企業を経営する人であれば、「カスタマーサクセス」という言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。カスタマーサクセスは職務・業務の一種ですが、市場動向や消費者のライフスタイルの変化に伴い、注目度が高まってきています。
ただ、営業やカスタマーサポートなどとどのように違うのか、疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
この記事では、カスタマーサクセスの業務内容や類似業務との違い、効果的な仕事の進め方などを紹介します。これを読めば、カスタマーサクセスの仕事について理解が深まり、就職やキャリア形成にも役立つことでしょう。
これからカスタマーサクセスの仕事に取り組みたいと考えている人は、ぜひチェックしてみてください。
カスタマーサクセスと営業の違いを理解するために
営業やカスタマーサポートはカスタマーサクセスが登場する前からありましたが、それぞれの業務にはどのような共通点・相違点があるのでしょうか。このセクションでは、カスタマーサポートと類似業務を比較・検討します。
(1)カスタマーサクセスが登場した背景
近年、消費者の興味・関心は従来の売り切り型サービスからサブスクリプション型サービスへと転換する傾向にあります。
売り切り型サービスでは、販売契約を獲得した時点で大きな利益が発生するため、販売後に利益拡大を目的として顧客に働きかける必要性は少なくなります。
その一方でサブスクリプション型サービスは、顧客が商品を購入するのではなく、定額料金を支払ってレンタルするものです。
顧客にとっては、初期費用が安上がりで契約やサービス変更のハードルが低いというメリットがあります。しかしながら企業の立場からすれば、長期間利用してもらわないと大した利益が上がらないという問題が生じてきます。
そこで、解約率を低下させるためにカスタマーサクセスが登場したという訳です。
(2)カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサポートはカスタマーサクセスと似通った響きの言葉ですが、存在意義や仕事内容には違いがあるので、注意しましょう。
両者はいずれも、既存顧客に対してサービスを提供するという点では共通しています。
しかし、カスタマーサポートは顧客からの問い合わせやクレームを受けてから対応するのに対し、カスタマーサクセスは何らかの問題が発生していない状況でも顧客に対して能動的に働きかけるという違いがあります。
(3)カスタマーサクセスと営業の違い
それでは従来の営業とカスタマーサクセスを比べてみると、どうでしょうか。
カスタマーサポートとは違い、営業もカスタマーサクセスも能動的に働きかけるという点で共通しています。
しかし、働きかけの対象は、カスタマーサクセス・カスタマーサポートは既存顧客であるのに対し、営業は潜在顧客であるという違いがあります。
カスタマーサクセスと営業の具体的な違いについて
先に述べたように、カスタマーサクセスと営業ではターゲットとする顧客層が異なります。そのため、両者の活動目標も必然的に変わってきます。
また、カスタマーサクセスと営業は登場した時代背景が異なるため、仕事に対する取り組み方にも違いが見られます。
(1)ターゲット顧客層と活動の目標
まず、営業は見込み客に対して働きかけ、新規顧客獲得を目的としてアプローチします。飽くまでも契約を取りつけることが目的であり、契約後のフォローは基本的に行いません。
そのため、営業活動が成功すると契約数が増加するというメリットがあります。ただし、目標達成のために無理に契約すると契約後にミスマッチが発覚し、クレームや早期解約者が発生するリスクも生じてきます。
一方、カスタマーサクセスは既存顧客と長期的に付き合い、成功体験を積んでもらうために活動します。
(2)活動プロセスの定型化と個人の力量
まず、営業はより古い時代から存在することから、顧客との直接対面によるコミュニケーションを重視し、アナログツールや担当者の個人的力量に頼りがちになります。一方、比較的新しく登場したカスタマーサポートは、IT化やDXの影響を強く受け、積極的にデジタルデータを活用する傾向にあります。
(3)蓄積されたデータの活用
前項でも述べたように、カスタマーサクセスはデジタルデータの活用に積極的である場合が多くなります。
例えば、過去のデータを分析することで、確率・統計の観点から解約者数の増減とその要因が割り出せます。そのデータを活用すれば、解約を未然に防ぐために解約の兆候が表れた時点でアクションを起こすことが可能です。
また、蓄積されたデータは現場の担当者全員が共有できるため、個人の力量による成果の違いが生じにくくなります。
カスタマーサクセスと営業の違いをビジネスに有効活用する方法
カスタマーサクセスと営業にはそれぞれ長所・短所があるため、一概にどちらが良いと言い切れるわけではありません。また、ターゲット顧客層や活動目標も異なるため、それぞれ独立した職種として取り扱い、両者をうまく連携させることが得策と言えます。
(1)まずは両者の関係性を理解することが大切
営業は潜在顧客、カスタマーサクセスは既存顧客を対象に活動するため、顧客と接点を持つ順序は営業の方が先になります。
とは言うものの、行き当たりばったりで営業をかけるよりも、カスタマーサクセスからの情報提供を受けてから活動する方が効果的と言えるでしょう。また、カスタマーサクセスも営業からの情報を取得することで、解約の防止に向けた対策を講じやすくなります。
(2)両者の特徴を活かして連携・協力するのが理想的
従来の営業は契約数を増やすことだけに気を取られがちですが、それではたとえノルマを達成しても、企業利益につながらないばかりか逆に不利益となる可能性もあります。先述のように、無理な契約はクレーム・解約が増加する原因になります。
また、昨今ではインターネットやSNSの普及により、口コミなどの情報が瞬時に拡散する状況にあります。無理に契約させられた顧客から悪い口コミが投稿されると、それが一瞬で市場に広まり、自社に悪影響を及ぼす可能性が生じてきます。
一方、カスタマーサクセスも既存顧客ばかりを相手にしていると、どうしても対応が遅れがちになります。
そういった問題を解決するには、営業とカスタマーサクセスが連絡を取り合い、力を合わせて仕事に取り組むことが大切です。
(3)営業からカスタマーサクセスにキャリアチェンジする場合は
営業からカスタマーサクセスに転職する場合、生かせるものと新たに必要となるものがあります。
まず、自社のサービスに関する知識やコミュニケーションスキルは、転職後も活用できます。一方、顧客への課題抽出や提案、指導といったスキルは新たに身につける必要があります。
まとめ
カスタマーサクセスは比較的新しく登場しましたが、その大きな要因として市場動向や消費者のライフスタイルの変化が挙げられます。
製造技術の進歩や機械化・自動化により製品の大量生産が可能となった現在、市場には類似商品が大量に出回っています。また、かつての物資が不足していた時代とは違い、経済的に豊かになった現代では、「買う」ことよりも「借りる」「シェアする」「体験する」ことに価値を見出す消費者が増えてきています。
これからカスタマーサクセスの果たす役割はますます拡大していくと思われるため、本記事を参考に就職活動などを始めてみてはいかがでしょうか。