コンサル卒業後のキャリアパス 主要な7つの選択肢——『コンサル業界大研究(第9版)』著者・渡辺秀和氏に聞く⑥

コンサル業界への転職を考える人々の多くが、まず手に取る定番書『コンサル業界大研究』。2026年1月に発売された第9版は、東京大学生協で2月の月間ランキング1位(本郷書籍部 就職・公務員部門)に輝いたほか、ジュンク堂書店でも4/20発表の週間ランキング1位(池袋本店 社会科学書部門)を記録するなど、名門大学の学生やビジネスパーソンから高い注目を集めている。最終回となる今回は、著者であるコンコードエグゼクティブグループCEOの渡辺秀和氏に、コンサルタント経験者——いわゆる「ポストコンサル」のネクストキャリアの最新動向について伺った。
▶ 第1回:拡大するコンサル業界、その本当の変化とは(山越理央氏)
▶ 第2回:コンサル業界のホットトピックス最前線(山越理央氏)
▶ 第3回:コンサルファームの採用要件、その実態とは(渡辺秀和氏)
▶ 第4回:コンサル未経験からの選考突破、その実践的メソッド(渡辺秀和氏)
▶ 第5回:意外と知らない、転職活動の「4つの基礎スキル」(渡辺秀和氏)
株式会社コンコードエグゼクティブグループ 代表取締役社長CEO/一橋大学 客員教授。『コンサル業界大研究 第9版』(産学社)著者。「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門 初代MVP。
※詳しいプロフィールは記事末尾に掲載
▍コンサル経験は、経営幹部に至る「キャリアの高速道路」
――コンサルへの転職を考えるとき、「その先」のキャリアまで気になる方は多いと思います。コンサル経験者は、実際にどのようなネクストキャリアを歩んでいるのでしょうか。
渡辺さん:コンサル経験者、すなわち「ポストコンサル」は、業界内外のハイポジションへの転職が可能です。
若いうちから経営課題の解決に関わってきた経験を武器に、経営幹部や幹部候補として抜擢されるキャリアが開かれています。コンサル経験は、経営人材へ至る「キャリアの高速道路」と言えるでしょう。
例えば戦略系コンサル出身者の場合、CEO(Chief Executive Officer)やCOO(Chief Operating Officer)、CMO(Chief Marketing Officer)、事業責任者といったCxO(最高責任者)や経営幹部をめざすキャリアを描く方が多く、さまざまな業界の経営企画、マーケティング、M&A、経営陣直下の特命チームなどへの転身が代表的です。また、PEファンドへのキャリアチェンジも珍しくありません。
そのほか、IT系・組織人事系・財務系(FAS)といった専門領域を持つコンサル経験者は、事業会社の各専門領域に該当する部門に転身し、その後CIO(Chief Information Officer)、CHO(Chief Human Officer)、CFO(Chief Financial Officer)などの経営幹部を目指していくケースが主流です。
ポストコンサルはネクストキャリアの選択肢が広く、しかも高いポジションで迎えられやすい。ご自身の成長機会を最大化したい方にとって、コンサル経験は極めて有力な土台になると言えます。
▍年齢・職階によって異なる、コンサル卒業後の「次の一手」
――コンサルを卒業するタイミングによっても、ネクストキャリアの選択肢は違ってくるのでしょうか。
渡辺さん:年齢・職階によって傾向はかなり異なります。20代の若手(アナリスト・コンサルタントクラス)の場合、他ファームやPEファンド、ベンチャー幹部候補への転職が多く見られます。大手事業会社を選ぶ方もいますが、若すぎると経営者視点の仕事を任されにくく、年功序列の企業では報酬面でも物足りなくなりがちです。
30代(シニアコンサルタント・マネジャークラス)になると、外資系企業や日系企業のマネジメントポジションへの転身も増え、中には自ら起業する方も珍しくありません。転身先の幅が最も広い年代と言えます。
40〜50代のエグゼクティブ(パートナー・ディレクタークラス)は、事業会社の役員・社長ポジションを検討するケースが多くなります。ただし、実際に転職活動をしてみて、現職の影響力や自由度、報酬の高さにあらためて気づかれるケースも少なくありません。その結果、他ファームのエグゼクティブポジションへの移籍や、スタートアップ支援や大学教育など、活動の幅を広げるという選択をする傾向も見られます。
▍主要ネクストキャリア①外資系企業
――では、具体的なネクストキャリアについて教えてください。
渡辺さん:主要なネクストキャリアとして、7つの転職先をご紹介しましょう。
まずは、外資系企業です。魅力はいくつかありますが、まず給与水準と労働時間のバランスの良さが挙げられます。30代でマネジャーやディレクタークラスに就けば、年収1000万円台半ばから2000万円程度を得られるケースが多く、しかも、コンサルティングファームほどの長時間労働にはなりません。
次に、職種別採用が中心のため、1つの領域で腰を据えて専門性を磨きやすい点も魅力です。これは、人材市場における自身の価値を高めるうえで、大きな武器になります。
コンサルティングファームへ継続的にプロジェクトを発注している外資系企業も多く、ポストコンサルを高いポジションで受け入れる土壌が整っている点も見逃せません。経営企画やマーケティング、人事、財務など、さまざまな部門でポストコンサルが採用されています。
▍主要ネクストキャリア②ベンチャー・スタートアップの幹部ポジション
渡辺さん:近年、人気が急上昇しているのが、ベンチャー企業やスタートアップの幹部ポジションへの転職です。
多くのベンチャー・スタートアップが、テクノロジーやプラットフォームを通じ、社会課題を解決する事業を展開しています。その経営幹部や幹部候補として力を発揮できる環境が、ポストコンサルを惹きつけているのです。
人気が急上昇した背景には、報酬水準の大幅な改善もあります。上場企業ならコンサルファームと遜色ない水準を提示できるケースも増えており、未上場であればストックオプションも魅力です。以前は年収面でのハードルが高かったため、ポストコンサルにとって選択しづらかったキャリアですが、環境が大きく変わりました。
若い人材が経営幹部として抜擢されるケースが多いのも特徴です。経営陣の年齢層が20代後半~30代半ばと若く、実力次第でCOOや役員として登用されることも珍しくありません。このようなスピード感のある成長環境は、キャリアアップを志向するポストコンサルにとって大きな魅力となっています。
また、起業をめざす人にとっても、優秀な起業家のもとでビジネス経験を積めることは貴重な成長機会となります。ベンチャー・スタートアップには、立ち上げ当初から海外展開をめざす企業も多く、グローバルな事業運営に携われるケースも増えています。このような環境での戦略立案やマーケティング、組織運営の経験は、将来自ら事業を立ち上げるうえで大きな資産となるでしょう。
▍主要ネクストキャリア③中堅企業・オーナー企業
渡辺さん:中堅企業やオーナー企業も、ポストコンサルから根強い人気がある選択肢です。独自の技術やノウハウ、グローバル市場で通用する特許を持つ企業も多く、既存の事業基盤を活かしながら経営に携われる点が大きな魅力です。ゼロから立ち上げる起業と違い、短いリードタイムで社会に大きなインパクトを出せる可能性もあります。
特に多いのが、事業承継のタイミングで、後継経営者の「右腕」としてポストコンサルが迎えられるケースです。若い後継者とタッグを組み、大きな権限のもとで経営を動かせる環境は、「腰を据えて経営に携わりたい」と考えるポストコンサルにとって非常にやりがいがあります。中でも戦略コンサル出身者は、このようなニーズに最も適した人材と言えるでしょう。
一点、注意も必要です。幹部ポジションの中途採用に慣れていない企業では、一般社員と同じポジションでポストコンサルを受け入れようとするケースがあります。ポスコトンサルが持つ本来の力を発揮するためにも、経営幹部または幹部候補として入社できるかどうかを、事前にしっかり確認することが大切です。
▍主要ネクストキャリア④大手日系企業
渡辺さん:今後注目されるネクストキャリアの1つが、大手日系企業です。
以前は年功的な人事制度や新卒中心のカルチャーがネックとなり、ポスコトンサルにはあまり人気がありませんでした。しかし、近年における競争環境の激化に伴い、M&AやDX推進、CVC(Corporate Venture Capital)といった改革の担い手として外部プロフェッショナルを積極登用する動きが広がっています。
大手日系企業の魅力は大きく2つあります。1つは、日本本社の経営企画やM&A部門に入れば、グループ全体の意思決定に直接携われることです。外資系企業の東京オフィスのように、海外本社の傘下のために意思決定の範囲が限られる、というもどかしさがありません。もう1つは、環境ビジネスや社会インフラ、まちづくりなど、スケールの大きな事業に関われる点です。
一方で、ポストコンサルの採用に慣れていない大手日系企業もまだ多いのが実態です。中途入社の役員・管理職の有無や、新卒から所属している社員と中途社員との間に処遇格差がないかを、事前に確認しておくことが重要です。
▍主要ネクストキャリア⑤PEファンド・ハンズオンVC
渡辺さん:次にご紹介するのは、PEファンドやハンズオンVCです。
PEファンドへの関心が高い背景には、コンサルタントならではの悩みがあります。「提案したプランがどう実行されるか見届けたい」「そもそも実行してもらえない」という声は、コンサルタントなら一度は感じるものです。
PEファンドでは、株主として経営支援に直接関与し、抜本的な改革を当事者として推進できます。プロフェッショナルファームに所属しながら企業経営に携われる、希少なキャリアなのです。
収入面の魅力も見逃せません。コンサルティングは基本的に労働集約型ビジネスのため、起業家や経営者のように大きな収入をまとめて得ることは困難です。対してPEファンドでは、担当企業が成功すれば、インセンティブボーナスとして大きなリターンを得られる可能性があります。ワークライフバランスの面でも、投資先の事業が軌道に乗れば、コンサルティングファームほどは忙しくありません。
また、近年、ハンズオンVCへの注目度も高まっています。資金提供にとどまらず、スタートアップの経営支援に深く関与できることが、PEファンドとの共通点です。特に、AIやバイオ、クリーンテックなどの先端テクノロジーを駆使して社会課題の解決を目指すスタートアップへの支援が増えています。社会的インパクトを重視するポストコンサルにとって、魅力的な選択肢と言えるでしょう。
▍主要ネクストキャリア⑥コンサルtoコンサル
渡辺さん:コンサル業界内での転職にも、実はさまざまなメリットがあります。この転職には、主に4つのタイプがあります。
1つ目は「領域シフト型」。戦略系のようにゼネラル領域を扱うファームから、財務系・組織人事系など専門領域を扱うファームへと転身するケースです。その逆となる、ゼネラル領域へ転身するケースもあります。
2つ目は「ポジション向上型」。同じ領域内のファームへ移り、より高いポジションと収入を目指すという転職です。近年、業界全体が拡大する中、即戦力のコンサル経験者を高いポジションで迎えるファームが増えています。
中でも存在感を高めているのが「日系グロースファーム」です。これは、著名ファームで活躍してきたパートナーらが立ち上げ、昨今、急成長を遂げているコンサルティングファームを指します。ベンチャー企業の側面を持つ日系グロースファームは、ポストコンサルに人気の高い「ベンチャー企業の経営幹部」というキャリアと、コンサル業界水準の「高収入」を両立できる稀有な選択肢なのです。
3つ目は「ワークライフバランス型」。30代半ば以降に、業務内容や年収水準を維持しながら働き方を整えたいという方が選ぶルートです。意外に思われるかもしれませんが、近年はワークライフバランスが比較的良好なファームも珍しくありません。育児や介護などの事情があれば、時短勤務の前提で入社できることもあります。
4つ目は「営業リソース獲得型」。コンサルティングファームでは、パートナーをはじめとするエグゼクティブが受注責任を負いますが、ドアノックからすべて自力で営業活動を行うのは大変な負担になります。そこで、大手企業グループ傘下のシンクタンクのように豊富な営業リソースをもつファームに移ることで、プロジェクトへの専念を優先し、活躍しやすくなるというケースです。
一見地味に見えるコンサルtoコンサル転職ですが、実は、キャリアの可能性を大きく広げる選択肢と言えます。
▍主要ネクストキャリア⑦起業
渡辺さん:最後にご紹介するのが「起業」です。
コンサル経験者にとって、起業はすでに身近な選択肢の1つとなっています。コンサルタントとして培った経営の見識や問題解決力を活かしながら、社会的インパクトのある事業を自らの意思決定で推進できる点が最大の魅力です。ビジネスが軌道に乗れば収入面でも大きなリターンが得られる可能性があり、資金調達の環境が近年整ってきた点も追い風となっています。
ただし、注意も必要です。コンサルタントとして磨いてきたスキルと、起業家に求められるスキルの間には一定のギャップがあります。特に、当該領域の業務知識やネットワーク、小資本でのビジネス運営といった経験は、コンサル時代にはなかなか積めないものです。ファームを卒業後すぐに起業するのではなく、ベンチャー企業やスタートップを経て起業する、あるいは、関連業界で知識を深めたうえで起業を目指すというキャリア設計も、十分に有力な選択肢です。
▍自分の軸となる「キャリアビジョン」を持つことから始める
――最後に、ポストコンサルの転職で気をつけるべきことは何でしょうか。
渡辺さん:コンサルティングファームに勤めていると、さまざまなヘッドハンターからスカウトが届くようになります。提示される待遇の高さや企業の知名度に惑わされてしまうと、気づかないうちに自分の望む人生から離れていく、ということにもなりかねません。
そこで私がおすすめしたいのは、「自分は何を成し遂げたいのか」というキャリアビジョンを持つことです。どのネクストキャリアを選ぶべきかは、目指すゴールによって変わってくるはずです。まずはご自身の価値観に向き合い、自分が望む人生とは何かを、じっくりと考えていただきたいと思います。
▍【編集部より】さらに深く業界を理解したい方へ
今回伺った内容をさらに詳しく知りたい方へおすすめしたいのが、『コンサル業界大研究(第9版)』だ。AI時代を迎えた業界構造の変化から主要ファームの戦略、仕事内容の実態、コンサル卒業後のキャリアパスまで、初学者でも十分に理解できるよう噛み砕いて解説。さらに、BCGをはじめとするトップファーム6社の幹部と著者による対談を通じ、AI時代に求められるコンサルタント像を考察している。業界理解を一段深めたい方は、ぜひご覧いただきたい。
▍著者プロフィール
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渡辺 秀和(わたなべ・ひでかず) コンコードエグゼクティブグループ 代表取締役CEO/一橋大学 客員教授 一橋大学商学部卒。三和総合研究所(現 三菱UFJリサーチ&コンサルティング)戦略コンサルティング部門へ新卒入社。同社最年少でプロジェクトリーダーに昇格し、多数の新規事業開発プロジェクトを手がける。 2008年、コンコードエグゼクティブグループを設立。同社は、マッキンゼーやBCGをはじめとするコンサルティングファーム、投資銀行・PEファンド、スタートアップの経営幹部、起業家などへ、数万人規模のビジネスリーダーのキャリアチェンジを支援してきた。 2017年には、東京大学にて学部3・4年生、大学院生を対象とした正規科目「キャリア・マーケットデザイン」のコースディレクターを務め、授業設計と講義を担当。また、キャリア教育事業を担うコンコードアカデミーの代表取締役に就任し、学生へキャリア設計の知見を伝えるサイト「CareerPod」を開設した。2025年、一橋大学 客員教授に就任。キャリア設計の理論と実践知を体系化した授業を開講し、次世代リーダーの育成に取り組んでいる。 「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門にて初代MVP 受賞。 主な著書に『未来をつくるキャリアの授業』(日本経済新聞出版社)、『ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社)などがある。 コンコード運営サイト:「コンサル&ポストコンサル転職」 AI時代のコンサル業界動向を解説:PIVOT「2026年のコンサル」 |
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山越 理央(やまこし・まさお) コンサルティングファーム研究会 代表/一般社団法人クリエイティブデザインネットワーク 理事 東京大学公共政策大学院修了。多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム修了。 プライスウォーターハウスクーパース(現 PwCアドバイザリー)に新卒入社。大企業の事業再生業務を推進し、V字回復に向けた経営改革のビジョンや再成長戦略、経営再建計画の策定を支援してきた。 現在は、国内最大規模のシンクタンクに籍を移し、戦略コンサルタント(プリンシパル)として社会課題解決に向けた企業の経営ビジョンや経営戦略の策定、新規事業開発や事業開発組織の設計などを幅広く支援している。また、デザインやアート、クリエイティブの専門家として、政府のデザイン政策やデザイン経営の立案や推進、グッドデザイン賞の海外への制度輸出、企業の経営改革や事業開発にデザイン思考や感性、美意識を取り入れるコンサルティングサービスや経営者/幹部向けの能力開発等を主導。 コンサルティング業界の現在を日本で最も広く深く知る専門家として、業界の現役コンサルタントや内定者で構成される「コンサルティングファーム研究会」を主宰。研究会では、コンサルティング業界の最新動向をリアルタイムで把握し、業界の未来に関する研究や情報発信を行っている。 |
▶ 第1回:拡大するコンサル業界、その本当の変化とは(山越理央氏)
▶ 第2回:コンサル業界のホットトピックス最前線(山越理央氏)
▶ 第3回:コンサルファームの採用要件、その実態とは(渡辺秀和氏)
▶ 第4回:コンサル未経験からの選考突破、その実践的メソッド(渡辺秀和氏)
▶ 第5回:意外と知らない、転職活動の「4つの基礎スキル」(渡辺秀和氏)

