拡大するコンサル業界、その本当の変化とは——『コンサル業界大研究(第9版)』著者・山越理央氏に聞く①

2026/03/23
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拡大するコンサル業界、その本当の変化とは——『コンサル業界大研究(第9版)』著者・山越理央氏に聞く

コンサル業界への転職を考える際、多くのビジネスパーソンがまず手に取る定番書『コンサル業界大研究』。その第9版を執筆しているコンサルティングファーム研究会代表の山越さんに、いま業界で何が起きているのかを伺った。

山越 理央(やまこし・まさお)
コンサルティングファーム研究会 代表。『コンサル業界大研究(第9版)』著者。現在は国内最大規模のシンクタンクにて戦略コンサルタント(プリンシパル)として活動。
※詳しいプロフィールは記事末尾に掲載

コンサル市場が拡大している背景

——まず、現在のコンサル業界をどのように見ていますか。

山越さん:世界市場は安定的に拡大しています。2025年には約3,700億ドル、2030年には約4,600億ドル規模に成長する見込みです。日本市場も堅調で、DX、生成AIの実装、レガシーシステム刷新、サステナビリティ対応といったテーマが需要を押し上げています。

ただ、私がより重要だと感じているのは、市場規模よりも"仕事の重心"の変化です。

古くから言われる「戦略から実行へ」の意味合いが変わってきている

——戦略から実行へ、という流れでしょうか。

山越さん:その言葉自体は以前からありました。ただ、当時の実行支援は、戦略を具体化する補助的な位置づけが中心でした。

いまは違います。生成AIやクラウド基盤の導入は、構想と実装を分けられません。どのデータを使い、業務をどう再設計し、誰が責任を持つかまで一体で考えなければ意味がありません。

経営課題の構造そのものが、テクノロジーと強く結びついています。ここが過去との決定的な違いです。

——各社の増員も続いています。

山越さん:はい。ただし単純な案件数増加ではありません。案件の中身が変わった結果です。

以前は数か月の戦略プロジェクトが中心でした。現在は1年、2年と続く変革プログラムが増えています。システム導入、業務設計、組織改革まで含みます。

そのため、分析力だけでなく、実装を前に進める力、関係者を巻き込む力が求められています。

なぜ、コンサル会社の上場が増えているのか

——近年IPOが増えていますね。

山越さん:以前は上場に向いていない業態と言われていました。設備投資が少なく、案件の機密性が高く、収益が読みづらかったからです。

しかしDX案件の拡大により、拠点整備やM&Aが必要になりました。また、戦略だけでなく継続的な運用支援を行うモデルも増え、事業の見通しが立てやすくなっています。

結果として資本市場との距離が縮まりました。ただし、それは競争が激しくなったことも意味しています。

市場拡大を支える3つの変化

——コンサル業界を取り巻く構造的な変化について教えてください。

山越さん:大きく3つあると思います。第一は「コモディティ化」です。ERP導入や標準的なDX支援は、やり方がある程度整理され、型ができてきました。そのため、一定水準の成果であれば、どのファームでも提供できるようになっています。これは市場の裾野を広げる一方で、差別化を難しくする要因にもなっています。

第二は「顧客の成熟」です。企業側もコンサルの活用に慣れ、RFPで複数社を比較し、成果で評価する姿勢が一般的になりました。こうした動きは市場を安定させる効果がありますが、同時に価格競争を強める側面もあります。

第三は「異業種からの参入」です。商社やSIer、広告会社などが、戦略から実装、運用までを一体で提供するモデルで参入しています。これにより、コンサル会社同士の競争だけでなく、より広いプレーヤーとの競争になりました。戦略系、IT系といった従来の区分も曖昧になり、業界の競争構造そのものが変わりつつあります。

これからのコンサルの強みとは何か。志望者が業界を見るときの視点

——その中で、コンサルの価値はどこにありますか。

山越さん:2つあります。
1つは、標準的な仕事を効率よく回す力。もう1つは、まだ整理されていない課題を構造化する力。

後者を持てるかどうかが、長期的な競争力を左右すると思います。

——転職を考える社会人は何を見るべきでしょうか。

山越さん:まず、自分がどの役割を担いたいのかを明確にすることです。戦略設計なのか、実装推進なのか、あるいはその両方か。

そして、そのファームがどこで差別化しているのかを見ることです。拡大しているから、ではなく、自分の成長と合うかどうかが重要です。

より深く業界を理解したい方へ

今回お話しした内容を、より体系的に整理しているのが『コンサル業界大研究(第9版)』です。市場動向、主要ファームの戦略、業界構造の変化まで俯瞰的に解説しています。

業界理解を一段深めたい方は、ぜひご覧ください。

著者プロフィール

渡辺秀和 渡辺 秀和(わたなべ・ひでかず)
コンコードエグゼクティブグループ 代表取締役CEO/一橋大学 客員教授

一橋大学商学部卒。三和総合研究所(現 三菱UFJリサーチ&コンサルティング)戦略コンサルティング部門へ新卒入社。同社最年少でプロジェクトリーダーに昇格し、多数の新規事業開発プロジェクトを手がける。
2008年、コンコードエグゼクティブグループを設立。同社は、マッキンゼーやBCGをはじめとするコンサルティングファーム、投資銀行・PEファンド、スタートアップの経営幹部、起業家などへ、数万人規模のビジネスリーダーのキャリアチェンジを支援してきた。
2017年には、東京大学にて学部3・4年生、大学院生を対象とした正規科目「キャリア・マーケットデザイン」のコースディレクターを務め、授業設計と講義を担当。また、キャリア教育事業を担うコンコードアカデミーの代表取締役に就任し、学生へキャリア設計の知見を伝えるサイト「CareerPod」を開設した。2025年、一橋大学 客員教授に就任。キャリア設計の理論と実践知を体系化した授業を開講し、次世代リーダーの育成に取り組んでいる。
「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門にて初代MVP 受賞。
主な著書に『未来をつくるキャリアの授業』(日本経済新聞出版社)、『ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社)などがある。

コンコード運営サイト:「コンサル&ポストコンサル転職」
山越理央 山越 理央(やまこし・まさお)
コンサルティングファーム研究会 代表/一般社団法人クリエイティブデザインネットワーク 理事

東京大学公共政策大学院修了。多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム修了。
プライスウォーターハウスクーパース(現 PwCアドバイザリー)に新卒入社。大企業の事業再生業務を推進し、V字回復に向けた経営改革のビジョンや再成長戦略、経営再建計画の策定を支援してきた。
現在は、国内最大規模のシンクタンクに籍を移し、戦略コンサルタント(プリンシパル)として社会課題解決に向けた企業の経営ビジョンや経営戦略の策定、新規事業開発や事業開発組織の設計などを幅広く支援している。また、デザインやアート、クリエイティブの専門家として、政府のデザイン政策やデザイン経営の立案や推進、グッドデザイン賞の海外への制度輸出、企業の経営改革や事業開発にデザイン思考や感性、美意識を取り入れるコンサルティングサービスや経営者/幹部向けの能力開発等を主導。
コンサルティング業界の現在を日本で最も広く深く知る専門家として、業界の現役コンサルタントや内定者で構成される「コンサルティングファーム研究会」を主宰。研究会では、コンサルティング業界の最新動向をリアルタイムで把握し、業界の未来に関する研究や情報発信を行っている。
コラム作成者
外資就活ネクスト編集部
外資就活ネクストは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。