ボストンを流れるチャールズ川。ボートを漕ぐ学生達や、散歩をする夫婦やカップルの長閑な風景が部屋の窓から見える。それとは対照的だった私の怒涛の1年間を振り返りながら、残す1年間のあいだに何回かの連載をさせていただこうと思います。知名度こそあるハーバード・ビジネス・スクール(以下、HBS)、しかしその実態はなかなか知られていないのではないでしょうか。今回頂きました機会をお借りして、実体験を基に学校のこと、学生のこと、キャリアのこと、などなど私なりの目線と言葉でお伝えしていければと筆を執った次第です。どうぞお付き合いください。
インドでMBA受験。停電・ノーエアコンで獲得した、グローバルプロフェッショナルへの切符
10年ほど前、私はクリエーティブな仕事に関心があり広告代理店へ新卒で入社しました。そして社会人5年目のある時 、本当にやりたかったことはなにかを自分自身に問い直す機会を得ます。たどり着いたのは、ビジネスで世界を舞台に「ソーシャルインパクトのために闘っていきたい」という強い思いであり覚悟でした。広告やコミュニケーションの枠を越えビジネス全般の「体系的知識と実力」をつけたいと考えた私は、MBA留学を決意します。
固い決意を胸に受験勉強をはじめて数か月後、インド赴任の話が舞い込みます。インドは21世紀において、絶対に無視できない大国であり、今後世界経済やビジネスの中心となっていく国であろう、という認識のもと、インドに行ってからもMBA留学受験は続けることを誓いつつ、転勤を受け入れました。インドでは多くの素晴らしいインド人や日本人の友人との出会いが待っていました。
今でこそ「インドに行ってよかった」と思えますが、正直インドでのMBA受験には苦しめられました。例えばGMAT試験途中の停電、そしてクーラーがないTOEFL会場。日本での受験では、カウンセラーや塾を通じて周りに鼓舞し合える受験仲間がいることが支えにもなるようですが、私の場合はかなり孤独な闘いでした。幸い、結果的には3校から合格の通知を受け取り、悩んだ末にHBSを選びました。
迷っていた時、各校の在校生や卒業生何人かに話を聞きました。HBS在校生や卒業生の感想はいずれも、「世界で一番キツいかもしれない。でも、入って後悔はしない」など、強烈な体験を期待させるものばかりでした。そして、卒業後も「HBS MBAという肩書」や「現在の自分」に満足せず常にチャレンジし成長し続けている彼らの姿が印象的だったことから、「自分もそうなりたい」と思い決断を下しました。
HBSの図書館「Baker Library」(筆者提供画像)
スマホ・PCは一切禁止?!自らの思考体力の限界に挑み続けるケースメソッド
HBSは、ボストンにあるハーバード大学附属のビジネススクールです。1908年に世界初のMBAプログラムとして設立されました。1学年の人数は、たとえば私の所属するClass of 2020で930人。2年制のため、計1800人以上がハーバード大学の学部キャンパスとチャールズ川を隔てたHBS専用キャンパスで学んでいます。
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