心強い伴走者になってくれることが多い一方で、時に足枷にもなり得る転職エージェント。
「プロが教える転職エージェントの選び方」では、Liigaエージェントクチコミで高い評価を受け、多数の求職者から厚い支持を得ているエージェントに支援の考え方や特徴、その方自身が考える「求職者にとって良いエージェント像」などを語ってもらっています。
今回は、成長ベンチャーとスタートアップ企業の幹部候補の転職支援を専門に行っている井手裕典氏のインタビューです。
シリーズ記事一覧(押すと開きます)
- (1)プロが教える転職エージェントの選び方~ベンチャー/スタートアップ(井手裕典)
- (2)プロが教える転職エージェントの選び方~ファンド(蓮子哲也)
- (3)プロが教える転職エージェントの選び方~コンサル(栗山卓也)
- (4)プロが教える転職エージェントの選び方~コンサル/M&A(石井康裕)
- (5)プロが教える転職エージェントの選び方~経営人材(前田雄一郎)
【プロが教える転職エージェントの選び方~シリーズ記事一覧】
支援領域と転職エージェントとしてのスタンス
成長ベンチャーとスタートアップの幹部候補を軸に支援
私は成長ベンチャーとスタートアップの幹部候補特化型エージェントとして、主に以下のような方の転職支援を行っています。
- 経営ボードのメンバーになりたい
- 独立し、起業したい
- 事業を通して社会に貢献していきたい
- 自分自身のキャリアアップ/スキルアップを目指したい
幹部候補特化型と言っても、現在幹部の方だけでなく、将来経営幹部を目指す方も支援の対象です。また「成長意欲はあるけど、経営者へのキャリアパスなど、進むべき方向性が分からない」という方に対して、相談ベースからの支援も行っています。
紹介先となる企業は「事業づくりや独立・起業に必要な実力をつけられる環境」であることにこだわって揃えています。業界や規模は多様で、たとえば規模ではプライム上場企業から設立したてのベンチャー企業まであります。
自分が良いと思う「人」と「企業」をマッチング
私がエージェント業で重視しているのは、求職者に「事業オーナーの実力」を身に付けてもらうことです。
だからこそ、転職支援をするのは「独立や経営幹部を目指す方」に絞っていますし、紹介先も「求職者の成長機会を多く見込める」と確信できた企業のみです。アパレルに例えるならセレクトショップのオーナーのようなもので、自分が良いと思う「人」と「企業」をマッチングしています。
成長機会のある企業を求職者に代わって見極める
成長機会のある企業を見極めることは、簡単ではありません。
たとえば少人数で高い収益を上げ、そのまま上場に向かっている企業があるとします。企業としての成長は著しいですが、組織を拡大しなくても業績が上がる仕組みが既にできあがっているなら、新たに転職してきた人の成長機会は多くないでしょう。
このように、企業の成長度合いから個人の成長機会が判断できる訳ではありません。また求人票を細かく見ても、実際の裁量やキャリアパスなど、個人の成長機会の有無を見極めるのは困難です。
だからこそ、私は自分自身の目で企業をチェックし、求職者に企業を紹介しています。20年以上のエージェント経験の中で企業を数多く見ており、また私自身が少人数のベンチャーからメガベンチャーに成長した企業で働いていた経験もあるので、企業を見る目には自信があります。
私の転職支援の強みや特徴
20年以上のキャリアが支える業種・職種問わずの支援
現在は成長ベンチャー/スタートアップの幹部候補特化型エージェントをしていますが、私はこれまでの20年以上で、通算8,000名以上の転職支援に関わってきました。経歴も幅広く、CxOや営業、経営企画、マーケティング、コンサル、管理部門、開発エンジニアから、二ッチな職種では一級建築士、アパレルパタンナー、工場長なども支援した経験があります。
また、私はかつて社員20名規模のベンチャー企業に転職し、そこから企業が3,200名規模のメガベンチャーに成長するのを当事者として体験しました。成長フェーズにある企業でどのような人材が重宝され、活躍していくのかを目の当たりにしました。
こうした経験から、私は業種や職種を問わず、総合的・俯瞰的な視点でキャリアのアドバイスができます。
過去に支援した求職者がクライアント企業になることも
エージェントはストック型ビジネスであり、長いお付き合いが新たな採用支援やさらなる転職支援につながることも多いです。
たとえば私が過去に転職支援した方の中にも、企業の社長や役員になり、今度は「人を採用したい」と私を頼ってくれる方がいます。私自身が彼らのことをよく分かっているので転職支援の精度も上がりやすく、また採用支援を依頼する側にとっても安心感があると思います。
さらに最近で言うと、前職時代に支援をした方からホームページに「11年前にお世話になった〇〇です。井手さんにご紹介してもらった企業でCHROになっています。今度次のキャリアの相談に乗ってもらえませんか?」という連絡がありました。突然の連絡に驚きましたが、嬉しかったですね。
今後のキャリア選択を有意義にする対話
転職支援で求職者の方とお話していると、キャリアビジョンの解像度が低くて悩んでいる方が非常に多いと感じます。
私はキャリアコンサルタントの国家資格に加え、コーチングスキルも有しています。この力を活かし、面談では対話を通して求職者の価値観や今後のキャリア戦略の深掘りをしたり、気づきを与えたりすることを心がけています。
求職者の価値観を明確にし、キャリアビジョンの解像度を上げることで、より有意義なキャリア選択ができるよう支援しています。
転職に留まらないアドバイス
面談では、まず求職者の理解に努めた上で長期的なキャリア戦略を練り、その戦略を踏まえて次のキャリアを提案するようにしています。この時、求職者にとって転職が一番の手段でないと思えば、転職以外の選択肢も提案するようにしています。
たとえば最近では、話を聞いていて「転職より起業した方が良い」と思う方がいました。私の考えをそのままフィードバックしたところ、エージェントからそのような提案をされることは今までなかったようで、非常に有難がってくださいました。結果的に、その方は独立・起業を決断されました。
転職エージェント利用のメリット
テーラーメイドのキャリア支援と選考通過率上昇、負担軽減
転職エージェントを利用するメリットは、主に以下の2点だと思います。
-
キャリアについて、プロからテーラーメイド(個別対応)でサポートしてもらえる
- プロの第三者だからこそ、客観的なアドバイスがもらえる
- 自己理解の深化や新たな気づき、選択肢の拡大につながる
- 中長期的なキャリアプランについてもフィードバックをもらえる
- ポジションメイクの提案を通して企業の採用ニーズを引き出してもらえる
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選考通過率があがり、選考の負担も軽減できる
- 企業や選考の情報を確認しながら転職活動を進められる
- エージェントから企業へ働きかけてもらえる
- 選考通過させるノウハウがある
- 直接やりとりしなくて良いので、年収などの交渉がしやすい
- 面接の日程調整(スケジュール管理)
自分だけで転職活動を進めると、キャリアの棚卸しや企業選びの判断が主観的になりがちです。他方で転職相談は人に言いにくい本音など繊細な情報を含むことが多く、会社の同僚や家族に相談しにくかったり、親しいからこそ助言に私情が挟まれたりします。
その点、転職エージェントはキャリアのプロとして求職者のソフト面(価値観や性格)やハード面(経験やスキル)を客観的に把握します。また、中長期的なキャリアビジョンを見据えてアドバイスや提案を行う人も多いです。場合によっては、理想のキャリアを実現させるために候補者を企業に提案し、その方が活躍できるポジションを創出することもあります。
だからこそ、自分自身をより理解した上で選考に臨めたり、キャリアプランに合った企業を選べたりする良さがあります。
選考通過率に関しては、特に情報面での良さをお話します。企業と信頼関係が築けているエージェントは、面接終了後の企業側の温度感や倍率、採用予算による今後の選考スケジュールへの影響など、企業から多くの情報を得られます。
また、面接のダメ出しなど「企業が応募者に伝えづらい情報」もエージェントには伝わります。企業としては「自社のニーズに合った人」を紹介してもらい、選考通過率や生産性を上げたいからこそ、エージェントに詳細までフィードバックをしてくれるものです。
フィードバックがあれば自分の面接に対する評価が分かり、今後の選考に活かすこともできます。
【プラスアドバイス】情報を整理し、「一次情報」を基準に意思決定を
これは転職活動全般におけるアドバイスですが、活動中に入手した情報の精度把握・整理は非常に重要です。以下のように情報を整理した上で、できるだけ「一次情報」を意思決定の判断基準にしましょう。
- 一次情報:企業担当者の話など、自分が当事者から直接得た情報
- 二次情報:企業からエージェントが聞いた話など、間に他者が一人介在している情報
- 三次情報:「あの人がこう言っていたらしい」など、さらに他者が介在している情報
一次情報とそれ以外では、情報の精度が大きく異なります。「口コミなどを使ってはいけない」という訳ではありませんが、これらはあくまでサブの情報です。人生の大切な決断を、精度の低い情報をもとに行ったり、振り回されたりしないよう気を付けてください。
エージェントから聞いた話も「出どころ」を必ず確認しましょう。企業の担当者から直接仕入れた情報なら、信頼性は高いです。一方で、なかにはネットで得た情報を求職者に伝えていたり、企業から聞いた事実でなく、自分の主観を伝えたりしてくるエージェントもいます。
私が考える「求職者にとって良い転職エージェント」の見極め方
【大前提】見極めには求職者自身の利用目的やスタンスの明確化が必須
そもそも転職エージェントの利用目的は人それぞれであり「求人だけ紹介してもらいたい人」「中長期的にキャリア相談をしたい人」など、求職者ごとに求めるサポート・サービス、好む連絡手段や連絡時間、目標とする活動期間などが異なります。つまり「万人受けする転職エージェント」は存在せず、良い転職エージェント像は求職者ごとに異なるものです。
だからこそエージェントの見極めでは、最初に求職者自身がエージェントの利用目的とスタンスを明確にする必要があります。「何のためにエージェントを利用するのか」「どれくらいの期間を目標に、どういった形で転職活動を進めたいか」を考え、その上で自分の転職スタイルに合うエージェントを探しましょう。
利用目的やスタンスを確認するエージェントかどうか
たとえば病院なら、患者は「おなかが痛い」「頭が痛い」など、それぞれの困りごとを抱えています。これに対して、ドクターが患者の主訴を聞かずに処方箋を出すことはありません。
同じように、求職者のことを考えるエージェントは、まず求職者のエージェント利用の目的やスタンスを確認します。その上で、具体的な支援方法などを検討してくれるはずです。
反対に、求職者に利用目的やスタンスを確認しないエージェントは、エージェント自身やクライアント企業のことを優先して考えている可能性が高いです。
その他に全求職者が確認したい見極めポイント
エージェントをさらに絞り込む場合は、以下のポイントに着目すると良いでしょう。
- 誠実である
- 正確な一次情報を持っている
- 決裁者とコネクションをもっている
誠実とは、端的に言うと「求職者視点に立ってアドバイスできる」ということです。たとえば紹介企業の課題などを包み隠さず伝えられるエージェントは、誠実と言えるでしょう。
ただし、いくら誠実なエージェントでも、企業からの正確な一次情報を充分に持っていなければ介在価値が下がります。正確な一次情報の有無は選考通過率にも関わるので、企業との信頼関係が深いエージェントを選ぶのが理想的です。
特に、エージェントに人事決裁権を持つ人との接点があれば、クライアント企業から採用の相談を受けることもあるでしょう。結果として、意思決定に影響を与えられるケースも珍しくありません。
私が考える「求職者が避けるべき転職エージェント」の見極め方
強みやスタンスを明示していないエージェントは避ける
求職者にとって良いエージェントとは、先ほどもお話したように「自分のエージェント利用の目的やスタンスに合う人」です。だからこそ、エージェント選びではエージェント自身の強みとスタンスを確認する必要があります。
自身の強みやスタンスを明示していないエージェントの利用は、避けた方が良いです。
たとえば世の中には、「支援している企業をグローバルで勝たせる」という理念で動いているエージェントがいます。求職者は、このエージェントのスタンスに共感するなら利用すれば良いですし、共感しないなら他のエージェントを探せば良い訳です。
一方で、強みやスタンスを明示していないエージェントでは「自分に合うかどうか」も判断できません。結果としてミスマッチが起こる可能性もあるため、避けた方が良いでしょう。
返事が遅いエージェントは絶対に使うべきでない
返事が遅いエージェントは、個人的には絶対に利用を避けた方が良いと考えています。返事が遅い人は、概して仕事ができないからです。
反対に、優秀なベンチャー企業の社長や人事担当者様は、激務にも関わらず、基本的にレスが早いです。
私が考えるLiigaエージェントクチコミの活用ポイント
※2024年8月1日時点の井手氏エージェントクチコミページより
口コミ件数に注目
すべての口コミサイトに共通するのが「Aさんにとって良くても、Bさんにとって良いとは限らない」ということです。だからこそ、口コミ情報は鵜呑みにせず、参考程度に考えましょう。
その上で注目すると良いのは、口コミ件数です。
口コミは、多ければ多いほど信頼性が上がります。反対に、口コミ件数が少ないと信憑性に欠けてしまいます。投稿件数が少ないエージェントでは、特定の人に依頼して評価を書いてもらっているケースも考えられます。
口コミ件数が多い人、即ち求職者からのフィードバックが多い人は、それだけ信頼されているエージェントだと思います。
自分に合うエージェントか、最終確認として使う
口コミを鵜呑みにしてもいけないのですが、中身はしっかり読むことをお勧めします。「自分のスタンスに合うかどうか」「求める強みを持っているのか」を確認し、利用の判断基準にしてください。
一般に、口コミは物事を判断する入口の情報として使われがちです。しかしエージェントの見極めでは、最後の確認に使うようにしましょう。最初から口コミの情報に左右されることなく、あくまで自分の軸でエージェント探しをすることが重要です。
<Liigaエージェントクチコミの井手氏の評価>
"喜んで紹介できます。各フェーズにおいての質が高いです。担当している企業は魅力あるところが多いです。相手の話をよく聞いて、行動指針やこの先の展望を考える手助けをしてくれます。面談後のフィードバック、反省点なども一緒に考えてもらえるため関わっていく中で自分自身の成長にも繋がります。"(社会人4-6年 / 利用時期2023年)
"転職ありきではなく、とても親身になって相談に乗ってくださいました。キャリアのディスカッションについて、1度で完結させることなく、数回ディスカッションの場を設けていただきました。"(社会人4-6年 / 利用時期2022年)
求職者へのメッセージ
私のスタンスなどに共感していただいた方は、ぜひキャリアについてご相談ください!
- (1)プロが教える転職エージェントの選び方~ベンチャー/スタートアップ(井手裕典)
- (2)プロが教える転職エージェントの選び方~ファンド(蓮子哲也)
- (3)プロが教える転職エージェントの選び方~コンサル(栗山卓也)
- (4)プロが教える転職エージェントの選び方~コンサル/M&A(石井康裕)
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【プロが教える転職エージェントの選び方~シリーズ記事一覧】