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「ジョブ型」雇用と「メンバーシップ型」雇用―。雇用の類型を示すこれらの用語、報道などで取り上げられることも増えたため、聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。ある種バズワードになり誤解も多いだけに、面接などで話題に上がる時事ネタの一つとして、正しい意味を知っておきたいところです。
そしてこれらは、皆さんの就職先選びや中長期のキャリア形成と、深く関わるワードでもあります。日本企業の雇用がメンバーシップ型からジョブ型へ移るといわれる中、どう現状を見定め、変化に応じればいいか……。
この記事ではそのヒントになるよう、外資就活ドットコムで人気なコンサルティングファームや総合商社がどちらの雇用形態なのかにも触れつつ、ジョブ型とメンバーシップ型の違いを紹介します。【藤崎竜介】
◇企業の新卒採用を対象にした学生向けサービス「外資就活ドットコム」からの転載です(転載元はこちら)。
続いて、ジョブ型とメンバーシップ型の具体的な違いについてです。濱口桂一郎さんは同書で、ジョブ型についてこう記しています。
◆「新しい労働社会――雇用システムの再構築へ」序章より そして以下が、日系大企業の大半が採るメンバーシップ型についてです。例えば旋盤を操作するとか、会計帳簿をつけるとか、自動車を販売するといったことについては、雇用契約でその内容を明確に定めて、その範囲内の労働についてのみ労働者は義務を負うし、使用者は権利を持つというのが、世界的に通常の考え方です。
◆「新しい労働社会――雇用システムの再構築へ」序章より 同書ではさまざまな角度から日本と他国の雇用のあり方を論じており、上の引用だけを読んでジョブ型とメンバーシップ型の違いを完全に把握するのは、難しいかもしれません。 よって以下ではまず、皆さんの関心事である採用、特に新卒採用の話に絞って両者の違いを解説します。日本型雇用システムでは、その企業の中の労働を職務ごとに切り出さずに、一括して雇用契約の目的にするのです。労働者は企業の中のすべての労働に従事する義務がありますし、使用者はそれを要求する権利を持ちます。
では、人気1位のアクセンチュアから見てみましょう。参照するのは、同社の新卒採用ページです。
同ページを訪れると、2023年卒の募集ポジションとして、ビジネスコンサルタント、ソリューション・エンジニア、データサイエンティストなどさまざまな職種名が目に飛び込んできます(同日時点)。同社への応募経験者によると、志望者はエントリー段階で望む職種を申し出て、その職種用の選考を受けるようです。
ここではあくまで新卒採用に限った話ですが、総合職・一般職といった大きな枠で一括採用する多くの日系大手とは異なり、ジョブ型に近い形態といえます。外資系企業の同社にとっては、自然なことでしょう。
では、2位のマッキンゼー・アンド・カンパニーはどうでしょうか。
中途向けを含む募集ポジションのページには、ビジネスアナリスト、アクセラレートコンサルタントなど職種や部門の名がいくつか載っています(同)。他方、新卒に特化したページを見ると、候補者は原則ビジネスアナリストとして採用するといった意の記載があるのに気づくのではないでしょうか。つまり新卒については、基本的に1つの枠で採用しているようです。
同じ外資系コンサルティングファームでも、新卒採用から職種をはっきり分けて進めるアクセンチュアとは、一線を画す方針にみえます。
既に述べたように外資系企業の日本法人は総じて、ジョブ型の思想が根底にあります。ただ各社なりに、日本事業の実情、日本の採用市場や就労慣習などに合わせて雇用制度を最適化(≒日本化)しており、その度合いの差が2社の違いのような形で表れているのではないでしょうか。
先に記した人気の順で上のコンサル2社に続くのが、伊藤忠商事と三菱商事です。
応募対象をみると、三菱商事は総合職、一般職、海外採用の3コース(同)。一方、伊藤忠商事は総合職と事務職の2コースがあります(同)。海外採用は例外的なルートで、また伊藤忠の事務職は世にいう一般職にあたるため、両社への“入り口”は似ているといえます。
そして応募経験者の話によると、2社とも内定までの過程で総合職・一般職より細かい職種分類がなされることはなく、職種(≒配属先)が決まるのは内定後になるようです。
少なくとも新卒採用については、典型的な日系大手のメンバーシップ型だといえそうです。
人気5位のNRIもみてみましょう。
総合職志望者の応募対象として、経営コンサルタント、アプリケーションエンジニア、テクニカルエンジニアなど5職種が記されており(同)、選考はそれらの職種ごとに進むようです。上の商社2社と比べると、具体的な職務内容を重視したジョブ型に近い新卒採用といえます。
他方、初任給は職種を越えて一律的に示す(*1)など、メンバーシップ型らしい側面も垣間見えます。
*1 博士了、修士了、大学卒の違いはあり
ところで、メンバーシップ型からジョブ型に転換すると企業は従業員を簡単に解雇できるようになると報じられることもありますが、それは必ずしも正確ではありません。日本を含む多くの国で解雇の規制があり、一方的に雇用契約を解除することは制限されているからです。
ほぼ唯一の例外が、法制度面で比較的解雇に寛容な米国です(参考記事→Liiga連載「解雇からのV字回復」)。
◆各社のプレスリリースより(リンクは以下の通り)
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2020/03/0330c.html(日立製作所)
https://pr.fujitsu.com/jp/news/2020/07/6.html(富士通)
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2020/07/31/4580.html(KDDI)
https://jpn.nec.com/press/202104/20210406_01.html(NEC)
各社がジョブ型へシフトする主因の一つが、事業の国際化です。雇用制度をグローバル標準に近づけ、優秀な海外人材らの獲得につなげようというわけです。
そして経済のグローバル化が加速する中、こうした日本企業による方針転換は、さらに進むと予想されています。
繰り返しになりますが、ジョブ型だからといって雇用システムとして優れていたり新しかったりするわけではありません。上に述べた変化を踏まえて、メンバーシップ型を採り続ける日本企業を「遅れている」と安直に切り捨てるのは、誤りでしょう。
とはいえ今後、例えば「特定領域の専門性を突き詰める」「特定の企業でさまざまな立場を経験しながらジェネラリストとして成長する」などといったキャリア構想を描く上で、ジョブ型企業orメンバーシップ型企業の選択が、より重要になることは確かです。
また外資系企業の日本法人については、日本の雇用文化の変化に応じ“ジョブ型度”を変えてくる可能性もあります。
就職活動で情報収集する際、時にはこうした観点から企業・業界を見つめるのもいいかもしれません。