心強い伴走者になってくれることが多い一方で、時に足枷にもなり得る転職エージェント。
「プロが教える転職エージェントの選び方」では、Liigaエージェントクチコミで高い評価を受け、多数の求職者から厚い支持を得ているエージェントに支援の考え方や特徴、その方自身が考える「求職者にとって良いエージェント像」などを語ってもらっています。
今回は、経営人材関連の転職支援を得意とする前田雄一郎氏のインタビューです。
シリーズ記事一覧(押すと開きます)
- (1)プロが教える転職エージェントの選び方~ベンチャー/スタートアップ(井手裕典)
- (2)プロが教える転職エージェントの選び方~ファンド(蓮子哲也)
- (3)プロが教える転職エージェントの選び方~コンサル(栗山卓也)
- (4)プロが教える転職エージェントの選び方~コンサル/M&A(石井康裕)
- (5)プロが教える転職エージェントの選び方~経営人材(前田雄一郎)
【プロが教える転職エージェントの選び方~シリーズ記事一覧】

<Profile>
前田 雄一郎(まえだ ゆういちろう)
アライバルズ株式会社 代表取締役
経営共創基盤にて経営コンサルティング、三菱UFJ銀行にてM&A(主にバイアウト)及び不動産に係るファイナンス、日本IBM・Salesforceにてエンタープライズ営業、日本教育財団(旧学校法人モード学園グループ)及び大手食品メーカーにて経営企画業務を経て、2019年9月、ハイクラス人材の転職支援を行うアンテロープキャリアコンサルティングへ入社。
同社1年目に全コンサルタント中トップ(創業以来初)の業績を残したのち、タイグロンパートナーズにて経営企画責任者として事業拡大に貢献。その後、アライバルズ株式会社を設立。
2024年8月3日現在のLiigaエージェントクチコミ評価は4.3(34件)。
支援領域と転職エージェントとしてのモットー
経営人材や経営人材を目指す人を支援
私が支援しているのは、主にPEやVCに勤めている方、事業会社の経営人材、また経営人材を目指している方です。経営人材とは、社長や役員レベル、またその直下で経営目標を作成し、実行に移す決定権を持つ人材を指します。
銀行でPEファンドの方と共に働いた経験、事業会社で経営に直接携わった経験など、人材業界に留まらない経験があり、それに基づいた支援をできることが最大の強みだと考えています。
20代〜50代まで幅広く支援しており、年代ごとに以下のような転職傾向があります。
- 30歳前後まで:ファンド、コンサルティングファーム、事業会社
- 30代:ファンド、経営人材
- 40代~50代:経営人材
特に若い方では、ファンド志望の方や「将来経営者になりたいが、どのようなステップを踏めば良いか分からない」といった方が多いです。私も経営者を目指して何度か転職をしたので、転職活動の進め方や転職後の躓きを乗り越えた方法など、さまざまなアドバイスをしています。
経験や業界知識を社会に還元するため人材業界へ
人材業界に入る前、私は以下のような業界で経験を積んできました。
【人材業界に入る以前の私の経歴と各社での業務内容】
- IBM:エンタープライズ営業
- 三菱UFJ銀行:M&A(主にバイアウト)、不動産に係るファイナンス
- 経営共創基盤:経営コンサルティング
- Salesforce:エンタープライズ営業
- 日本教育財団:経営企画業務
- 大手食品メーカー:経営企画業務
大学卒業後は日本IBMへ入社し、ITを活用してクライアントの業務の効率化に携わりました。その後は「M&Aに関連する業務に挑戦したい」と転職。しかし次の三菱UFJ銀行では、入社当初は思うような結果を出せず、特に最初の2年半は苦労しました。仕事の進め方やカルチャーも全く異なり、環境ごとに求められる要素は大きく異なること、また環境に適合していく重要性を痛感しました。これは、後にエージェントを目指す原体験にもなりました。
その後は「経営者になりたい」という思いで道を模索しました。
IBMでの営業経験から始まり、金融、戦略コンサルタント、事業会社と各業界のトップレベルの企業で多くの業務と役割を担ったこと、また、その中でも最前線に立つ方々と仕事をできた経験は、私自身の付加価値になりました。そして「この経験や知識を社会に還元できないか」と考えた時、出てきた答えが人材業界への転身でした。
私の転職支援の強みや特徴
実務経験に基づいた提案やアドバイス
私自身も何度か転職活動を経験していますが、エージェントの方からミスマッチにつながるような求人、キャリアアップにつながらない求人を提案されるケースも珍しくありませんでした。
私自身は経営、コンサル、投資銀行、ITでの実務経験があり、それぞれの実務内容について身をもって理解しています。各業界に知人も多数おり、最新情報、求められるスキルの詳細や仕事の難易度など、求人票からは見えない部分も候補者に極力お伝えして提案を行っています。
さらに面接対策でも「その回答は実務の視点から見ると現実的でない」など、実務を踏まえて具体的なアドバイスをしています。
実務経験はクライアント企業からの信頼にもつながる
実務経験のあるエージェントは、クライアント企業からの信頼も得やすいと考えています。
たとえば私は三菱UFJ銀行にいた頃、PEファンドが企業を買収する際の資金調達や、投資後の支援を行う業務に携わっていました。そのため、ファンド業界の方々から「現場の状況や実務を理解して人材を探してくれる」と重宝していただいています。
また、クライアント企業から相談を受けた時には「経営コンサル」の目線で経営目標、現状の課題、戦略について質問・ディスカッションをします。時には「それならこういう人材が必要では」と提案することもあります。
このように信頼を積み重ねてきたことで、今では特定のエージェントにしか公開されていない求人なども預けていただいています。
キャリアの最終目標に向けた最適ルートをアドバイス
かつて私が漠然と「経営者になりたい」と思っていたように、候補者の中にも「経営人材になりたいけど進むべき道が分からない」という方は少なくありません。そうした方々に対しては、中長期的な視点で、候補者が最終目標へのステップを着実に踏んで行けるような支援を心がけています。
先日、事業会社のCFOを目指す候補者から「まずは大手コンサルティングファームに行って年収を上げたい」と言われたことがありました。大手ファームへの転職は、もちろん素晴らしいことだと思いますが、その候補者の年齢を鑑みると、CFOへのキャリアが遠ざかる可能性がありました。
そこで、某事業会社のCFO補佐を提案しました。その企業なら、事業会社としての業務や仕事の進め方を学んだ上でCFOを目指せると考えたからです。
結果、その候補者はCFO補佐として入社され、上場なども経験。現在は某PEファンドのCFOとして活躍されています。
転職後も経営人材の仲間として交流
私は、過去に支援した方と継続的にお付き合いしています。一緒に食事に行くなどし、近況の確認や情報交換をします。
私が各社で多くの成功と失敗の経験をしているように、転職して「何もかも上手くいく」ということは100パーセントありません。転職後の苦労や取り組んでいる事業・プロジェクトの課題について「自分はこの時にこんな風に対処した」など、転職経験者として、また経営人材の仲間として多くの話をしています。
難易度の高いPEへの転職を徹底支援
転職活動に全力で取り組まれる方に対して、私は手厚い支援を心がけています。なかでも力を入れているのが、難易度の高いPEファンドへの転職支援です。
PEファンドは数が少なく、各社の採用人数も年間1〜2名程度と限られる、狭き門です。しかし、私は時間をかけて候補者を徹底支援することで、これまでに多くの方をPEファンドに送り出してきました。
選考では「PEファンドを志望する理由」や「経営に携わりたい理由」を非常に厳しく問い詰められます。そのため、まずは志望動機を自由な形で書いてきてもらい、情報を整理しながら候補者の軸となる部分を確立させます。
志望動機が完成し、業界情報の整理や候補者の考えの整理ができたところで、今度は質疑応答の壁打ちをします。最終的に、応募までにかける準備期間は1〜2カ月程度です。
応募以降も面接対策を続け、面接が終わるたびに内容を振り返ります。今後の面接に活かせるよう、「何がダメだったのか」「次はどうすれば良いのか」を候補者と一緒に練り上げていきます。
転職エージェントの利用のメリットと気を付けてもらいたいこと
業界に精通したエージェントなら転職活動の心強い仲間に
エージェント利用の主なメリットには、以下のようなものが挙げられると思います。
- 選考対策をしてもらえる
- 面接などのスケジュール調整をしてもらえる
- 入社前の各種交渉をしてもらえる
特に、難易度の高い業界やポジションに挑戦するのであれば、入念な準備と対策が必要です。志望業界に精通し、かつ自分が信頼できるエージェントを仲間にすると良いと思います。
反対に、志望業界に精通していないエージェントと付き合うメリットはあまりないと考えています。
「なぜそのエージェントから応募するのか」確認を
応募前には「なぜその企業に応募するのか」を熟考するのはもちろん、「なぜそのエージェントから応募するのか」まで考え、腹落ちした上で応募した方が良いです。
私は、転職活動について「最後に一番良い企業に受かればいい」と思っています。他は全敗しても構いません。
だからこそ、第一志望の前に複数の会社の面接を受け、その内容を振り返り、質を高めていくことが重要です。ただし一人でPDCAを回すのは容易ではないので、応募をする前に、自分と一緒に面接の質を高めてくれるエージェントを見つける必要があります。
「面接後の振り返りや継続的な壁打ちをしてくれそうか」「業界知識や実務の視点も踏まえた具体的なアドバイスをしてくれそうか」といった点を見極め、どのエージェントから応募するかを決めましょう。
個人情報にも配慮を
エージェントの中には「幅広く企業に打診して良いか」と確認を取り、多くの企業に推薦の打診をする人がいるようです。
そのまま応募して不採用となれば、その後しばらく選考の対象外となるケースも多いです。そのため、選択肢を広げすぎるようなエージェントは避けた方が良いと思います。
私が考える「求職者にとって良い転職エージェント」の特徴と見極め方
特に重要なのは業界・実務経験
エージェントの付加価値として重要なのは、以下のような点だと考えます。
- 業界知識・実務経験がある
- クライアント企業との信頼関係が厚い
- 選考対策も含めたフォローをしてくれる
- 人物として誠実である
ここまで一貫してお伝えしているように、業界・実務経験は非常に大切です。業務内容をよく理解した上で求人を提案してもらえるだけでなく、選考対策でも実務経験を踏まえた現実的なアドバイスをしてもらえるからです。
業界・実務経験の有無は、そのエージェントのプロフィールを見ればすぐに分かります。私も転職活動の際にはエージェントのプロフィールを確認し「このあたりが詳しそう」と一つの判断基準にしていました。
また、クライアント企業との信頼関係も非常に重要です。企業との信頼関係は、採用確度に直結すると私は考えています。
私が考えるLiigaエージェントクチコミの活用ポイント
※2024年8月3日時点の前田氏エージェントクチコミページより
志望業界の経験や選考対策の充実度をチェック
口コミでは、「自分が志望している業界の経験は豊富か」「選考対策は充実しているか」をチェックすると良いと思います。
プロフィールからは読み取りにくい「経験に裏打ちされた知識・情報やサポートを提供してくれるのか」「きちんと対策をしてくれるのか」といった点も、口コミから把握できることも多いでしょう。
あとは、どのエージェントにもそれぞれ強みと弱みがあるので、口コミからエージェントの強みを見極めて判断材料にするのも良いと思います。
<Liigaエージェントクチコミの前田氏の評価>
" 前田さんご自身の経歴であるプロファームでの経験や転職経験、ファンド業界動向などに非常に詳しく投資銀行出身者にとっても同じ目線で会話ができたため安心できました。 もし短所を挙げるとすれば、前田さんは良い意味で嘘を言えないとても正直で誠実な方ですので、挫折を知らない受験秀才タイプにとって前田さんの的確なアドバイスを不快に感じるかたもいるかもしれません。 " (社会人4-6年 / 利用時期2024年)
" 自分が元々持っていたレジュメや重要(核となるような)質問に対してどういうエッセンスを入れるべきか、業界によってどういう物が好まれるかなどをよくご存知で、ご知見をいただき非常に助かりました。 " (社会人7-10年 / 利用時期2023年)
" キャリアについて迷っていた際に、ソリューションを示していただきました。自分の考えややりたいことが明確に整理できたと思います。また、さまざまな選択の中で最善の道を示していただけたと思っております。 " (社会人 4-6年 / 利用時期 2021年)
求職者へのメッセージ
目標を設定して転職活動を
まず皆さんに伝えたいのが「自分が達成したいことやなりたい像を考え、腹落ちして転職してほしい」ということです。
最近では、将来に向けた明確な目標がないまま1〜2年で転職する方も少なくありません。信念や戦略なしに転職をすれば、キャリアが毀損してしまいます。
転職というものは、やりたいことやなりたい自分に近づく、或いはそうした最終目標を実現するためにすべきです。
「年収を上げてこんな生活がしたい」「経営人材になって社会を変えたい」など、まずは自分の目標をしっかり掲げ、腹落ちしてから転職活動に取り組みましょう。
相談できるパートナーを見つけて
もう一つお伝えしたいアドバイスが「転職の相談をしっかりできるパートナーを見つけてほしい」ということです。
今は人材紹介会社の数が増え「求人票をばらまくだけ」というエージェントも多くなっています。また、こういったエージェントのもとで十分なアドバイスをもらえないまま転職し、後悔する人も多い印象です。
そうは言っても、自分の力だけで正確な情報を入手し、転職をするのは容易ではありません。だからこそ、信頼して相談できるパートナーを見つけることが重要です。
パートナーは、エージェントでなくても構いません。求職者の目標を理解し、寄り添ってアドバイスしてくれる人なら、たとえば同僚でも良いと思います。ただし「広い立場で話ができる」という点で、長い人生を見据えて伴走支援してくれるエージェントも仲間にできると良いでしょう。
今は、長期的な視点で伴走支援をしてくれるエージェントが少なくなってきていると感じています。しかし私は、求職者に寄り添った支援こそがエージェントの付加価値だと考えています。パートナーとなるエージェントを探す場合は、しっかりと見極めてください。
- (1)プロが教える転職エージェントの選び方~ベンチャー/スタートアップ(井手裕典)
- (2)プロが教える転職エージェントの選び方~ファンド(蓮子哲也)
- (3)プロが教える転職エージェントの選び方~コンサル(栗山卓也)
- (4)プロが教える転職エージェントの選び方~コンサル/M&A(石井康裕)
- (5)プロが教える転職エージェントの選び方~経営人材(前田雄一郎)
【プロが教える転職エージェントの選び方~シリーズ記事一覧】