。
理由としては、戦略コンサルティングファームが領域を広げる傾向にあるためです。そのため、総合コンサルティングファームと同じコンペで争うことも増えてきています。
また、総合コンサルティングファームも戦略コンサルティングの案件を受注するために、戦略専用の子会社を買収し、子会社化する事例もあります。
具体的には、PwCコンサルティングがStrategy&を、EYストラテジー・アンド・コンサルティングがパルテノンを買収し、戦略の案件を引き受けるようになりました。
この結果として、戦略コンサル・総合コンサルそれぞれが、お互いの仕事を受注できる仕組みを整えた結果、図1のように線引きが少しずつ曖昧になってきています。
(※) PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)
プロジェクトにおいて、チームを管理する組織体のこと。コンサルタントは、進行中の全プロジェクトの管理支援を行う。
▲図1 各ファームの特色
▲図2 コンサルティング業界 2大トレンド
あと何が足りない?戦略コンサル転職必須スキル
戦略コンサルタントに必要なスキルの筆頭として挙げられるのは、論理的思考力でしょう。収集したデータから課題解決に有効な洞察を論理的に導き出すことが、戦略コンサルタントには期待されています。そして、顧客に対してプロジェクトの成果を適切かつ論理的に伝えられる必要があります。
加えて、クライアントやプロジェクトメンバーと円滑な意思疎通をとることができるコミュニケーション能力、難解な課題に向き合い続けることができる精神力や体力、クライアントの期待値を上回る結果を出すことに対する意欲的な姿勢が求められます。
また、英語の能力についても、あるに越したことはないでしょう。
外資系のコンサルティングファームとはいえ、日本オフィスの場合はクライアント企業が日本企業になるため、そこまで英語を使用しない場合もあります。しかし、海外の同僚から情報共有を受ける際や、グローバルプロジェクトにアサインされた場合には、英語を使用することになりますので、身につけておいた方がいいでしょう。
未経験から戦略コンサルタントになる上で、必須となる経験はほとんどないと認識して差し支えないでしょう。というのも、コンサルタントに求められるスキルセットは事業会社で求められるスキルセットとは大きく異なるためです。上述した通り、未経験からコンサルティングファームに転職した場合、一番下の職位であるアナリストからスタートすることになります。そこで、コンサルタントとして必要な能力は全て叩き込まれます。
ただし、エクセルやパワーポイントを実務で使用した経験や、顧客へのヒアリングやプレゼンの経験があれば、コンサルタントとして活躍する上でプラスに働くことは間違いないでしょう。
◇戦略コンサルティングファームについての詳細はこちらの記事にも掲載しています。
戦略コンサルタントが魅力的な職場になる理由。それは、ビジネスパーソンが凌ぎを削って転職を目指すから
ここでは、なぜ戦略コンサルティングファームへの転職が人気なのか、その理由を4つに分けて解説していきます。
“社会人”ができているか、もう一度確認してみる場所
理由の1つは、社会人基礎力”を再び身につけることができるからです。
経済産業省が定めた、「社会人基礎力」という言葉をご存知でしょうか。「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の三つの能力から構成されており、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、2006年に定義されました。
今後、人生100年時代と言われ、転職が当たり前の世の中になる中で、技術や社内スキルだけでなく、「ソフト面」でのアップデートができることは大事になってきます。
単一の業界に絞られない「社会人基礎力」が今後必要になってくることは火を見るよりも明らかなことであり、コンサルティング業界は、それを鍛えるのに適した業界といえるでしょう。
DX時代の先導役としての戦略コンサルタント
2つ目の理由は、DX化の案件が増加していることが挙げられます。
昨今のビジネス環境の変化に対応するため、企業のDX化が求められています。戦略コンサルティングファームにおける近年のトレンドとして、企業のDX支援の件数が増加していることが挙げられます。
この影響で、多くの戦略コンサルティングファームが今までの総合コンサルティングファームの仕事内容を受注するようになったことも、戦略コンサルティングファームの人気の上昇が考えられる要因の1つです。
解雇されるのは昔の話。今はOUTはしない企業文化
3つ目の理由は、企業文化が軟化したからです。
以前は、出世をするか、辞めるかといった「UP or OUT」という企業の風潮がありました。常に人の成長を促進する外資系の文化が顕著に現れていたのがこの戦略コンサルの企業文化です。
近年ではUP or OUTではなく、UP or DOWNもしくはUP or STAYという形になることで、解雇される確率がかなり低くなりました。個人としてのアウトプットよりチームとしてのアウトプットが評価されるようになったためです。しかし、降格という形は、ファームからの期待値が低くなってしまったということの表れです。そのため、自らタイミングを計りながら転職先を探して行くことになります。
しかし、自分で転職するタイミングを図ることができるようになったので、納得した転職先を見つけられるようになった部分において、企業文化が軟化したと言えるでしょう。
ポストコンサルは引く手あまた。キャリア展開は十人十色
4つ目の理由は、戦略コンサルタントになった後の転職の際、高い評価を受けられる可能性があるからです。
上述の通り、戦略コンサルティングファームは学生からの人気も高く、その業界に飛び込んで、問題解決能力・周囲を巻き込む力を身につけることで、実践的なビジネススキルが高くなることも期待されます。
これらのことから、企業文化の軟化と相まって、ポストコンサルで経営層や幹部育成コースに抜擢されることが増えてきます。
ベンチャー企業だけでなく、日系の大企業の経営層への転職といったキャリアの幅が広がるケースが多くあります。
この仕事はアピールできる?強く印象付けられる事業会社の職務経歴書の書き方
ここまで、戦略コンサルティングファームへの転職が増加している理由について解説しましたが、転職難易度は高く、なかなか手が出せないのと思った方もおられるかもしれません。
また、今までの事業会社で培った仕事が、戦略コンサルタントとしての仕事にどのように役立つかという不安もあるかもしれません。
そこで、ここからは職務経歴書の例を用いて、事業会社での経験がどのように戦略コンサルティングファームでの仕事に活用できるのか、職務経歴書で記載する要点をまとめながら解説していきます。
さまざまな職種がある中で、ここでは営業職、マーケティング職、経営企画職、財務職の4つの職種からの転職についてお伝えします。
営業職
営業職がアピールできる一例としては、どのように営業の数値を立てたのか論理的に説明をする力でしょう。
営業で数字を達成するために、どのような戦略を練り、企画したのかというプロセスの部分をしっかりアピールするようにしましょう。
≪職務要約≫
〇〇では、△△支店、××支店での営業を担当。顧客の業界の知識を入れながら対等に話を聞き出すことや、相手のニーズを深く聞き出すことで売り上げの向上に貢献。国内外の金融商品を担当した経験から、〇〇の資格の取得をすることで、コミュニケーションに生かせる知識を会得することで今に至る。
≪職務経歴≫
◆〇〇年〇月~〇〇年〇月 〇〇株式会社(在籍期間:〇年〇ヶ月)
[事業内容] 〇〇事業、〇〇事業、〇事業 など
[売上高] 〇〇億円(2013年度)
[資本金] 〇〇万円 (2014年3月末時点)
[従業員数] 連結:〇〇名(単体:〇〇名) (2014年3月末時点)
[配属先]
△△支店 〇〇営業部 配属
[担当業務]
株式・投資信託をはじめとする国内金融商品の営業
[担当実績]
〇〇年度 達成率〇〇%
〇〇年度 達成率〇〇%
顧客よりも知識を少しでも入れるために、常に深夜まで知識の習得に努めながら、営業を行なった。結果として、顧客のニーズをつかむことに成功し、結果を残すことができた。
※この職務経歴書では、それぞれ担当実績の下に3行ほど追記しています。その中で、自分がどのように営業における戦略を立て、実行したのかを記載しています。
戦略コンサルタントの重要な仕事は、先述の通り、課題を解決するための施策を考えることです。そのため、コンサルタント職に未経験の人が、論理的に考える素養があるかどうかを見極める採用が必要です。そこをクリアするために、自分がどのような方策の下で具体的に営業をしていったのかをアピールするようにしましょう。
マーケティング職
マーケティング職では、論理的に数字を構築する力が求められます。そのため、どの施策でどのような数字を次にいかに生かしたのか、面接官がしっかりと理解できるように職務経歴書としてまとめる必要があります。
アピールポイントは、事業会社で数字を見ながら商品戦略を構築することができる点です。どのように数字を論理的に構築できるかは、他職種ではアピールできない点をとも言えるでしょう。
しかし、職務内容が数字の分析や、どのようなことをしたのかに留まってしまうと簡潔になりすぎることに注意をしてください。
≪職務要約≫
新卒で〇〇に入社。〇〇では、△△分析の工程管理を行うことで、〇〇施策の履行補助を行った。この経験を異動後も生かしたことで、数字の論理的構築をする基準を引き上げることに成功した。
≪職務経歴≫
◆〇〇年〇月~〇〇年〇月 〇〇社(在籍期間:〇年〇ヶ月)
[事業内容] 〇〇事業、〇〇事業、〇事業 など
[売上高] 〇〇億円(2013年度)
[資本金] 〇〇万円 (2014年3月末時点)
[従業員数] 連結:〇〇名(単体:〇〇名) (2014年3月末時点)
[配属先]
マーケティング部 第1チーム 配属 配属
[担当業務]
〇〇施策を行う上での△△分析の工程管理
[担当実績]
△△分析の履行率〇〇%
〇〇施策を行うために必要なデータを取る必要性に気づき、△△分析の提案をした。提案の背景としては〜〜が挙げられ、□□という部分に課題感を感じたことが挙げられた。
※この職務経歴書においては、「〇〇施策を行ううえで必要なデータを得るために△△分析をした」という経験を伝えることで、数字を論理的に構築した実績のアピールを目指しています。そこに至るまでのどのような背景があったのかについても記載があると更に良いでしょう。
マーケティング職のアピールポイントの一例は、ビジネス全般について関与している点が大きいのではないでしょうか。上流から下流のところまで全体をみていたことで、どのような上流の施策が下流まで刺さるのかを判断でき、その企業に適した戦略を組み立てることができるところがマーケティング職の特徴です。
また、ビジネス全般を通して、論理的に課題点を発見したこともアピールポイントになります。そのため、この経歴書を戦略コンサルティングファームへの転職という観点で比較すると、マーケティング部第1チーム配属のエピソードがマーケティング部第2チームの時よりアピールする力が強いでしょう。
経営企画職
経営企画では、策定物についてどのように関わったのかを明記することが、リーダーシップやソフトスキルについてのアピールより大切です。また、経営企画での策定物は、企業のHPで公開されているものを確認することができる場合、職務経歴書に記載することはしません。そこに分量を割くことで、情報過多になってしまうためです。
経営企画のアピールポイントは、全社を俯瞰しながら会社の長期的方向性を定めることができる力でしょう。また、中期経営計画などの策定の前に、ミクロの視点で会社の課題を解決することも付随して記載できると良いでしょう。
【職歴】
〇〇年△月― 現在 □□株式会社
【主要業務詳細】
・経営戦略本部 経営企画室 (〇〇年△月― 現在)
概要・成果 □□グループを統括する経営企画として、□□ホールディングスや中核子会社の◇◇株式会社をはじめとしたグループ各社の経営管理体制構築、中期経営計画策定、予算策定・管理、 その他各種アドホック分析に従事。
【主要業務成果】
・◇◇社管理会計制度変更にあたっての新モデルの設計・実装
(役割) ××
(内容) ◇◇社における組織起因による管理上の問題の解消を目的として、管理会計制度 設計から各関係部署との連携、そして当制度での損益管理を具現化するためのモデリングを一貫して担当。
(成果) 上記組織起因で生じていた問題の解消、及び管理会計実績の確定から予実分析完了までの日数を X 営業日から Y 営業日まで短縮。
※この職務経歴書の場合、概要の部分で中期経営計画の策定に携わったことを記載しているだけでなく、実際に主要業務成果の部分において、具体的にどのような改善施策を打ったのかが伝わる点が重要なポイントです。
経営企画でアピールできるソフトスキルは、全社的に物事を捉えることができる力があげられます。それに加えて監査の知識から生まれる視点や複数の職種を経験したことで生まれる違った視点など別の視点を持っていることがアピールできれば、それもまた他者との差別化に繋がることができます。
財務職
財務職の場合の職務経歴は、決算の作成などの事務作業が多くなる傾向にあります。
そのため、自分で課題を見つけ、それをどのように解決する方向に持っていったのかを書くことが必要になってきます。
≪職務要約≫
新卒で〇〇ホールディングスに入社後、本社財務部に配属された。配属後2年目のタイミングで、会計システムの不備に気づき、会計システムの再構築を提案した。そこで、プロジェクトリーダーとして決算業務と並行してチームを牽引し、半年でのシステム再構築に貢献した。≪職務経歴≫
◆〇〇年〇月~〇〇年〇月 〇〇ホールディングス(在籍期間:〇年〇ヶ月)
[事業内容] 〇〇事業、〇〇事業、〇事業 など
[売上高] 〇〇億円(2013年度)
[資本金] 〇〇万円 (2014年3月末時点)
[従業員数] 連結:〇〇名(単体:〇〇名) (2014年3月末時点)
[配属先]
本社財務部 経理課 配属
[担当業務]
年度決算の資料作成並びに、会計システムの再構築
[担当実績]
会計システムを半年での再構築にリーダーとして貢献。
既存の会計システムにおいて、〇〇の計上に関して課題が解決できない状況が続いた。そのため、××で会計システムの再構築を提案が承認されたのちに、決算資料作成と並行しながら、プロジェクトリーダーを務めた。
※上の職務経歴書の例では、「会計システム再構築」の部分で、どのようにして会計システムを導入したのか、なぜそこに課題点を感じたのかというところを具体的に記入するようにしています。
また、戦略コンサルタントとして求められる能力として、特定の職種での知識や論理的思考はもちろんですが、課題を抽出する力も必要です。
そのため、財務諸表や多くの数値の中から、課題点を見つけ、企業の中でどのような課題提案を行ったのかをアピールすることで、これらの必要とされる能力をアピールすることができます。
情報不足によるミスマッチを防ぐ。エージェントなしでの戦略コンサルへの転職は困難
ここまで、事業会社の職務経験をどのように職務経歴書に記載すればいいか、例を用いながら解説していきました。
転職を目指す戦略コンサルティングファームを意識して職務履歴書を作成し面接を受けることはもちろん大切ですが、転職エージェントを利用することで、より転職の成功率をあげることができます。
私たちは、戦略コンサルティングファームと繋がりが強く、丁寧にサポートをしてくれるエージェントをお勧めします。しかし、上記の条件に当てはまる転職エージェントがわからない方は多いのではないでしょうか。
Liigaでは、さまざまな業種への転職が可能な転職エージェントを探すことができます。
コンサルファームへの転職の成功事例を持っているだけでなく、転職業界のトレンドをしっかり把握している会社であることがお勧めのポイントです。
おわりに
いかがでしたか。
今回は、事業会社から戦略コンサルティングファームへの転職する際の職務経歴書の設計方法について解説していきました。
冒頭でも述べた通り、事業会社から戦略コンサルティングファームへの転職事例は増えています。この記事を職務経歴書を書く際の参考にしていただき、戦略コンサルティングファームへの転職の成功につなげてください。