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1979年にフランスで生まれ、1999年に日本オフィスをオープンしたコンサルティングファーム、Mars&Co(以下、Mars)。国内での知名度は高くないかもしれないが、Marsの採用する「1業種1社制」はクライアント企業からの確固たる信頼を生み出している。
Marsは、グローバルレベルでクライアントに対して専属性を約束する唯一のコンサルティングファームだ。その特殊な文化から生み出される信頼と知見には、計り知れない価値がある。Marsに約20年在籍する山中和彦氏に、独自性の高いソリューションを生み出し続ける会社の仕組みについて話を聞いた。
※内容や肩書は2022年4月の記事公開当時のものです。
ブレない理念が、他のファームではあり得ないほどの深い信頼につながっている
――山中さんは、Marsに約20年前に入社されています。なぜMarsを選ばれたのでしょうか?
山中:きっかけは、大学時代に経営システム工学を学んでいたことです。大学院まで進み、工場設立のノウハウやロジスティクスの最適化などを研究していました。就職活動時は生産オペレーションを支援しているコンサルティング企業を中心に情報収集をおこなっていたのですが、たまたま目についたMarsに非常に興味をそそられまして。戦略ファームはメインターゲットではなかったものの、ここで挑戦したいという思いが強くなり、入社することを決めました。
とはいえ最初はそんなに深く考えていたわけではなく、「1業種1社制は面白そうだな」というぐらいの印象でした。話を聞きに行ったらオファーをもらったので、興味半分で入社したというのが正直なところです(笑)。
――“興味半分”とはいえ、そこから20年の年月をMarsで過ごされていますよね。
山中:そうですね。Marsを選んだことは正解だったと思います。当社は、顧客の経営層とだけ話をして戦略を描いて終わりというスタイルではありません。現場の方々に寄り添って、深く話を伺いながら、泥くさい分析を通してソリューションを探す文化があります。就活時には他の有名な戦略コンサルティングファームも受けていましたが、Marsは考え方も視点もまったく違うなという印象でした。
――Marsの特徴や文化について詳しく伺いたいのですが、まず大きな特徴の一つとして1業種1社制が挙げられるかと思います。一般的なコンサルファームでは、同じ業界内の複数企業と仕事をすることでナレッジを効率的に蓄積していますが、Marsではなぜこのような体制になっているのでしょうか。
山中:1業種1社制は、クライアントとの信頼を大切にするための体制です。たとえば、A社との取り組みの中で獲得した技術や知見を同業のB社やC社に展開したとします。Marsとしてはそれで売り上げが上がるかもしれませんが、A社からすると「なぜうちが先行投資したプラクティスを競合に横展開するんだ」と考えるのは自然なことですよね。そういった信頼関係において最も基本的な部分を大切にするために1業種1社制を採用しています。
ただ、クライアントの競合となる企業とは絶対に取引をしないことがルールなので、Mars自体は常に背水の陣です。クオリティーの低いアウトプットを出して、もしクライアントからNGを出されればその時点で終わってしまう。その企業だけではなく業界そのものとの取引が消えるので、単純にうちのマーケットが縮小することになります。
――A社との契約がどこかで途切れた場合でも、その業界の別の企業と取引はしないということですか?契約終了後であれば、他の企業と契約してもMarsがとがめられることはないと思うのですが。
山中:もちろん法的な拘束力などはないですが、それでも私たちはやりません。Marsは1979年に当時ボストン コンサルティング グループ(BCG)のディレクターを務めていたドミニク・マースが作った会社なのですが、彼は業界内のプラクティスを安易に横展開することに強い課題意識を持っていました。「クライアントに対して専属的なサービスを保証すべきだ」と。その思いをベースに設立された企業なので、決してブレることはありません。
機密情報ではなくとも、クライアントとともに得たナレッジや情報をその競合や同業者に持ち出すことは絶対にない。そうした信頼関係があるからこそ、長く取引が続いているのだと思います。入社当時にプロジェクトの窓口を担当されていた方が、今ではその企業内でかなり上のポジションに就いていたり、お互いの仕事の進め方を熟知していたりするので、コミュニケーションも円滑に進むことが多いですね。
――各業界の知見に関してはいかがでしょうか。どのようにしてナレッジをためているのですか?
山中:クライアントの競合となる企業のことは、驚くほど深く掘り下げて分析しています。お客さまにも分析結果を共有し、“クライアント視点”と“Marsの客観的な視点”の2軸から、業界がどう動いているのか、これからどういった流れが生まれるのかを検討しています。
それと、強い信頼関係を築くことができれば、クライアントから出てくる情報にも深みが出てくるんですね。「これはあまり外には出せないんだけど」というような、かなり踏み込んだ内容を基にディスカッションすることも少なくありません。結果として、業界内で複数社と取引しているファーム以上に、貴重なナレッジが蓄積される環境になっていると思います。
――今は業界ごとの壁が低くなっています。今までのインダストリー軸ではセグメントしきれない部分もあるかと思いますが、そういった状況でクライアント同士がぶつかることはないのでしょうか。
山中:それはありますし、その場合は率直にお伝えするようにしています。「この領域の新規事業は、Marsの別のクライアントとぶつかってしまうので、そこはサポートできません」と。これは個人的な感覚ですが、むしろそうやって正直にお断りすることで、信頼関係は高まっていると感じますね。
緻密な数値分析力と、ユニークなひらめきの両輪がMarsの強み
――1業種1社制以外の御社の強みや特徴についても教えてください。
山中:数字まわりの分析力は強いですね。人口や経済の統計データを持ってきて、大きな方向性や傾向を判断するのはそこまで難しいことではありません。ただ、そこからさらに細かく進むべき道を決めるためには、そうとう緻密な分析力が必要になります。東西南北どの方向にかじを切るべきかは分かっても、「北北西の何度に行くか」といった解像度で、さらに「どうやって行くか」というHowを加えるといきなり難しくなるイメージです。
我々は常に数字を見ながら、ファクトベースで分析を進めていきます。そしてそのためには、現場の方々とのコミュニケーションが必要不可欠なんですね。現場に立っている方の中には、何十年とその業務に従事されていて、我々の何倍も“現場”に詳しい方もいらっしゃいます。そういった方々が納得できる提案を作るためにも、現実感かつ緻密性のある分析をおこなっているということです。
――これだけ未来が読めない不確実な時代において、数値を厳密に見極めるのは難しいのではないかと思いますが、山中さんはどう考えていらっしゃいますか?
山中:それはどのレイヤーの数値かによって変わります。最上流の経営目標のような数字を小数点以下のレベルまで計算するのは無理ですし、そこまで求める必要もないでしょう。ただ、ボトムレベルの数値をかなり細かく組み上げることで、上の振れ幅を極限まで小さくすることは可能です。やはり現場に寄り添ってファクトを見つめることが重要ですね。
また、おっしゃる通りいろんなことが変化しやすい時代ですから、それぞれの数字を見直すべき頻度は上がっています。「前回はAという数字が出ていたけど、今回はBという数字が導き出された」という確認を5年ごとにやっていては意味がありません。現在は、数カ月から1~2年というタームで全体を見直すようにしています。
ただそうなると、毎回私たちが介入していてはクライアント側のコストが上がってしまう。そこで、お客さま自身である程度の分析ができるような体制づくりを支援するケースも増えています。
――お話を伺っていると、クライアントに対しての誠実な姿勢が伝わってきます。やはり、創業時に生まれた理念が受け継がれているのですね。
山中:もう一点Marsの文化で補足すると、当社は小さなファームなので良くも悪くも定まった型がありません。大きなファームだと「このインダストリーにはこのメンバーをアサインして、こういったソリューションで……」と、組織としての動き方が最適化されていると思います。ですが、1業種1社制でそういった体制を取ると、コンサルタントの動く領域が極端に狭まってしまうわけです。
当社にもさまざまなスキルを持ったプロフェッショナルが在籍していますが、業界に閉じた“専門家”は存在しません。幅広い業界を飛び回って、いろいろな課題に対峙(たいじ)することで、より深い知見を得ることができる環境です。先ほどのお話にもあった通り近年は業界の垣根も低くなっていますし、多面的な視野を持つコンサルタントが今まで以上に価値を発揮しやすい時代になってきましたね。
それにその方が、偏った領域だけを掘り下げていくよりもひらめきが生まれやすいんですよ。「直接的に関わる内容じゃないけれど、あのときのソリューションが応用できるかも」というように。Marsの提案がユニークだといわれるのは、こうしたカルチャーも影響しているのだと思います。
未経験者を積極採用する理由は、「コンサルティングのスタイルが他社とはまったく違う」から
――多くのファームはコンサルティング経験者を採用しようとしますが、御社は未経験者の採用に積極的だとお聞きしました。それはどういった理由なのでしょうか?
山中:我々の提案は、非常に細かい分析をしながらかなり作りこんでいきます。クライアントからは、「Marsさんの作った資料は見た瞬間にそうだと分かる」とよく言われますね。つまり、他のコンサルティングファームとは根本的にアプローチが違う。だから我々はコンサルティング経験の有無にはこだわっていないのです。
むしろ、他のファームのやり方に慣れていると一度ベースをMars仕様にアップデートしてもらう必要があるので、未経験者より時間がかかることもあるでしょう。未経験者の採用は非効率だという見方もあると思いますが、長い目で見ればその方が全体の質は上がると考えています。
もちろんコンサルティング経験者を採用しないというわけではありません。熱意があって優秀な方であればどなたでも大歓迎です。特に、前職の方法論に強くこだわりすぎることなく、Marsのアプローチに前職のやり方をブレンドして発展させてくれる人を求めています。
――他に求めるスキルや経験はありますか?
山中:さまざまなバックグラウンドを持った方々に来てほしいと思っていますが、ベースとしては数字をしっかり扱えることと、論理的にどうなってるかを考えられることが重要です。さらに欲を言えば「ビジネスってどう動いてるんだろう」「こういうトレンドが起きている中でどんなビジネスが生まれるかな」と、ビジネスの構造や分析に常にアンテナを張って、興味を向けられる人がいいですね。
ハードスキルでいうとMarsでのコミュニケーションはベースが英語なので、英語に強い苦手意識のある方は最初は大変かもしれません。ただ私を含めて今いるシニアメンバーも最初からペラペラだったわけではないですし「英語は話せなくても別にいいよ」と言われて入社した人がほとんどです。
普通に上司が外国人であったりするので、必然的に英語で会話する機会が増えていきます。私もそういう環境で少しずつ話せるようになったクチですし、「英語がしゃべれないからダメ」ということではありません。
――コミュニケーションはすべて英語でおこなわれるのですね。
山中:東京オフィスにいる日本人同士なら日本語で話していますが、メンバーが多国籍なので、英語を使うケースが多いです。Marsはグローバルでワンオフィスというコンセプトを持っていて、パリ本社、ロンドンやニューヨーク、上海、シンガポールとそれぞれにコンサルタントが所属する形ではありますが、境界線はほとんどありません。
プロジェクトベースで、各国・地域からのメンバーでチームを組んで進めていきます。海外メンバーとのつながりは国や地域、オフィスを超えてプロジェクトを通して作られるので、「この内容ならサンフランシスコのあの人が得意だからチームに入ってもらおう」とすぐにイメージできるレベルです。世界中のナレッジを集約できることも、Marsの強みの一つですね。
――ありがとうございます。最後に、これからのキャリアを検討している読者の方にメッセージをお願いします。
山中:おそらく転職を考えている方は、現状に物足りなさを感じていたり、変化を起こしたいけれど起こせないという葛藤の中にいたりすると思います。Marsは小さな規模感だからこそ機動力が高いですし、新たなことにもどんどん挑戦していくスタイルです。もしもあなたがご自分の持つエネルギーをうまく発揮できていない状況にいるのなら、きっとここで、思いを爆発させることができるでしょう。興味を持っていただけたら、ぜひ一度お話しさせてください。