巷では「デザインコンサルティングファーム」という言葉を耳にすることも多くなりましたが、この言葉について皆さんはどの程度ご存じでしょうか。
本稿では、デザインコンサルティングファームの意味やサービス内容、将来性などについて解説します。この記事を読めば、デザインコンサルティングファームの基本的知識が身につくでしょう。
初心者でも理解できるよう分かりやすく解説しているので、ぜひ目を通してみてください。
デザインコンサルティングファームとは何か
まず、デザインコンサルティングファームの定義を理解することから始めましょう。ここでは、デザインコンサルティングファームの登場した経緯や注目度が高まっている理由についても言及します。
(1)クライアントから相談を受け、デザインを軸に助言・指導する企業
従来のコンサルティングファームにデザインの要素を取り入れたものが、デザインコンサルティングファームです。
つまり、従来のコンサルティングファームとクライアントから受ける相談の内容に大きな違いはありませんが、デザインコンサルティングファームでは現状分析から課題抽出、戦略立案、実行支援に至るまで全てのフェーズにおいてデザイン思考が中心に据えられます。
(2)デザインコンサルティングファームが登場した背景
従来のビジネス界では何事もロジカルシンキングで解決するという考え方が主流でしたが、先述のように複雑化した現代社会では、難解な情報を簡潔に分かりやすく伝える方法が求められています。例えば、活字だけの書類に絵や写真、動画コンテンツなどを挿入することで視認性を向上するといった方法です。
そうしたニーズに応えるべく、デザインコンサルティングファームは登場しました。従来のコンサルティングにデザイン思考を融合させることで、直感的な情報伝達と瞬時の情報拡散を実現したのです。
(3)デザインコンサルティングファームはなぜ注目されているのか
現在、デザインコンサルティングファームは重要なワードの一つとなっているのですが、それは時代のニーズにマッチしているからです。膨大な情報をスピーディーに処理する能力が問われている昨今、活字にすれば長文となってしまう情報も第一印象だけで伝達できるデザインの価値が再認識されつつあります。
同ファームでコンサルティングの対象とするデザインの種類
デザインコンサルティングファームでは、実際にどのようなデザインを手がけているのでしょうか。この項では、4つの代表的なデザイン業務をご紹介します。
(1)UI・UXデザイン
最近では、デジタルトランスフォーメーションやマーケティングオートメーションが進展し、デジタルデバイスで情報をやり取りする機会が多く見受けられます。そのため、携帯端末やPCのディスプレイを通して効率よく情報交換する方法が求められています。
デザインコンサルティングファームでは、視認性の良いユーザーインターフェース(UI)によって心地良いユーザー体験(UX)を提供しています。
(2)企業コミュニケーションデザイン
BtoBビジネスを行っている会社で事業を成功させるには、他社とのコミュニケーションが重要になります。企業同士のコミュニケーションでは、相手企業の社風や社員構成、業務内容、さらには将来展望に至るまで的確に把握し、アクションを起こす必要があります。
一方、BtoCビジネスでは、顧客満足度を高めるためのコミュニケーションが重要となります。最近では、従来の直接対面や電話、FAXなどから電子メールやSNSの利用にシフトする事例が増え、デバイス間コミュニケーションの重要性が高まりつつあります。
それらの企業コミュニケーションにおいても、デザインコンサルティングは利用価値の高いサービスと言えます。このサービスを利用すれば、取引先や顧客とのコミュニケーションがスムーズに、スピーディーになるでしょう。
(3)リブランディングデザイン
企業にとって自社のブランドコンセプトを確立することは、取引先や顧客との信頼関係を構築する上で重要です。
ただし、どれほど明確なコンセプトであっても、アップデートを怠れば時代の流れに取り残されてしまうでしょう。特に、変化の目まぐるしい現代社会では、常に新しい情報をキャッチするためのアンテナを張り巡らせ、臨機応変にアップデートし続ける必要性が生じています。
リブランディングを実施するにあたっては企業や事業、商品のロゴマークやキャッチフレーズなどをリニューアルすることもあるでしょう。そういった場面でも、デザインコンサルティングファームは心強い味方となってくれるはずです。
(4)情報構築デザイン
現在では膨大な情報が溢れ返り、その取捨選択が重要になっています。
そのような状況の中で企業が他社との競争に勝ち残るには、機能的に同一・類似でもデザイン性に優れた情報を構築・提供することが大切になります。具体的には、情報の正確性を保ちつつ、提供する媒体に応じたデザインにカスタマイズする必要があります。
情報構築(インフォメーションアーキテクト)デザインは、デザインコンサルティングファームが手掛けるサービスの一つです。
デザインコンサルティングファームの業界事情に詳しくなろう
ここでは、デザインコンサルティングファームの業界事情や将来展望について述べます。これからデザインコンサルティング業界への転職などを考えている方は、ぜひチェックしてみてください。
(1)デザインコンサルティングファームの将来展望
昨今の複雑化した社会の中で、旧来のコンサルティングでは難解に、厳格になり過ぎる問題も、デザインの自由奔放さを取り入れることによりバランスが保持できます。
情報化の流れは今後も進展していくと予想されるため、デザインコンサルティングファームの将来展望も明るいと言えるでしょう。
(2)業界にイノベーションを起こすためには
前項でも述べましたが、デザインコンサルティングを成功させるには、ビジネス思考とデザイン思考のバランスが重要になります。
ビジネス思考に偏り過ぎると、理にかなっているコンテンツでもとっつきにくく、ユーザーの目にとまらないでしょう。一方、デザイン思考に偏り過ぎた場合、第一印象は良くなるのでクリック率の向上などは期待できるものの、顧客が内容を読み込むほどに「期待外れ」と感じ、離れてしまうでしょう。
したがって、業界内でイノベーションを起こしたいと考えるのであれば、ビジネス思考とデザイン思考を上手く融合させる必要があります。例えば、ビジネス部門の人材とデザイン部門の人材でそれぞれチームを編成し、協業するというのも一つの方法です。
まとめ
現代では、複雑に入り組んだ情報化社会の中で、難解な資料や分かりにくいコンテンツが溢れ返っています。 それらは論理的に正しく記載されたものであっても、読み手にとっては「とっつきにくい」「読む気がしない」という問題を抱えています。字がびっしりと書き込まれただけの書類を見ると多くの人は幻滅し、内容を読むことはないでしょう。
そして、ビジネスシーンであれば、自社の魅力を伝える前にクライアントや顧客が離れてしまうということが起こり得ます。
一方、かねてからデジタル化の波が押し寄せ、デジタルマーケティングの重要性が高まりつつありました。
しかし、ビジネス思考のみ、あるいはデザイン思考のみの取り組みではそれぞれの限界があり、デジタルコンテンツを顧客に提供し、購入や契約の意思決定をしてもらう方法が課題となっていました。
こちらの問題を解決するためにビジネスとデザインを融合させ、デザインコンサルティングが登場したのです。