専門エージェントが語る|拡大するPEファンド転職市場と見落とされがちな「ミスマッチ」の実態【前編】

2026/05/19
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専門エージェントが語る|拡大するPEファンド転職市場と見落とされがちな「ミスマッチ」の実態【前編】

PEファンドは市場拡大が続いており、転職においても採用の間口が広がっている。一方で、転職後の早期離職も一定数あるという。

今回は、タイグロンパートナーズの信藤啓吾氏にPEファンド転職市場の現状と見落とされがちなミスマッチの実態を語っていただいた。

※内容や肩書は、取材を行った2026年4月時点の情報です。

<Profile> 信藤 啓吾(しんどう・けいご)

タイグロンパートナーズ株式会社 取締役兼ヘッドハンター。麗澤大学外国語学部卒業、Salem State Universityカウンセリング心理学修士。外資系大手人材サーチファームであるロバートウォルターズで金融マーケット専門のリクルーティングに従事後、タイグロンパートナーズの前身である英国アカマイフィナンシャルマーケッツ日本支社の立ち上げに参画。23年にわたり、投資銀行や不動産ファンド、PEファンド、一般事業会社のM&A・戦略企画部門などへの転職を支援している。Youtubeでも出演多数。

PEファンド転職はチャンスが広がる一方で、ミスマッチも起きている

PEファンドの転職市場は、現在これまでになく活況です。

長年金融業界の転職支援をしている私でも「これほど変わるとは思わなかった」と感じるほど、近年はファンド数の増加や採用ニーズの拡大が進んでいます。また、採用ニーズの拡大と並行して志望者の数も増え、転職先としての人気もますます高まっています。

一方、こうした市場拡大を背景に転職者が増える中で、「想定していた仕事と違う」と感じ、離職してしまうケースも見られます。特に近年はジュニア層での早期離職が一定数見られ、転職の決断にあたっては注意が必要です。

次章からは、PEファンド転職に関する最新トレンドと、市場拡大の中で増えているミスマッチについてお話しします。

拡大が続いているPEファンド市場

現在のPEファンド市場は「資金」「売却ニーズのある企業」「投資を担うファンド・人材」という3つの要因が揃い、市場の拡大を後押ししています。

海外投資家の動きが活発化し「資金」が増加

投資に必要な資金は国内・海外の双方から集まっていますが、近年は特に海外投資家の存在感が高まっています。海外では金利が高く、ファンドが十分なリターンを確保しにくい環境である一方、日本は低金利で相対的に投資効率が高く、魅力的な市場と見られているためです。

現在では、ラージキャップに限らずミッド・スモールキャップまで海外資金の流入が進んでいます。

資産放出と事業承継で「売却ニーズのある企業」が増加

企業側でも動きが活発化しています。国内の大企業では事業の選択と集中が進み、カーブアウト(グループ会社や非中核事業の切り離し)が増加しています。特に、近年は外資系PEファンドやアクティビストの関与も強まっており、資産放出が加速している状況です。

また、中小企業では事業承継ニーズが高まっています。「会社を閉じたくないが、後継者がいない」という経営者が、自社をPEファンドに売却するケースがかなり増えました。その結果、ミッド・スモールキャップにおいても案件の幅が広がっています。

信藤啓吾氏 取材時の様子

採用の裾野が広がり、PEファンドを目指す人も増加

PEファンドの採用拡大に伴い、採用対象となるバックグラウンドも広がっています。

投資銀行・戦略コンサルティングファーム出身者が有利な傾向は依然として変わっておらず、この経歴を持つ人は面接に進めることが多いです。これに加えて、近年はデロイトやKPMGといったFAS、商社、M&Aブティック、銀行出身者なども採用の対象となってきています。コンサルティングファームも戦略系に限らず採用されるケースが増えてきました。

こうした裾野の広がりとともに、PEファンドを目指す人も増加しています。私のもとに相談に来る候補者の数も、以前と比べてかなり増えました。

現在のPEファンドは、買収前のDD(デューデリジェンス)をFASに、買収後のPMIやバリューアップを他の企業に依頼するなど、幅広い企業と協働しています。こうした分業体制が一般化し、PEファンドの仕事が現場レベルでも認知されるようになったことも、志望者の増加につながっていると思います。

▼ 選考難易度は依然として高い

PEファンドの採用は拡大しており、以前に比べるとバックグラウンドの幅も広がっています。しかし、それは「誰でも入りやすくなった」という意味ではありません。

実際には、投資銀行や戦略コンサルティングファーム出身者が依然として採用の中心です。特にラージキャップのファンドでは、高い専門性や実績が求められる傾向は変わっていません。私のもとへ相談に来る候補者でも、「現状は難しい」という人が一定数います。

また、採用の裾野が広がったことで挑戦機会は増えた一方、人気の高まりによって競争はむしろ激しくなっている側面もあります。

とはいえ、ミッド・スモールキャップでは、選考基準が少し下がっているケースも見られます。まずは、自身の経験やスキルでどれくらいの規模のファンドを目指せそうか探ってみましょう。

チャンスが広がる一方で、ミスマッチも多い

市場の拡大や業務接点の増加により、PEファンド転職のチャンスは広がっています。情報も以前より広く流通するようになりました。先輩や同僚を通じて話を聞いたり、案件を通じてPEファンドと関わったりする中で、仕事内容のイメージを具体的に持つ人も増えています。

一方で、こうした情報に触れているにもかかわらず、実際に転職してみると「思っていた仕事と違う」と感じ、早期離職に至る人も少なくありません。本人が持っているイメージと、実際の仕事内容や働き方との間にギャップがあることが、ミスマッチの大きな要因となっています。

特に、以下のようなミスマッチはよく見られる代表例です。

①「投資家になりたい」と思っていたが、実態はオペレーション業務が中心

これは、PEファンド転職のミスマッチで最も多い事例です。

「多額の資金で企業を買収し、高値で売却する」という、投資家としての役割に憧れてPEファンドに転職する人は少なくありません。しかし実際は、投資先のKPI管理や進行管理、経営陣との調整、現場への介入など、地道なオペレーション業務が大きな比重を占めます。

特にジュニアのうちは裁量が小さく、投資判断に関与できる範囲は限られます。また、ミッド・スモールキャップでは、仕事内容がコンサルティングファームや事業会社の経営企画に近いことが多いです。

実際に私が転職を支援したケースでも、「投資判断ができずに現場オペレーションが中心」という理想と現実のギャップで早期離職した人がいます。

②ワークライフバランスの向上を期待していたが、思っていたより忙しい

これは、投資銀行からの転職で多い例です。外資の投資銀行で働いている人は本当に忙しく、「とにかく早く楽になりたい」という思いでPEファンドに転職するケースがよく見られます。しかし、実際は「土日は休めるけど、平日はあまり変わらない」ということも多いです。両者では忙しさの質が違うだけで、どちらも忙しいのは変わりません。

特に注意が必要なのがExit(投資先の売却やIPO)前で、この時期は投資銀行並み、あるいはそれ以上の負荷がかかることもあり、消耗戦になりがちです。

③キャリーが思っていたより少ない

PEファンドへの転職では、給与アップに対する期待が大きいものです。近年は人材の争奪戦が厳しくなっているので、業界全体で基本給は上がってきています。賞与も比較的多いです。

一方で、ファンドのパフォーマンス状況に応じて支給されるキャリー(成功報酬)については、規模やファンドの運営状況、ポジションによっても大きく変わります。特に、PE転職で多い20〜30代のジュニア層では配分が限定的で、ゼロというケースも少なくありません。キャリーの発生自体も数年に一度のことなので、短期で一気に資産形成できるイメージとはギャップがあります。

なお、キャリーについては後編でも詳しく解説しています。

PEファンドは会社以上に「規模」による差が大きい

一口にPEファンドといっても、ファンドの規模によって仕事内容や求められる役割は大きく異なります。ラージキャップとミッド・スモールキャップでは、同じPEファンドでありながら「別の仕事」と言っても過言ではなく、給与差も大きいです。

この違いを理解しないまま転職すると、ミスマッチにつながる可能性があります。

規模による案件や仕事内容の違い

PEファンドは規模によって、業務の進め方や関わり方が大きく変わります。

ラージキャップのファンドでは、有名企業のカーブアウトをはじめとする大型案件が多く、組織としては分業体制が進んでいます。金融機関的な側面が強く、英語を使う場面も多いです。

投資銀行よりは多少楽ですが、時間的な拘束が長い点は注意が必要です。

一方、ミッド・スモールキャップでは、冒頭でご紹介した事業継承などを扱い、よりハンズオンでの関与が求められます。投資先の経営に入り込み、実際に手を動かしながらバリューアップを進めていく場面が多いこと、ラージキャップのように分業制ではないことから、より手触り感を得やすいです。

ただし、前述の通り、投資判断に関与できる機会は限定的です。

報酬水準やキャリーの仕組みも一様ではない

報酬面にも、ファンドの規模によって大きな違いがあります。

前述の通り、近年は業界全体で基本給や賞与が上昇傾向にあります。ただし、その水準には差があり、たとえば外資系のラージキャップとミッドキャップを比べても、基本給だけでも2,000万円ほどの差が出ることがあります。

キャリーについても一様ではありません。ラージキャップでは、正式なキャリーとは別に、離職防止のために「シャドウキャリー」に近い仕組みが用意されているケースもあります。

一方、ミッド・スモールキャップでは、ラージキャップほど案件規模が大きくないため、キャリーも相対的に小さくなります。ジュニア層では「ゼロ」というケースも珍しくありません。

そうは言っても、ミッド・スモールキャップでも給与水準は総じて高く、ラージキャップと異なる魅力もあります。私が支援した候補者でも、あえてミッド・スモールキャップのPEファンドを選び、生き生きと活躍している人が多くいます。

まとめ|まずは業界を正しく理解することが重要

現在、PEファンド業界は非常に活況で、転職を目指す人も増えています。一方で、「とにかくPEファンドに行きたい」という志向だけで動いてしまい、選考に通らなかったり、転職後にミスマッチを起こしたりするケースも少なくありません。

本記事で見てきたように、PEファンドは規模や役割によって仕事内容や求められるスキルが大きく異なります。こうした違いを踏まえ、自分に合った領域を見極めることが重要です。

当社(タイグロンパートナーズ)では、「PEファンドに興味はあるが何から始めればいいか分からない」といった段階からの相談も受けています。まずは情報収集の一歩として、気軽に相談してみてください。

▶ この記事の《後編》を読む

信藤啓吾氏(タイグロンパートナーズ)

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コラム作成者
外資就活ネクスト編集部
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